「イヌリンってよく聞くけど、体にいいのかな?」
皆さんも便秘対策や腸活、食物繊維について調べていて、「イヌリン」という名前を見かけたことがあるのではないでしょうか。
イヌリンは、腸内細菌のエサになりやすい水溶性食物繊維の一種で、便通を整える目的で多くの方が取り入れていますが、
すべての方に合うというわけではなく、体質やとり方によっては、お腹の張り、ガス、腹痛、下痢などの原因になることがあります。
この記事では、イヌリンとは何か、便通やお腹の張りとの関係、腸活に役立つのか、摂取時の注意点について、専門医の立場からわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- イヌリンの食物繊維としての働き
- イヌリンと腸内細菌・便通との関係
- イヌリン摂取の際の注意点
この記事の信頼性
この記事を書いた私の名前は「金澤 周(かなざわ あまね)」です。
この記事は、草加西口大腸肛門クリニックの院長が、外来での実際の指導、公的資料、論文、各製品の公式情報をもとに、専門医の立場から執筆しています。
イヌリンとは?

イヌリンとは、ゴボウ、玉ねぎ、菊芋、チコリなどに含まれる水溶性食物繊維の一種です。
英語では「inulin」と表記され、食品やサプリメントなどにも使われることがあります。
食物繊維には、水に溶けやすい「水溶性食物繊維」と、水に溶けにくい「不溶性食物繊維」があり、
イヌリンは水溶性食物繊維に分類されます。
イヌリンは人の消化酵素では分解されにくく、
大腸まで届いて腸内細菌に利用されやすい食物繊維として知られています。
イヌリンとフラクトオリゴ糖との違いは?
イヌリンについて調べていると、「フラクトオリゴ糖」という言葉を見かけることがあります。
イヌリンとフラクトオリゴ糖は、どちらも「イヌリン型フルクタン」という仲間です。
少し化学的なお話になるので、わかりやすく図を使いながら説明をしていきます。
まずは下の図を見てください。

まず、「フルクタン」とは、「フルクトース(果糖)」という糖がいくつもつながった炭水化物の総称です。
そのフルクタンの中でも、フルクトースが主にβ-2,1結合という形で鎖のように繋がったものを、「イヌリン型フルクタン」と呼びます。
イヌリン型フルクタンのうち、鎖が短いものが「フラクトオリゴ糖」、鎖が長いものは「イヌリン」と呼ばれます。
つまり、
- フルクタン=フルクトースがつながった糖の仲間全体
- イヌリン型フルクタン=フルクタンの中の1つのグループ
- フラクトオリゴ糖=短いイヌリン型フルクタン
- イヌリン=長いイヌリン型フルクタン
というイメージです。
そのため、「イヌリンが体内でフラクトオリゴ糖に変わってから働く」というよりも、
イヌリン自体が大腸まで届き、腸内細菌によって分解・利用されると考えるとわかりやすいです。
イヌリンの特徴
イヌリンの大きな特徴は、人の消化酵素では分解されにくく、食物繊維として大腸まで届きます。
そして、大腸に届いたイヌリンは腸内細菌の餌となり、腸内細菌によって利用されることで、
酢酸、プロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸が作られます。

短鎖脂肪酸は、腸内環境や腸の粘膜維持に関わる物質として注目されています。
一方で、イヌリンは腸内細菌によって発酵されやすい食物繊維でもあります。
そのため、体質や摂取量によっては、
- お腹の張り
- ガス
- 腹痛
- 下痢
などが生じることもあります。
実際に私自身も、イヌリンを摂取するとお腹が張ってゴロゴロする感じがあり、
体質によって合う・合わないがある食物繊維だと感じています。
イヌリンのメリットとデメリット
ここまでのお話から、イヌリンのメリットとデメリットをスライドにまとめました。

