「βグルカンってなんだろう?」
「きのこや免疫の話で聞いたことがあるかも」
「βグルカン」という単語はなんとなく聞いたことがある人もいるかもしれません。
βグルカンは、オーツ麦や大麦、きのこなどに含まれる成分として知られています。
この記事では、食物繊維としてのβグルカンについて、腸での働き、便秘や下痢・軟便への影響、腸内細菌との関係を解説します。
この記事でわかること
- βグルカンの食物繊維としての働き
- βグルカンと腸内細菌・便通との関係
- βグルカンを摂取する際の注意点
この記事の信頼性
この記事を書いた私の名前は「金澤 周(かなざわ あまね)」です。
この記事は、草加西口大腸肛門クリニックの院長が、外来での実際の指導、公的資料、論文、各製品の公式情報をもとに、専門医の立場から執筆しています。
βグルカンとは?
グルカンとは?

グルカンとは、ブドウ糖だけが結合した多糖類の総称です。
グルカンには、ブドウ糖がα結合で繋がったαグルカンと、ブドウ糖がβ結合でつながったβグルカンがあります。
βグルカンは、ヒトの消化酵素では分解されにくく、食物繊維としてはたらきます。
βグルカンは1種類ではない
「βグルカン」という名前から、1種類の成分をイメージするかもしれませんが、βグルカンは特定の1つの物質ではありません。
βグルカンは大麦やオーツ麦などの穀物や、きのこ、酵母などに含まれていますが、それぞれ構造が異なります。
ブドウ糖を構成する6個の炭素には1〜6の番号があり、どの炭素の位置でつながるかによって、βグルカンの構造が異なります。
大麦やオーツ麦に含まれる穀物βグルカンは、主にβ-(1→3)結合とβ-(1→4)結合が混在した構造をしています。
一方、きのこや酵母のβグルカンでは、主にβ-(1→3)結合の主鎖にβ-(1→6)結合の枝分かれをもつものが知られています。
| βグルカンの種類 | 主に含まれるもの | 代表的な結合様式 |
|---|---|---|
| 穀物βグルカン | 大麦、オーツ麦 | β-(1→3)結合と β-(1→4)結合が混在 |
| きのこ・酵母βグルカン | きのこ、酵母 | 主にβ-(1→3)結合の主鎖と β-(1→6)結合の枝分かれ |
このような構造の違いによって、水への溶けやすさや粘り、腸での働きも異なります。
そのため、ある種類のβグルカンで確認された働きを、すべてのβグルカンにそのまま当てはめることはできません。
この記事では、水溶性食物繊維である大麦やオーツ麦の穀物βグルカンを中心に解説します。
大麦・オーツ麦のβグルカンは水溶性食物繊維

大麦やオーツ麦に含まれる穀物βグルカンは、水に溶ける性質をもつ水溶性食物繊維です。
ここでは代表的な不溶性食物繊維であるセルロースとの違いを、結合様式から見ていきましょう。

セルロースは、ブドウ糖がβ-(1→4)結合のみで規則正しくつながっているため、分子同士が密に並び、水に溶けにくい性質があります。
一方、穀物βグルカンは、ブドウ糖がβ-(1→3)結合とβ-(1→4)結合でつながっていて、2種類の結合が混在することで、セルロースのように分子が規則正しく密に並びにくくなります。
そのため、水分を取り込んで粘りを生じやすく、この性質が腸内での働きや便通への影響に関係しています。
最後に、セルロースと穀物βグルカンの違いを表にまとめます。
| 食物繊維の種類 | 代表的な結合様式 | 水溶性/不溶性 |
|---|---|---|
| セルロース | β-(1→4)結合のみで 規則正しく密にならぶ | 不溶性 |
| 穀物βグルカン | β-(1→3)結合と β-(1→4)結合が混在し 規則正しく密にならびにくい | 水溶性 |
きのこ・酵母のβグルカンは構造や働きが異なる
きのこや酵母のβグルカンは、β-(1→3)結合を主鎖とし、β-(1→6)結合による側鎖が枝分かれした構造をもつものが多く、大麦やオーツ麦のβグルカンとは構造が異なります。
このような構造の違いなどにより、きのこや酵母のβグルカンの中には水に溶けにくいものもあり、水への溶けやすさは一様ではありません。
これまで、きのこや酵母のβグルカンは、免疫機能との関係を中心に研究されてきました。
一方、βグルカンはヒトの消化酵素では分解されにくい多糖類であるため、食物繊維として腸内細菌や便通に与える影響も研究されています。
しかし、きのこ・酵母のβグルカンの便通に関するヒトでの研究は、穀物βグルカンと比べてまだ限られています。
そのため、きのこ・酵母βグルカンと穀物βグルカンは、同じ「βグルカン」という名前でも区別して考える必要があります。
βグルカンはどの食品に含まれる?
ここでは、βグルカンが含まれる代表的な食品を少し詳しく紹介します。
大麦

