「大腸内視鏡検査の当日、飲み物はいつまで飲んで大丈夫ですか?」
という質問をとても多くいただきます。
検査当日の水分については、何をどのタイミングまで飲んでいいのか不安も多いと思います。
この記事では、検査当日にどんな水分をいつまでとっていいのかを、やさしく整理します。
また、鎮静剤を使うときや、胃カメラを同時に受ける場合の注意点もわかりやすく解説をします。
この記事でわかること
- 水分摂取はいつまでOKか
- 検査当日に飲んで良い飲み物
- スポーツドリンクがNGになる理由
- 鎮静剤を使う場合の注意点
- 胃カメラを同時に受けるときに気をつけたいこと
ご注意:内容は一般的な目安です。最終判断は、受診される医療機関の指示(指示書)を優先してください。
この記事の信頼性
この記事を書いた私の名前は「金澤 周(かなざわ あまね)」です。
この記事は、草加西口大腸肛門クリニックの院長が専門医の立場から執筆しています。
結論
まずは、要点をシンプルにお伝えします。
- 水(透明な水分)は原則として検査直前までOK
- 鎮静ありの場合:直前1時間は口や喉を湿らす程度で、1口5–10 mL、合計100–200 mL以内(がぶ飲みNG)
- 胃カメラを同時に受ける場合:飲水は2時間前までに終了
- スポーツドリンク:当日の下剤によってはNG、迷ったら水
- 無糖のお茶・紅茶はOK、迷ったら水
大腸内視鏡検査当日の水分が直前までOKな理由と注意点
水分摂取が直前までOKな理由
大腸内視鏡検査前には、約2リットルの下剤を飲み、腸の中をきれいにする必要があります。
この際に大量の下痢をすることで、少なからず脱水になります。

脱水になると、
- 喉の渇き
- 倦怠感
- 頭痛
- めまい
などの症状が出現して、安全に検査を行うことができなくなったり、
検査後の体調不良につながったり、
場合によっては検査が中止になったりすることもあります。
検査前の脱水を予防するため、検査直前まで水分摂取をするようにしましょう。
水・お茶は基本的にはOK
薄い色の無糖のお茶(緑茶・ほうじ茶・玄米茶)は基本的にはOKです。
紅茶は、ストレートはOK、ミルクティー/加糖は避けてください。
糖分の含まれるお茶・紅茶などは、次で述べるスポーツドリンクと同様に避けるようにしてください。
種類に迷ったら、「水」にしておけば間違いありません。
スポーツドリンクがNGになる理由
当日の下剤の種類によっては、糖分の含まれるスポーツドリンクがNGなものがあります。
具体的には、以下の下剤です。
- モビプレップ®
- ニフレック®
- ビジクリア®
- サルプレップ®
これらの下剤は、ポリエチレングリコールやクエン酸マグネシウムを主成分としていて、
浸透圧作用によって腸内に水をとどめる働きを持っています。
つまり、腸が水分を吸収しないようにし、便と一緒に大量の水分を出すことで腸をきれいに洗い流します。
スポーツドリンクには糖分が含まれていて、大腸の手前の小腸での水の吸収が促進されてしまうため、これらの下剤の効果が十分に発揮できなくなります。
「当日は“水”に統一しておくのが安心です。」
検査当日に飲んでいい水分の種類について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

鎮静剤を使う場合の注意点

大腸内視鏡検査の時に鎮静剤を使う場合は、検査直前の水分のがぶ飲みはNGです。
理由は、鎮静で咽頭反射が低下し、逆流した水分が気道へ入りやすくなるためです。
検査中に胃に水分が多いと、逆流した際に気道へ流れ込みやすくなり誤嚥性肺炎のリスクがあります。
このため、鎮静剤を使う場合は、検査の1時間前は、合計100–200 mLの飲水にとどめておくのが安全です。
実際には、口や喉が乾いたら、湿らす程度(1口5–10 mL)に飲むようにするのがいいです。
胃カメラを同時に受ける場合の注意点