ただ、イヌリンの効果は人によってそれぞれなので、
メリットもデメリットも必ずそうなるわけではなく、「可能性があること」と考えてください。
イヌリンは何に含まれているの?
ここまで、イヌリンの特徴などをみてきました。
ここからは、実際にイヌリンがどんな食材に含まれているかを見ていきましょう。
イヌリンが含まれる食材
イヌリンは、菊芋、ゴボウ、玉ねぎ、チコリ、ニンニクなどに含まれています。
特に、菊芋やチコリには比較的多く含まれることが知られています。
報告によると、イヌリンの含有量は、以下の通りです。
| 食材 | イヌリン含有量の目安 |
| 菊芋・チコリ | 15〜20% |
| ニンニク | 6〜16% |
| ゴボウ | 3.5〜4% |
| 玉ねぎ | 2〜6% |
ただし、実際の含有量は、品種、部位、収穫時期、保存方法、調理方法などによって変わります。
イメージとしては、「玉ねぎを食べれば十分な量のイヌリンが摂れる」というよりは、
イヌリンは身近な食材にも含まれている水溶性食物繊維の1つと考えるとわかりやすいです。
イヌリンのサプリメントや健康食品

イヌリンは食品だけでなくサプリメントや健康食品でも使われています。
よく見かけるのは、イヌリン粉末を飲みものやヨーグルト、料理などに混ぜて使うタイプです。
その他、菊芋パウダー、菊芋茶などもイヌリンを含む健康食品として販売されているものもあります。
一般的に言えることですが、サプリメントや健康食品は、「健康にいい」というイメージから、
「たくさんとると効果も増える」と感じる方も多く、
野菜などの食材よりも一度に摂取する量が多くなりやすいため注意が必要です。

イヌリンは、体質によってはお腹の張り、ガス、腹痛、下痢などを生じることがあります。
取り入れる場合は、商品の摂取量を守り、少量から始めて自分のお腹の反応をみていきましょう。
イヌリンは腸でどのように働く?サイリウムとの違いは?
イヌリンは、サイリウムとは少し働き方が違います。
サイリウムは、水分を含んで大きくふくらみゲル状となり、便の形を直接整えるタイプの食物繊維です。
一方で、イヌリンは水に溶かしてもサイリウムのようにゲル状にはならないため、便を直接整えるタイプの食物繊維ではありません。

イヌリンの特徴は、大腸まで届いて腸内細菌に利用されやすいことです。
大腸まで届いたイヌリンは、ビフィズス菌などに利用され、
その結果として、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸が作られます。
そして、短鎖脂肪酸は、腸内環境や腸の粘膜維持に関わります。
つまり、サイリウムが「便の形を整える食物繊維」というイメージに対して、
イヌリンは「腸内細菌に利用されやすい食物繊維」と考えるとわかりやすいです。
イヌリンは便秘に役立つ?
イヌリンは、便秘対策の選択肢の1つになる可能性があります。
イヌリンは、大腸で腸内細菌に利用されることで、短鎖脂肪酸などの物質が作られ、
腸内環境が改善することで、排便習慣を整える方向に働くことがあります。
実際に、イヌリンを含む食品やイヌリン型フルクタンの摂取により、排便回数や排便習慣への影響を調べた研究もあります。
そのため、便の回数が少ない方、食物繊維が不足しがちな方、腸活の一環として便通を整えたい方では、イヌリンが役立つこともあるため、取り入れてみるのもいいかもしれません。
イヌリンでお腹が張る・ガスが出ることはある?

先日、私の外来でも、イヌリンを摂取した患者さんが、
「イヌリンが便秘にいいと聞いて飲んでみると、お腹がゴロゴロしてお腹も張ってかえって調子が悪くなったのですが、続けてもいいのでしょうか?」
といって来院されました。
イヌリンを摂取すると、お腹が張ったり、ガスが増えたりすることがあります。
これは、腸内細菌によってイヌリンが発酵されるためです。
腸内細菌に利用されやすいというメリットと、発酵によってガスが増えるというデメリットのバランスをみながら、摂取量を調整していくのが大切です。
イヌリンは下痢・軟便の改善に役立つ?
イヌリンは下痢や軟便の方が摂取する場合には注意が必要です。
イヌリンは、腸内細菌によって発酵されやすく、お腹の張り、ガス、腹痛、下痢などが生じることがあるため、
もともと下痢や軟便の方が摂取するとかえって調子が悪くなることがあります。
イヌリンもサイリウムも水溶性食物繊維ですが、働き方には違いがあります。
下痢や軟便の改善には、便をゲル状にするサイリウムの方が向いている場合があります。
下痢や軟便を改善したい方は、まずはサイリウムを試してみるのがおすすめです。
イヌリンは腸活・菌活に役立つ?