大麦は日常的にβグルカンを取り入れやすい食品の代表です。
大麦には、米のうるち米ともちのように、粘りの少ない「うるち性」と粘りの強い「もち性」があります。
一般に「もち麦」と呼ばれるのは、持ち性の大麦です。白米に混ぜて炊くと、ぷちぷち・もちもちとした食感を楽しめます。
一方、麦とろご飯などに使われる押し麦は、大麦を蒸した後、ローラーで平たく加工したものです。一般的にはうるち性大麦が使われ、もち麦と比べて粘りが少なく、あっさりとした食感があります。
オーツ麦

オーツ麦はピンとこない人でも、オートミールやグラノーラはご存じではないでしょうか。
オーツ麦は、冷涼な地域を中心に栽培されている穀物で、「燕麦(えんばく)」とも呼ばれます。
日本では、オーツ麦そのものよりも、オートミールとして目にすることが多いと思います。
オートミールとは、オーツ麦を蒸す、挽き割る、ローラーで平たくするなど、食べやすく加工した食品の総称です。
なかでも、、蒸したオーツ麦をローラーで平たくした「ロールドオーツ」が広く利用されています。

食べ方は、お粥のようにしたり、ミルクを加えたり、ヨーグルトに入れたり、ご飯の代わりとして調理することもできます。
また、オーツ麦にナッツや種子、ドライフルーツなどを加え、甘味料や油脂とともに焼き上げたものがグラノーラです。
オーツ麦を使用したグラノーラにも、βグルカンが含まれますが、商品によっては砂糖や油脂が多く使われています。
オートミールと同じものとは考えず、原材料や栄養成分表示を確認しましょう。
きのこ

きのこにもβグルカンは含まれています。
きのこのβグルカンは、細胞壁を構成する多糖類の1つで、穀物ベータグルカンとは結合の仕方や水への溶けやすさが異なります。
スーパーなどで購入できる身近なきのこでは、次のようなものにβグルカンが含まれています。
- しいたけ
- まいたけ
- ぶなしめじ
- えのきたけ
- エリンギ
- ひらたけ
- なめこ
- マッシュルーム
ただし、βグルカンの含有量は、キノコの種類だけでなく、栽培方法、成熟度、かさや軸などの部分、乾燥・加工方法によっても変わるため、βグルカンの量を一律に比較することはできません。
特定のきのこだけにこだわるのではなく、さまざまなきのこを日常の食事に取り入れるといいでしょう。
酵母

