「検査当日、コーヒーは飲んでもいいですか?」
この質問、本当によくいただきます。
毎朝の一杯や、仕事や家事の合間の一杯と、習慣になっている方も多いと思います。
結論は、当日のコーヒーは原則NGです。
この記事では、検査当日のコーヒーは基本的にはNGという理由を、専門医がやさしく・具体的に解説をしていきます。
また、どうしても一口だけのみたい場合の落とし所も提案します。
この記事でわかること
- 検査当日のコーヒーが原則NGな理由
- 下剤の種類別:どれがOK/NG?
- 例外が認められる条件
- 胃カメラ同日の注意
- コーヒーと下剤の相互作用について
ご注意:
本記事は検査当日の検査前のコーヒーの可否についてです。
内容は一般的な目安です。最終判断は、受診される医療機関の指示(指示書)を優先してください。
この記事の信頼性
この記事を書いた私の名前は「金澤 周(かなざわ あまね)」です。
この記事は、草加西口大腸肛門クリニックの院長が、外来での実際の指導と各製品の公式資料を元にして、専門医の立場から執筆しています。
結論|大腸内視鏡検査当日のコーヒーは原則NG(例外あり)
まずは、要点をシンプルにお伝えします。
- 検査当日のコーヒーは原則「避ける」のが安全
- 理由:①濃い色で視認性の低下 ②空腹時の胃酸の分泌が促進、ムカつきの原因となる ③製品・施設で運用が異なる
- どうしても飲みたい場合の落とし所:マグコロール服用者で、下剤開始前にブラック少量のみ
- 胃カメラ同日の場合はNG
検査当日のコーヒーがNGな理由
ここでは、検査当日のコーヒーがNGな理由を以下の3つの観点から説明をしていきます。
- 視認性(色)の問題
- 成分による影響の問題
- 生理学的な問題
視認性(色)の問題
濃い色の飲み物は、腸管内に色が残り、微小なポリープなどの視認性を下げる恐れがあります。
製薬会社各社から出ている患者さん向けの資料でも、
「色の濃い飲料は避ける/水・お茶を推奨」という運用が示されています。
成分による影響の問題
乳製品・糖分が入る飲料は不可です。
糖は小腸で水と一緒に吸収されやすく、大腸に届く水量が減って洗浄効果が落ちる可能性があります。
したがってコーヒーがOKだととしてもブラック限定で、ラテ・砂糖入りは不可です。
生理学的な問題(胃酸分泌・むかつき)
空腹時のコーヒーは胃酸の分泌を促し、ムカつき・逆流感の原因となります。
胃カメラ同日検査・鎮静を使う検査の場合は、誤嚥のリスクにも配慮が必要なため、当日は水に統一するのが安全です。
下剤(前処置)ごとのコーヒーの扱いのまとめ

メーカーの公式資料では、マグコロール®散のみコーヒーがOKとされています。
モビプレップ®、ニフレック®にはNGの記載はありませんが、不可として運用していくのが安全です。
製品名 | メーカー/患者資料のコーヒーについての記載 | 本記事での運用メモ |
---|---|---|
マグコロール®散 | コーヒーOK(ブラックのみ、砂糖・ミルクNG) | 検査開始前×ブラック×少量のみ可 |
モビプレップ® | 水・お茶・紅茶(無糖)・ウーロン茶に限定 | 不可 |
ピコプレップ® | 飲んではいけないものに記載あり | 不可 |
サルプレップ® | 飲んではいけないものに記載あり | 不可 |
ビジクリア® | 飲んではいけないものに記載あり | 不可 |
ニフレック® | メーカー公開資料に明記なし | 安全面から不可 |
コーヒーと下剤の相互作用はないの?
ブラックコーヒーが前処置下剤と薬理学的に「相互作用がある」と明記した公式な資料は見当たりません。
各メーカーの資料は「飲める/飲めない」飲み物の列挙が中心で、相互作用という書き方はしていません。
つまり、「相互作用があるからダメ」ではなく、観察・成分・生理学的な影響から、コーヒーは避けるのがいいといえます。
Q&A|大腸内視鏡検査当日のコーヒーに関するよくある質問
患者さんからよくいただく質問を10問にまとめました。気になる項目をご確認ください。
-
Q. 当日、ブラックコーヒーを1口だけでもダメ?
A. 原則NGです。ただし、当日の下剤がマグコロールの方で、下剤を飲み始める前に限り、1杯程度を飲むのはOKです。
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Q. カフェラテ・カフェオレ・砂糖入りは?
A. 不可です。乳成分や糖により下剤による洗浄効果が落ちる可能性があります。
-
Q. デカフェなら飲んでいい?
A. 不可です。色が濃いという点では通常のコーヒーと同じです。
-
Q. アイスコーヒーは飲んでいいの?
A. 不可です。ホットもアイスも同じです。
-
Q. 下剤を飲み始めた後に、うっかりコーヒーを飲んでしまいました、大丈夫?
A. 気づいた時から水だけに切り替えてください。
-
Q. コーヒーゼリー飲料は当日に飲んでもいい?
A. 不可です。ゼリーは食品になるので、検査当日は食べないで下さい。
-
Q. 検査が午後の予定です、午前中ならコーヒーを飲んでもいい?
A. 基本的に検査当日検査前にコーヒーは飲まない方が安全です。
-
Q. 検査当日の水分は、いつまで飲んで大丈夫?
A. 基本的には直前まで少量ならOKです。鎮静剤を使う場合は検査1時間前からは、少量100–200 mLにとどめましょう。下剤を飲み始めた後は、水や透明で色の薄い飲み物に限定してください。また、大腸内視鏡検査と同時に胃カメラも行う場合は、検査の2時間前からは飲水禁止です。最終的には検査を受ける医療機関の指示を優先してください。なお、コーヒーは色が濃く視認性を損ねるため、当日は原則不可です(施設の個別指示がある場合を除く)。
-
Q. 日頃からコーヒーを飲むので、「1杯だけ」でも飲みたい。絶対にダメ?
A. 基本は検査当日検査前のコーヒーはNGです。でも、コーヒーを飲んだから検査ができないということもありません。どうしても飲みたい場合は、下剤内服開始前に1杯だけにしましょう。ただ、検査の精度が落ちる可能性があることは自己責任でお願いします。
-
Q. 検査が終わったら、いつからコーヒー再開OK?
A. 検査の状況にもよりますので、検査後の説明の際に医師に確認してから再開してください。
よくある質問を確認したところで、改めて記事全体のポイントを「まとめ」として整理しておきます。
まとめ

ここまで記事を読んでいただきありがとうございました。
『大腸内視鏡検査当日にコーヒーを飲んでもいいか』についてお分かりいただけましたでしょうか。
検査当日のコーヒーは、原則はNGです。
ただし、製薬会社の公式の情報から判断すると、
- 当日の下剤が、マグコロールの場合は、下剤内服開始前×ブラック×少量は可
- それ以外の下剤は原則コーヒー不可
とすると安全です。
検査当日に飲む水分の種類については、迷ったら「水」にすると間違いありません。
検査当日に飲める水分についてのまとめ記事もご覧ください。

この記事が、
- 皆様の健康維持
- 皆様の病気の予防・早期発見・早期治療
- 皆様が大腸肛門科を受診する際の不安の軽減
これらのためにお役に立てれば幸いです。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
草加西口大腸肛門クリニック 院長 金澤 周(かなざわ あまね)
当院の診療について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください
参考文献
- 斎藤 豊,岡 志郎,河村卓二,ほか.大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン.日本消化器内視鏡学会誌 2020; 62: 1519-1560
- Practice Guidelines for Preoperative Fasting and the Use of Pharmacologic Agents to Reduce the Risk of Pulmonary Aspiration: Application to Healthy Patients Undergoing Elective Procedures: An Updated Report by the American Society of Anesthesiologists Task Force on Preoperative Fasting and the Use of Pharmacologic Agents to Reduce the Risk of Pulmonary Aspiration. Anesthesiology, 2017; 126: 376-393
- Joshi GP, Abdelmalak BB, Weigel WA, et al. 2023 American Society of Anesthesiologists Practice Guidelines for Preoperative Fasting: Carbohydrate-containing Clear Liquids with or without Protein, Chewing Gum, and Pediatric Fasting Duration-A Modular Update of the 2017 American Society of Anesthesiologists Practice Guidelines for Preoperative Fasting. Anesthesiology. 2023; 1: 132-151
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