基本的に水分は大腸カメラの直前までOKですが、
胃カメラを同時に受ける場合の水分は、検査の2時間前までにしてください。
理由は、安全に精度の高い検査をするためです。
胃カメラが喉を通過する際に「オエッ」という嘔吐反射が起こることがあります。
胃の中に水分が溜まっていると、この反射により胃の中の水分が逆流して、
気管から肺に入ることで、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
また、胃の中に大量に水が溜まっていると、詳細な観察ができなくなり検査の精度が低下します。
- 誤嚥性肺炎のリスクを下げる
- 検査の精度を上げる
という2つの目的のため、胃カメラを同時に受ける場合の水分は、検査の2時間前までにしてください。
脱水を避けるコツ
検査当日の脱水予防のため、水分摂取は重要です。
脱水を避けるコツは、以下の通りです。
- 起床後に1杯の水を飲む
- 少量をこまめに飲む
- カフェインが多いものは避ける
寝ている間に少なからず脱水状態になっているため、
起床後、下剤の内服をスタートする前にはコップ1杯の水を飲むようにしましょう。
検査中に胃の中に大量の水が入っていると誤嚥性肺炎のリスクがあるため、
水を飲む際は、少量をこまめに飲むようにしましょう。
カフェインが多いものは、利尿効果により脱水になりやすいため注意が必要です。
Q&A|大腸内視鏡検査当日の水分摂取時間に関するよくある質問
患者さんからよくいただく質問を10問にまとめました。気になる項目をご確認ください。
-
Q. 水は本当に直前まで飲んで大丈夫?
A. はい、透明な水なら原則直前までOKです。
-
Q. 検査の時に鎮静剤を使う予定のとき、検査前はどのくらいの量を飲んでいいの?
A. 鎮静剤を使う場合は、誤嚥性肺炎予防のため、検査の直前1時間は口や喉を湿らす程度にしましょう。1口5–10mLを数分おきに、合計100–200 mL以内が目安です。
-
Q. 胃カメラも同日に受けるときの飲水はいつまでいいの?
A. 検査の2時間前までに飲水を終了してください。
-
Q. 炭酸水やフレーバーウォーターは?
A. 炭酸水は胃の拡張やゲップにつながるため原則は避けましょう。無糖フレーバーウォーターは糖分フリーであれば原則としてはOKですが、施設によって判断が分かれるので、迷ったら水にしましょう。
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Q. 人工甘味料入り(ゼロカロリー)飲料はOK?
A. 成分によって扱いが変わってくるため、当日は避けるのが無難です。当日は水かお茶にしましょう。
-
Q. 経口補水液は検査当日も飲んでいい?
A. 経口補水液のOS-1®は、成分にブドウ糖が含まれるため、スポーツドリンクと同じ扱いとなるので、検査当日は避けるのが無難です。
-
Q. 服薬のための水はどれくらい必要?
A. 最小量の水で服薬可能です。目安は50–100 mLです。ただし、服薬可否・服薬のタイミングは検査を受ける病院の事前指示に従ってください。
-
Q. 飴やガムで口の渇きを紛らわせてもOK?
A. 飴は口の中で溶けてしまうので、果肉などが含まれないもので、少量であればOKと考えられますが、検査を受ける施設の基準に従ってください。一方でガムは飲み込んでしまったりすると、消化されずに検査に支障をきたすため、やめましょう。また、胃カメラを同時にする場合は、施設によって基準が異なるため、検査を受ける施設に確認をしてください。
-
Q. 胃カメラを同時にする時など、喉がかわいてつらい時の対処は?
A. うがいをして吐き出す分には大丈夫です。
-
Q. 検査直後はすぐに飲めるの?何から再開すればいいの?
A. 基本的には検査直後から少量の水から飲水可能です。胃カメラを同時にした場合は、喉の麻酔の効果がなくなるまで(約1時間)は飲水は禁止です。飲水再開時間については検査後に必ず確認をしてください。
よくある質問を確認したところで、改めて記事全体のポイントを「まとめ」として整理しておきます。
まとめ

ここまで記事を読んでいただきありがとうございました。
『大腸内視鏡検査当日に水分をいつまでとってもいいのか』についてお分かりいただけましたでしょうか。
検査当日の水分は、水が原則で、直前までOKです。
ただし、検査の安全性と精度を保つために、
- 鎮静剤を使う場合:検査前1時間は、口や喉を湿らす程度(合計100–200 mL以内)
- 胃カメラも同時に行う場合は、検査の2時間前からは飲水禁止
とすると安心です。
水分の種類については、迷ったら「水」で間違いありません。
検査当日に飲める水分についてのまとめ記事もご覧ください。

この記事が、
- 皆様の健康維持
- 皆様の病気の予防・早期発見・早期治療
- 皆様が大腸肛門科を受診する際の不安の軽減
これらのためにお役に立てれば幸いです。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
草加西口大腸肛門クリニック 院長 金澤 周(かなざわ あまね)
当院の診療について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください
参考文献
- 斎藤 豊,岡 志郎,河村卓二,ほか.大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン.日本消化器内視鏡学会誌 2020; 62: 1519-1560
- Practice Guidelines for Preoperative Fasting and the Use of Pharmacologic Agents to Reduce the Risk of Pulmonary Aspiration: Application to Healthy Patients Undergoing Elective Procedures: An Updated Report by the American Society of Anesthesiologists Task Force on Preoperative Fasting and the Use of Pharmacologic Agents to Reduce the Risk of Pulmonary Aspiration. Anesthesiology, 2017; 126: 376-393
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