酵母にもβグルカンが含まれています。
ここでいう酵母とは、主にパン作りやビール醸造に使われる酵母です。
代表的なものに、パン酵母やビール酵母として利用されるサッカロミセス・セレビシエがあります。
酵母βグルカンは、細胞壁を構成する多糖類の1つで、穀物ベータグルカンとは結合の仕方や水への溶けやすさが異なります。
酵母βグルカンは免疫機能との関係を中心に研究されていますが、便通や腸内細菌への影響に関するヒトでの研究は、穀物βグルカンと比べると限られています。
βグルカンは食品によって水への溶けやすさが異なる
こまで見てきたように、βグルカンは含まれる食品によって構造や性質が異なります。
大麦やオーツ麦のβグルカンは水に溶けやすい一方、きのこや酵母のβグルカンには水に溶けにくいものもあり、水への溶けやすさは一様ではありません。
そのため、便通や腸内細菌への働きを考えるときは、主に大麦・オーツ麦のβグルカンが中心になります。
βグルカンは腸でどのように働く?
βグルカンはヒトの消化酵素では分解されにくく、ほとんど消化・吸収されずに大腸まで届きます。
ここからは、便通や腸内細菌との関係について研究が多い、大麦・オーツ麦のβグルカンを中心に解説します。
水に溶けて粘性を示す
大麦やオーツ麦のβグルカンは、水に溶けると水分を含んで粘性を示します。
例えば、もち麦を炊いた時のとろみや、オートミールが水分を含んでお粥状になるのは、この性質をイメージしやすいと思います。
この水分を抱え込む性質が、腸内でも便の状態に影響をします。
腸内細菌によって発酵される
大腸に届いたβグルカンは、腸内細菌の栄養源として利用されます。
腸内細菌による発酵の過程で、
- 酢酸
- プロピオン酸
- 酪酸
などの短鎖脂肪酸が作られ、腸内環境や便通に影響します。
βグルカンは便秘に役立つ?
大麦やオーツ麦のβグルカンは、便秘の改善に役立つ可能性があります。
βグルカンは水分を抱え込むため、便の水分を保ち、硬くなりにくい状態に整えます。
また、大腸では腸内細菌の栄養源として利用されます。βグルカンを利用して腸内細菌が増えると、その腸内細菌も便の一部となり、便の量を支えると考えられます。
オーツ麦やオーツブランを用いた一部の研究では、便重量の増加や排便の改善が示唆されています。
ただし、これらの食品にはβグルカン以外の食物繊維も含まれるため、βグルカンだけの効果とは言い切れません。
βグルカンは下痢・軟便に役立つ?
大麦やオーツ麦のβグルカンは、軟らかい便をある程度まとまりやすくする可能性があります。
βグルカンは水分を抱え込んで粘性を示すため、便の中の余分な水分を保持し、ばらばらになった便をまとまりのある状態に近づけると考えられます。
ただし、βグルカンによる下痢・軟便の改善を直接調べたヒトでの研究は、まだ十分ではありません。
現時点では、下痢・軟便に対する明確な効果が確立しているわけではありませんが、便の水分や硬さを調整し、便通を整える食物繊維の一つとして期待されています。
βグルカンは腸活・菌活に役立つ?

大麦やオーツ麦のβグルカンは、「腸内細菌のエサになる食物繊維」として、腸活・菌活に役立つことがあります。
これまでの内容のまとめにもなりますが、
- βグルカンはヒトの消化酵素では分解されにくく、大腸まで届く
- 大腸で腸内細菌に利用される
- 腸内細菌によって発酵され、短鎖脂肪酸が作られる
- 便の水分や量を整えることで、腸内環境を支える
といった流れです。
ただし、βグルカンを摂れば、必ず特定の善玉菌が増えたり、腸内環境が改善したりするわけではありません。
腸内細菌の状態は、食物繊維だけでなく、食事全体、睡眠、運動、ストレス、飲酒、薬の影響など、さまざまな要因によって変わります。
そのため、βグルカンは腸活・菌活を支える食物繊維の一つとして、もち麦や押し麦、オートミールなどから、ほかの食物繊維や発酵食品と組み合わせて無理なく取り入れるとよいでしょう。
βグルカン摂取時の注意点

ここまで、βグルカンの食物繊維としての働きや、便通への影響についてお伝えしてきました。
ここでもう一度、摂取するときの注意点をまとめておきます。
- 最初は少量から始める
- もち麦や押し麦、オートミールなどを急に増やしすぎない
- 商品に書かれている摂取量の目安を守る
- お腹が張る、ガスが増える、便がゆるくなる場合は量を減らす
- 自分のお腹に合わないと感じる場合は無理に続けない
- セリアック病の方は大麦を避け、オーツ麦はグルテンフリー表示を確認する
- 麦類のアレルギーがある方は、原材料表示を確認する
βグルカンは、たくさん摂ればよいというものではありません。
もち麦やオートミールなどを普段あまり食べていない方が急に摂取量を増やすと、お腹の張りやガス、腹痛、便がゆるくなるなどの症状が出ることがあります。
自分の便通やお腹の反応を見ながら、少量から無理のない範囲で取り入れていきましょう。
セリアック病の方は大麦を避ける

