「大腸内視鏡検査後は車の運転はいつからしてもいいですか?」
「家が遠いので、検査当日は自転車で来てもいいですか?」
クリニックでも、よくいただく質問です。
日頃から、仕事や生活で車や自転車に乗っている方にとっては、ぜひ知りたいことだと思います。
この記事では、鎮静剤・鎮痛剤(以下、鎮静・鎮痛)を使用した場合に、当日運転はNGな理由をわかりやすく解説をしていきます。
この記事でわかること
- 当日・翌日の運転OK/NG目安(鎮静あり/なし別)
- ポリープ切除後の運転の注意(出血リスク・振動を避ける期間)
- 対象と当日の帰宅方法(自動車・バイク・自転車・重機)
この記事の信頼性
この記事を書いた私の名前は「金澤 周(かなざわ あまね)」です。
この記事は、草加西口大腸肛門クリニックの院長が専門医の立場から執筆しています。
結論|運転再開の可否【一目でわかる早見表】
自動車・バイク・自転車・重機は、すべて「運転」として同一基準で判断します。
検査当日の運転 | 検査翌日の運転 | |
---|---|---|
鎮静・鎮痛なし | ○ (検査終了後、体調良好が条件) | ○ |
鎮静・鎮痛あり | NG (運転禁止) | ○ (頭痛・ふらつき・強い眠気などがあれば×) |
想定:日帰りでの大腸内視鏡検査。
補足:当日はご自身の運転はできません(自転車も含みます)。公共交通機関またはご家族の送迎やタクシーをご利用ください。
【大腸ポリープ切除を行った方へ】 本記事の基準は「鎮静・鎮痛」による検査後の運転可否を示したものです。ポリープ切除を行った場合は出血リスクの観点が加わるため、数日間は自転車やバイクなど振動の大きい移動や悪路の走行を控えましょう。
大腸内視鏡検査後に運転が問題となる理由(2つ)
大腸内視鏡検査後に運転がNGとなる理由は、以下の2つです。
- 鎮静・鎮痛剤の影響による、眠気・ふらつき・判断力の低下
- 前処置・検査による脱水や疲労のための体調不良
鎮静・鎮痛剤の影響による、眠気・ふらつき・判断力の低下
検査中に鎮静・鎮痛剤を使用した場合、検査終了後も薬の影響が残り、
自分では「大丈夫!」と思っていても、眠気・ふらつき・判断力の低下がおこります。

車の運転中に反応時間が遅れて、急なブレーキや危険回避が遅れるために、
当日はご自身の運転(自動車・バイク・自転車・重機を含む)はできません。
翌日も、頭痛・ふらつき・強い眠気がある場合は運転は見送り、もう1日空けてください。
クリニックでは、大腸内視鏡検査後は、休憩室で少し休憩後にお着替えして、検査の説明をしています。
後日外来に患者さんが受診された時に、
「検査後の説明の内容をよく覚えていないのでもう一度説明してください」
と言われることがよくあります。
説明の時は、ご理解されている様子に見えても、実は覚えていないという一例です。
「鎮静・鎮痛剤を使ったら、自分での運転は絶対しない!」と覚えてください。
前処置・検査による、脱水や疲労のための体調不良

検査当日は、前処置の下剤の内服から始まり、検査を受け帰宅するまで1日がかりとなり、
以下の要因で肉体的・精神的にも疲労して体調が不安定になります。
- 大量の下痢による脱水
- 朝からの絶食によるエネルギー不足
- 検査の緊張・疲労
このため、立ちくらみやぼんやりした感じが出やすい状況です。
つかれた状態での運転は、思わぬ判断ミスから事故につながるリスクを高めます。
検査当日はご自身での運転は行わず、公共の交通機関やご家族の送迎・タクシーをご利用ください。
では、鎮静なし/ありで、いつから運転を再開できるかの具体的な目安を確認しましょう。
鎮静・鎮痛なしの場合の運転再開の目安
検査終了後、体調が良好なら当日の運転は可能です。(自動車・バイク・自転車・重機を含みます)
ただし、検査による疲れが強い場合や脱水ぎみのときは、運転を控えてください。
また、検査中に腸の動きを抑える薬(ブスコパン®、セスデン®など)を使った場合は、
薬の影響でまぶしさや視界のぼけを感じて、運転に支障が出ることがあります。

