「検査前も仕事をしたいのですがしてもいいですか?」
「仕事が忙しくて、検査の後も休めません、検査後に仕事に行ってもいいですか?」
という質問を受けることもあります。
大腸内視鏡検査当日は1日休みを取れるのがベストですが、
日頃仕事や家事でお忙しい方が、1日休みをとるのは大変だと思います。
この記事では、「検査当日、検査後の仕事をしてもいいのか」についてわかりやすく解説をしていきます。
注意:この記事では、検査前の下剤を自宅で飲む、日帰りでの大腸内視鏡検査のケースを想定しています。
この記事の内容
- 大腸内視鏡検査当日、検査前後に仕事をしてもいいのか?
- Q&A|大腸内視鏡検査当日の仕事についてよくある質問
この記事の信頼性
この記事を書いた私の名前は「金澤 周(かなざわ あまね)」です。

この記事を読めば、『大腸内視鏡検査当日の仕事について』がわかり、検査の予定が立てやすくなります。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
それでは始めていきましょう。
この記事は、草加西口大腸肛門クリニックの院長が専門医の立場から執筆しています
大腸内視鏡検査当日、検査前の仕事
大腸内視鏡検査当日、検査前の仕事についてのポイントは以下の2つです。
- 検査当日の下剤がしっかり飲める環境であればOK
- 検査前に疲れなければOK
検査前に下剤が飲めるなら仕事はOK

大腸内視鏡検査当日の検査前で一番重要なことは、
「しっかりと下剤を飲んで腸をきれいにすること」です。
これさえできれば、仕事はしてもOKです。
具体的な状況としては、「職場で下剤を飲めて、いつでもトイレに行ける環境」です。
デスクワークや在宅の方はできる可能性があります。
下剤を飲み始めると突然トイレに行きたくなる状況の繰り返しとなりますので、
一方で自分だけのペースで仕事をできない方は、検査前に仕事を入れない方が無難です。
検査前に疲れない仕事ならOK

大腸内視鏡検査は、「下剤の内服→病院への移動→検査を受ける→帰宅」という流れで、
元気な方でもそれなりに疲れます。
検査前にめいいっぱい仕事をして疲れた状態で検査を受けると、
- 鎮静剤の効きすぎ
- 検査後の体調不良
につながる可能性がありますので、
検査前に仕事をする場合には疲れない程度にしてください。
大腸内視鏡検査当日、検査後の仕事
大腸内視鏡検査当日、検査後の仕事についてのポイントは以下の2つです。
- 鎮静剤を使っているか?
- ポリープの切除をしているか?
鎮静剤の使用・ポリープ切除もなければ仕事OK
まず最初に、鎮静剤の使用とポリープの切除の両方がない場合は、仕事はOKです。
ただ、朝から下剤を飲んで検査を受けているので、少なからず疲れていると思いますので、無理はしないようにしてください。
鎮静剤使用後の仕事|運転・集中力の低下に注意

検査の際に鎮静剤を使用した場合は、鎮静剤の副作用として、
- 眠気
- ふらつき
- 判断力の低下
を少なからず伴います。
このため、
- 自分で車・バイク・自転車の運転
- 危険な作業
- 高度な判断を必要とすること
などは検査当日はしないようにしてください。

ポリープ切除をした後の仕事|重労働や移動に注意

ポリープの切除をした場合は、「ポリープ切除後出血」のリスクがあるため、
- 出血のリスクを高める重労働
- 出血をした場合に対応できない場所への移動
は避けてください。
ポリープ切除をした後の仕事|仕事内容について
出血のリスクを高める仕事の強度としては、下の表の4METs以上の仕事が目安です。
METs | 活動例 | 状態 |
---|---|---|
1.0〜2.0 | 座っている(デスクワーク) | 体をほとんど動かさない仕事 |
2.0〜3.0 | 軽い家事、レジ業務、受付など | 立ち仕事だが力仕事ではない |
3.0〜4.0 | 販売・接客、配膳、郵便配達など | 歩き回るけど重い物は持たない仕事 |
4.0〜6.0 | 清掃業務、農作業、介護など | 一部に力仕事や中腰姿勢が含まれる |
6.0以上 | 土木作業、建設業、引越しなど | 全身を使うハードな作業/重労働 |
4METs以上の仕事については、お休みできるのがベストですが、
どうしても休めない場合は、同じ部署内でも労働負荷の少ない仕事内容に変えてもらうなどを検討してみてください。
仕事の強度とポリープ切除後出血についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

ポリープ切除をした後の仕事|移動について
仕事の内容については、遠方への移動が必要になる方もいらっしゃると思います。
ポリープ切除後に出血をした場合、状況によっては病院の受診が必要になることもあります。