セリアック病は、小麦・大麦・ライ麦などに含まれるグルテンに対する免疫反応によって、小腸の粘膜が障害される病気です。
もち麦や押し麦は大麦から作られているため、セリアック病の方は摂取できません。
オーツ麦は大麦とは異なりますが、製造工程で小麦・大麦・ライ麦が混入することがあります。
グルテンを避ける必要がある方は、自己判断で取り入れず、グルテンフリー表示や原材料表示を確認したうえで、主治医に相談してください。
Q&A|βグルカンに関するよくある質問
ここではよくある質問をまとめてみました。
- βグルカンとは何?
-
βグルカンは、ブドウ糖がβ結合でつながった多糖類の総称です。大麦やオーツ麦、きのこ、酵母などに含まれます。
- βグルカンはすべて水溶性食物繊維なの?
-
いいえ。大麦やオーツ麦のβグルカンは水に溶けやすい食物繊維ですが、きのこや酵母のβグルカンには、水に溶けにくいものもあります。
- βグルカンはどの食品から摂れるの?
-
便通や腸内細菌のとの関係について研究が多いのは、大麦やオーツ麦のβグルカンです。日常生活では、もち麦、押し麦、オートミールなどから取り入れられます。
- もち麦と押し麦はどちらがおすすめ?
-
どちらもβグルカンをとることができます。βグルカンの含有量は、大麦の品種や商品、加工方法によって異なるため、もち麦と押し麦のどちらが必ず多いとは一概にいえません。食べやすく、取り入れやすい方を選ぶのがいいです。
- きのこのβグルカンも便秘に役立つの?
-
きのこのβグルカンも食物繊維の一つですが、便通への影響を調べたヒトでの研究は、大麦やオーツ麦のβグルカンと比べて限られています。便秘対策としてβグルカンを摂取する場合は、大麦やオーツ麦を中心に考えましょう。
- 便通を改善するためにはβグルカンはどれくらい摂ればいいの?
-
便通を整える目的で必要なβグルカンの量は、一律には決められません。βグルカンだけの量にこだわるより、もち麦や押し麦、オートミールなどを少量から食事に取り入れ、便通やお腹の反応を見ながら調整することが大切です。
- βグルカンは毎日とってもいいの?
-
体調に問題がなければ、通常の食品として毎日の食事に取り入れてOKです。
- 加熱するとβグルカンはなくなるの?
-
もち麦を炊いたり、オートミールを加熱したりしても、βグルカンがすべてなくなるわけではありません。ただし、加熱や粉砕などの加工によって、βグルカンの水への溶けやすさや分子量、粘性が変化することがあります。
- βグルカンをとってお腹が張る場合はどうすればいいの?
-
いったん摂取量を減らしてみましょう。βグルカンは大腸で腸内細菌によって発酵されるため、急に量を増やすと、ガスや腹部膨満が生じることがあります。少量に戻しても症状が続く場合は、無理に摂取を続ける必要はありません。
よくある質問を確認したところで、改めて記事全体のポイントを「まとめ」として整理しておきます。
まとめ

ここまで記事を読んでいただいてありがとうございました。
βグルカンの食物繊維としての働きや、便通への影響についてお分かりいただけましたでしょうか。
もう一度まとめると、
- βグルカンは、大麦・オーツ麦、きのこ、酵母などに含まれる多糖類
- 食品によって構造や水への溶けやすさ、働きが異なる
- 大麦やオーツ麦のβグルカンは水に溶けやすく、粘性を示す
- ヒトの消化酵素では分解されにくく、大腸で腸内細菌に利用される
- 腸内細菌によって発酵され、短鎖脂肪酸の産生に関わる
- 便の水分や量に影響し、便秘の改善を支え、軟便のにも役立つ可能性がある
- 摂りすぎると、お腹の張り、ガス、腹痛、便がゆるくなることがある
となります。
βグルカンは、便通や腸内環境を整える選択肢の一つですが、体質や摂取量によって合う・合わないがあります。
もち麦や押し麦、オートミールなどを少量からとり入れ、便の状態やお腹の調子を見ながら、無理なく続けることが大切です。
なお、セリアック病の方は大麦を避ける必要があります。オーツ麦についても、グルテンの混入がない製品かどうかを確認してください。
この記事が、皆様の健康増進と病気の予防のために、少しでもお役に立てれば幸いです。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
草加西口大腸肛門クリニック 院長 金澤 周(かなざわ あまね)
参照文献
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