「まぶしくて運転しにくいな」と感じたときは無理をせず、
少し時間を空けて、まぶしさを感じなくなってから運転をするようにしてください。
自己チェック:以下に1つでも当てはまれば運転を見送りましょう。
- 立ちくらみ・ふらつき
- 眠気・頭痛・ぼんやりした感じ
- 視界がぼやける/光がまぶしく感じる
- 腹痛・気分不快
- 集中できない/反応が遅い感じ
鎮静・鎮痛ありの場合の運転再開の目安
検査当日は運転禁止です。翌日は体調が完全に戻っていれば運転を再開できます。頭痛・ふらつき・眠気などが少しでもあれば、さらに+1日見送りましょう。
まず、国内外のガイドラインから、内視鏡検査で鎮静・鎮痛ありの場合の運転開始についての記述を見てみます。

日本の学会ガイドライン(日本消化器内視鏡学会 2020年)では、
検査室の退室の評価基準を示すにとどまっていて、運転再開の具体的な時間は定めていません。
一方で、英国のガイドライン(The British Society of Gastroenterology 2023)では、
「内視鏡で鎮静/鎮痛を受けた患者は、術後24時間は『自動車の運転や自転車に乗る、機械の操作、法的文書の署名、重要な意思決定、飲酒』をしないように」推奨と示しています。
そこで、当院では安全上の運用として、
「当日は運転NG /翌日OK(頭痛・ふらつき・眠気などが残る場合は+1日見送り)」
を採用しています。
自己チェック:以下に1つでも当てはまれば運転を見送りましょう。
- 立ちくらみ・ふらつき
- 眠気・頭痛・ぼんやりした感じ
- 視界がぼやける/焦点が合いにくい
- 腹痛・気分不快
- 集中できない
- 反応が遅い感じ
ポリープ切除を行った方へ|運転の注意点(出血リスク)
鎮静の基準に加え、出血リスクの観点から数日間は強い振動(自転車・悪路など)を避けてください。

ガイドラインなどを参考にすると、
出血は、直後〜48時間の早期と、7〜14日頃の遅い時期に発生しやすく、病変の条件や切除手技でリスクが上がることが示されています。
- 基本目安:ポリープ切除後48〜72時間は強い振動を避ける
- 高リスク切除の場合:最大1週間程度まで目安を延ばすのが安全
高リスク切除の例は以下のとおりです。
- ポリープのサイズが10mm以上(特に20mm以上)
- 右側結腸の病変
- 太い茎を持つ有茎性の病変
- 通電切除(ホットスネア/EMR/ESD)
- 抗血栓薬の内服中・再開直後
強い振動の例としては、段差や砂利道を含む自転車、長時間の悪路走行、工事車両・重機の運転、腹圧が上がりやすいスポーツ(ラン・筋トレ等)などです。
もし、血便・下血、持続する腹痛、ふらつき、冷や汗などの症状があれば、すぐに運転を中止して病院へ連絡・受診をしてください。
また、日頃から自転車などに乗る方の場合は、検査終了後に医師に「いつから自転車に乗っていいのか」を確認してください(ポリープ切除の状況により判断が変わります)。
Q&A|大腸内視鏡検査後の運転に関するよくある質問
患者さんからよくいただく質問を10問にまとめました。気になる項目をご確認ください。
-
Q. 大腸内視鏡検査当日の運転はできるの?
A. 検査の際に鎮静剤・鎮痛剤を使った場合は、検査当日の運転は禁止です。鎮静・鎮痛を行わなかった場合は、検査後の体調が良ければ、当日の運転も可能です。
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Q. 検査翌日はいつから運転できるの?
A. 検査翌日は、体調が完全に戻っていれば運転OKです。頭痛・ふらつき・眠気・ぼんやり感などが少しでもあれば、「+1日見送り」ましょう。
-
Q. 自転車・原付・電動キックボード・電動アシスト自転車は?
A. すべて「運転」に含み、同じ基準です。鎮静・鎮痛ありの場合は当日は不可で、翌日も違和感があれば「+1日見送り」ましょう。
-
Q. 大腸内視鏡検査当日の帰宅方法は?
A. 自転車も含めて、ご自身の運転はできません。公共交通機関/ご家族の送迎/タクシーをご利用ください。
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Q. 運転を再開した後に、高速道路・長距離・夜間・悪天候の運転はしてもいい?
A. 鎮静・鎮痛がない場合は、当日でも体調が良ければ運転可能ですが、初回は無理せず一般道路の短距離からにしてください。鎮静・鎮痛ありの場合は、翌日体調か完全に戻っていれば再開可能ですが、この場合も無理せずに一般道路からの運転にしてください。
-
Q. 検査中に腸の動きを抑える薬(ブスコパン®、セスデン®)のみ使い、視界がまぶしい/ぼやけるけど運転はしていいの?
A. まぶしい・みえにくいうちは運転はしないでください。少し時間を空けて、症状が消えてから運転をするようにしてください。
-
Q. 市販薬や処方薬(風邪薬・抗アレルギー薬・睡眠薬など)を飲んでいます。運転はいつから再開できるの?
A. 検査で使う鎮静・鎮痛剤は、日頃の薬の「眠気・ぼんやり」する作用を一時的に増強することがあります。鎮静・鎮痛ありの場合は、翌日でも眠気が出る場合は運転は見送りましょう。鎮静・鎮痛なしの場合は、眠気の出る薬を内服している場合は、検査当日は運転をできるだけ控えて、翌日の体調で検討してください。判断に迷う場合は、医師または薬剤師に相談をしてください。
-
Q. 私は「鎮静・鎮痛剤が残りやすいタイプかも…」、検査翌日の運転はどうすればいいの?
A. 鎮静・鎮痛をした方で、次のどれかに当てはまる場合は、翌日でも無理せずに運転は+1日見送りを検討してください。
・高齢
・体重が軽い
・肝機能が悪いと言われている
・睡眠不足がある
・薬の影響が強く出やすい自覚がある -
Q. 大腸ポリープを切除した場合、車・自転車はいつからOK?
A. 鎮静・鎮痛の基準に加えて、出血のリスクも考える必要があります。ポリープ切除後の出血のリスクを避けるためには、48〜72時間は「強い振動(自転車・悪路など)」は避けてください。また、以下の
・ポリープのサイズが10mm以上
・右側結腸
・通電切除(ホットスネア/EMR/ESD)
・抗血栓薬再開直後
などの場合は、出血のリスクが高いので、1週間後まで運転を控えた方がいいこともあります。検査後に担当医に確認をしてください。 -
Q. 運転再開後に気分が悪くなったら?
A. まずは運転を中止し、安全な場所に停車してください(P、サイドブレーキ、ハザード)。その日の運転は再開せず、受診した医療機関に電話(家族がいれば家族にも連絡)して、タクシーや公共交通機関で移動をしてください。血便・下血、強い腹痛、強いふらつき、冷汗、意識がぼんやりする、などの場合は、119番で救急要請をしてください。
よくある質問を確認したところで、改めて記事全体のポイントを「まとめ」として整理しておきます。
まとめ