イヌリンは「腸内細菌のエサになる食物繊維」として、腸活・菌活に役立つことがあります。
これまでの内容のまとめにもなりますが、
- イヌリンは人の消化酵素では分解されにくく大腸まで届く
- 大腸でビフィズス菌などの腸内細菌に利用される
- 腸内細菌により酢酸、プロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸が作られる
- 短鎖脂肪酸は腸内環境や腸の粘膜維持に関わる
- 腸内環境をサポートし、腸活・菌活に役立つことがある
といった流れです。
イヌリン摂取時の注意点

これまでも、イヌリン摂取時の注意点についてはお伝えしてきましたが、
ここでもう一度まとめてみたいと思います。
イヌリンは腸内細菌に利用されやすいと同時に、発酵されやすい食物繊維です。
そのため、摂取する場合は以下の点に注意しましょう。
- 最初は少量から始める
- 商品に書かれている摂取量の目安を守る
- お腹の張り、ガス、腹痛、下痢が出る場合は量を減らす
- 下痢や軟便になりやすい方は慎重に試す
- 体に合わないと感じるときは無理に続けない
イヌリンは、腸活・菌活の選択肢の1つですが、全ての方に合うわけではありません。
「体に良さそうだからたくさんとる」のではなく、
自分のお腹の反応を見ながら、無理せず取り入れていきましょう。
Q&A
ここではよくある質問をまとめてみました。
- イヌリンとは何?
-
イヌリンは、ゴボウ、玉ねぎ、菊芋、チコリなどに含まれる水溶性食物繊維の一種です。人の消化酵素では分解されにくく、大腸まで届いて腸内細菌に利用されやすい食物繊維として知られています。
- イヌリンとフラクとオリゴ糖は同じもの?
-
まったく同じではありませんが、どちらも「イヌリン型フルクタン」という仲間です。一般的には、鎖が短いものをフラクトオリゴ糖、鎖が長いものをイヌリンと考えるとわかりやすいです。
- イヌリンは便秘に役立つの?
-
イヌリンは、便秘対策の選択肢の一つになる可能性があります。大腸で腸内細菌に利用され、短鎖脂肪酸などの物質が作られることで、腸内環境や排便習慣に関わると考えられています。
- イヌリンでお腹が張ったり、ガスが出たりすることはあるの?
-
あります。イヌリンは腸内細菌によって発酵されやすい食物繊維です。そのため、体質や摂取量によっては、お腹の張り、ガス、腹痛、下痢などが生じることがあります。
- イヌリンををとるときに注意することは?
-
最初は少量から始め、商品に書かれている摂取量の目安を守ることが大切です。お腹の張り、ガス、腹痛、下痢などが出る場合は量を減らすか、無理に続けないようにしましょう。
よくある質問を確認したところで、改めて記事全体のポイントを「まとめ」として整理しておきます。
まとめ

ここまで記事を読んでいただいてありがとうございました。
イヌリンの食物繊維としての働きや、便通への影響についてお分かりいただけましたでしょうか。
もう一度まとめると、
- イヌリンは、ゴボウ、玉ねぎ、菊芋、チコリなどに含まれる水溶性食物繊維の1つ
- 人の消化酵素では分解されにくく、大腸まで届いて腸内細菌に利用されやすい
- 腸内細菌に利用されて、短鎖脂肪酸などの物質が作られることで、腸内環境の維持や排便習慣に関与する
- 腸内細菌により発酵されやすく、お腹の張り、ガス、腹痛、下痢などが生じることがある
- 始める時は少量から始めて、摂取量の目安を守ることが重要
となります。
イヌリンは、便通や腸内環境を整える選択肢の一つですが、体質や摂取量によって合う・合わないがあります。
まずは少量から始め、便の状態やお腹の調子を見ながら、無理なく取り入れていくことが大切です。
この記事が、皆様の健康増進と病気の予防のために、少しでもお役に立てれば幸いです。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
草加西口大腸肛門クリニック 院長 金澤 周(かなざわ あまね)
参照文献
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