このため、病院のある場所であればいいのですが、
山の中や、離島などすぐに病院を受診できない環境へ行くことは避けてください。
Q&A|大腸内視鏡検査当日・直後の仕事や家事についてのよくある質問
以下に、患者さんからよくいただくご質問をQ&A形式でまとめました。
Q&Aは全部で10個あります、気になる点があれば、ぜひご確認ください。
-
Q. 大腸内視鏡検査当日の下剤は、勤務中に飲んでも大丈夫?
A. 当日の下剤は検査の数時間前から服用します。勤務中に下剤が飲めて、いつでもトイレに行ける環境であればOKです。会議や接客などで、自分のタイミングでトイレに行けない日は避けた方が安心です。
-
Q. 大腸内視鏡検査前に仕事をする場合、トイレが少ない職場でも大丈夫?
A. 下剤の効果が出始めると、頻繁にトイレに行く必要があります。トイレが少ない・混み合う・遠い場合は、勤務中の下剤の内服はお勧めできません。
-
Q. 大腸内視鏡検査前の移動中にトイレに行きたくなったらどうすればいいの?
A. 下剤の内服から4−5時間すると、腸の中はきれいになるので、あまりトイレには行かなくなります。それでも急にトイレに行きたくなることもあるので、いつでもトイレに寄れるように、時間に余裕を持って移動することが大切です。
-
Q. 鎮静剤を使わない大腸内視鏡検査後でも、集中力や判断力は落ちるの?
A. 鎮静剤を使わない場合は、大きな低下はありませんが、検査による疲労のために仕事や家事のパフォーマンスが下がることはあります。検査直後の重要な業務は避けた方が無難です。
-
Q. 大腸内視鏡検査後、ポリープ切除がない場合は、重い荷物を運んでも大丈夫?
A. ポリープ切除がない場合、出血のリスクがないため思い荷物の運搬もOKですが、朝からの下剤の内服で疲れていると思いますので、無理しない程度にしてください。
-
Q. 大腸内視鏡検査後すぐに、長距離運転をしてもいいの?
A. 鎮静剤を使った場合は、検査当日の車の運転は禁止です。鎮静剤を使っていない場合でも、検査による疲労のため集中力の低下の可能性があるため、安全面から長距離運転は避けた方が無難です。
-
Q. 大腸内視鏡検査後、ポリープ切除がなければ出張や遠方への移動はしてもいい?
A. ポリープ切除がなければ、出張や移動は可能です。検査後に体調不良となる可能性はあるため、もしもの時に病院を受診できる範囲で行動してください。山間部や離島への移動は避けてください。
-
Q. 大腸内視鏡検査後、すぐに食事をしてから仕事や家事に戻っても大丈夫?
A. お腹に負担の少ない、消化にやさしい食事はOKです。検査直後の脂っこい食事や、アルコールは控えてください。
-
Q. 大腸内視鏡検査後、掃除・洗濯・買い物などの家事はしても大丈夫?
A. 大腸ポリープの切除がなければいつも通りの家事は可能です。ポリープ切除をしている場合は、4METs以上の家事(重い物の持ち運び、大掃除など)は避けてください。また、鎮静剤を使っている場合は、車での買い物は禁止です。歩いて行ける範囲での買い物にすると安全です。
-
Q. 大腸内視鏡検査後に体調が悪くなったとき、どの症状なら仕事や家事を中断すべき?
A. 強い腹痛や、出血、めまい、ふらつきなどがあれば、すぐに作業を中断して検査を受けた医療機関へ連絡してください。
よくある質問を確認したところで、改めて記事全体のポイントを「まとめ」として整理しておきます。
まとめ

ここまで記事を読んでいただきありがとうございました。
『大腸内視鏡検査当日、直後に仕事をしても大丈夫か』についてお分かりいただけましたでしょうか。
検査前の仕事は、下剤がしっかり飲めて、疲れなければOKです。
検査後の仕事のポイントは、以下の2点です。
- 鎮静剤の使用の有無
- ポリープ切除の有無
簡潔に整理した早見表を以下にまとめました。
大腸内視鏡検査翌日の仕事|可否の早見表
鎮静剤の使用 | 検査後の仕事制限 |
---|---|
なし | なし |
あり | ・自分での車・バイク・自転車の運転 ・危険を伴う作業 ・高度な判断を必要とすること |
ポリープ切除 | 仕事の強度(METs) | 検査後の仕事制限 |
---|---|---|
なし | 問わない | なし |
あり | 4METs以下 | なし |
4METs以上 | ・お休みできるのがベスト ・無理なら、より体への負担の少ない仕事内容への一時的な変更 |
また、ポリープ切除後の出血があった場合には、病院の受診が必要になることもあるので、
山の中や離島など病院のない環境への移動は控えてください。
今回ご説明したのはあくまでも当院での基準になりますので、
検査後に仕事をすることがすでに分かっている方は、
検査予約の際に事前に医師に相談をしておくことをお勧めします。
なお、「大腸内視鏡検査翌日の仕事をしてもいいかどうか」について知りたい方は以下の記事をご覧ください。

この記事が、
- 皆様の健康維持
- 皆様の病気の予防・早期発見・早期治療
- 皆様が大腸肛門科を受診する際の不安の軽減
これらのためにお役に立てれば幸いです。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
草加西口大腸肛門クリニック 院長 金澤 周(かなざわ あまね)
当院の診療について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください
参考文献
- 厚生労働省HP 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf
- 田中 信治,樫田 博史,斎藤 豊,ほか.大腸ESD/EMRガイドライン.日本消化器内視鏡学会誌 2014; 56: 1598-1617.
- 浦岡 俊夫,滝沢 耕平,田中 信治,ほか.大腸cold polypectomyガイドライン(大腸ESD/EMRガイドライン追補).日本消化器内視鏡学会誌 2021; 63: 1149-1158
- 松本 美桜,加藤 元嗣,大庭 幸治,ほか.大腸ポリープ切除後のクリップ止血予防に対する多施設共同無作為比較試験.日本消化器内視鏡学会誌 2017; 59: 1537-1545.
- 辻 剛俊,三上 達也,福田 真作,ほか.大腸ポリープ切除後早期出血の危険因子とクリップの残存率の検討.日本消化器内視鏡学会誌 2008; 50: 199-205
- 大腸ポリープ診療ガイドライン2020.日本消化器病学会