ここまで記事を読んでいただきありがとうございました。
『大腸内視鏡検査後の運転がいつからできるか』についてお分かりいただけましたでしょうか。
基本的には、
- 鎮静・鎮痛なしの場合:体調がよければ検査当日の運転OK(頭痛・ふらつき・眠気などが残る場合は+1日見送り)
- 鎮静・鎮痛ありの場合:当日は運転NG /翌日OK(頭痛・ふらつき・眠気などが残る場合は+1日見送り)
と考えてください。
判断に迷う場合は、受診した医療機関で相談をしてください。
ご注意:内容は一般的な目安です。最終判断は、受診される医療機関の指示(指示書)を優先してください。
なお、検査当日の仕事の復帰目安については、こちらをご覧ください。

この記事が、
- 皆様の健康維持
- 皆様の病気の予防・早期発見・早期治療
- 皆様が大腸肛門科を受診する際の不安の軽減
これらのためにお役に立てれば幸いです。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
草加西口大腸肛門クリニック 院長 金澤 周(かなざわ あまね)
当院の診療について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください
参考文献
- 後藤田卓志,赤坂拓司,阿部清一郎,ほか.内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン(第2版).日本消化器内視鏡学会誌 2020; 62; 1635-1681
- Side R, Turnbull D, Haboubi H, et al. British Society of Gastroenterology guidelines on sedation in gastrointestinal endoscopy. Gut 2024; 73: 219-245
- 田中 信治,樫田 博史,斎藤 豊,ほか.大腸ESD/EMRガイドライン.日本消化器内視鏡学会誌 2014; 56: 1598-1617.
- 浦岡 俊夫,滝沢 耕平,田中 信治,ほか.大腸cold polypectomyガイドライン(大腸ESD/EMRガイドライン追補).日本消化器内視鏡学会誌 2021; 63: 1149-1158
- 大腸ポリープ診療ガイドライン2020.日本消化器病学会
- 厚生労働省HP 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf