「大腸内視鏡検査の前日に飲み会が入っちゃったけど大丈夫かな?」
「少し飲まないと眠れないんですけど…」
検査前日にアルコールを飲んでいいのか疑問ですよね?
WEBで検索してみても色々な意見がありどうしていいか判断に迷います。
この記事では、「大腸内視鏡検査前日にアルコールを飲んでいいの?」という疑問を解決していきます。
この記事の内容
- 大腸内視鏡検査前日のアルコールについての一般論
- 検査前日のアルコールの悪影響
- 検査前日のアルコールは全く飲んではいけないのか
- 検査前日のアルコールはどのくらい飲んでいいのか
- 検査前日のアルコールに関するQ&A
この記事の信頼性
この記事を書いた私の名前は「金澤 周(かなざわ あまね)」です。
埼玉県草加市にある、草加西口大腸肛門クリニックの院長です。
また、大腸と肛門の専門医であり指導医でもあります。
そして、毎年約1,000件の大腸内視鏡検査を行っています。
これを読めば、大腸内視鏡検査前のアルコールに関する計画を立てやすくなります。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
それでは始めていきましょう。
ご注意:
今回の記事は、大腸内視鏡検査前日にもしっかりと下剤の飲むパターンの方の場合は対象外となります。
詳しくは検査を受けるクリニックの医師に相談をしてください。
大腸内視鏡検査前日のアルコールはダメ?
大腸内視鏡検査前日のアルコールは飲まないのがベストです!
ただ、個人的には、完全にダメではないと思います。
大腸内視鏡検査前日の準備で大切なことは、
『検査当日に向けての体のコンディションを整える』
ことです。
大腸内視鏡検査は、事前に腸の中をきれいにしないと正確な検査はできません。
このため、検査前日から食事制限や下剤の内服、検査当日の約2リットルの下剤の内服があります。
前日にアルコールを飲み過ぎてしまい二日酔いとなり、
検査当日の約2リットルの下剤がしっかり飲めなければ元も子もありません。
また、検査当日は下剤で大量に下痢をするため、少なからず脱水になります。
前日のアルコールの飲み過ぎで脱水になっていると、
下剤による脱水状態がさらに悪化し、体調不良となり最悪検査を受けられない可能性もあります。
二日酔いや脱水による体調不良を避け、
万全の体調で大腸内視鏡検査を受けていただきたいので、
検査前日のアルコールはNGとしているクリニックが多いです。
ここからは検査前日のアルコールについてより詳しくみていきます。
大腸内視鏡検査前日のアルコールの悪影響
アルコールは尿を出しやすくする
アルコールには尿を出やすくする利尿作用があります。
飲み会などでアルコールの量が増えてくると、
頻回にトイレに行く経験のある方はいらっしゃると思います。
これには『バソプレシン』というホルモンが関係しています。(文献1)
バソプレシンは脳の下垂体というところから分泌されます。
バソプレシンは腎臓に働き、水の再吸収を促進することで、尿量を減らします。
このため、抗利尿ホルモンと呼ばれています。
アルコールは、バソプレシンの働きをブロックします。
このため、腎臓で水が再吸収されず、尿量が増えてしまいます。
尿が増えて脱水になる
尿量が増えることで体は脱水になります。
脱水になると以下のような症状が出てきます。
- 口の渇き
- 尿量の減少
- 体のだるさ
- めまい
- たちくらみ
飲み過ぎてたくさんトイレに行った翌日、
朝起きたら異常に喉がかわいていて、トイレに行ったら濃い黄色い尿が出た経験はありませんか?
その時まさにあなたの体は脱水になっています。
検査当日の下剤でさらに脱水になる
検査当日には約2リットルの下剤を内服して大腸をきれいにします。
飲み始めは①のような便ですが、
数回から10回程度トイレに行くことで、最終的には⑤の状態までもっていきます。
10回弱もトイレに行って下痢をするので、当然脱水傾向になります。
検査前日にアルコールを飲んですでに脱水状態にあると、
図のように検査当日の下剤の内服で、
もともとある脱水がさらに悪化する可能性があります。
大腸内視鏡検査のときに脱水になっているとおこるデメリット
頭痛やだるさの原因になる可能性
「そんなに脱水だといけないの?」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
検査当日の脱水を甘くみなでください!
検査当日の下剤を飲んでから下痢をしてトイレに通い出して、
体調が悪くなりクリニックに連絡をくれる方がいらっしゃいます。
- 「下剤を飲んでから頭痛がします」
- 「下痢をしていて体がだるくなってきました」
必ずしも脱水のみが原因とは限りませんが、
脱水になると頭痛やだるさなどの体調不良になる方がいます。
最悪の場合は検査延期になってしまう可能性があります。
点滴ルートの確保が難しくなる可能性
もう一つは、点滴ルートの確保が難しくなります。
大腸内視鏡検査際は、脱水予防の点滴や、鎮静剤の投与のために、点滴ルートを確保します。
脱水状態になっていると、血管が見えにくくなり、点滴ルートの確保が難しくなることがあります。
どうしても点滴が取れない場合は、鎮静剤などが使えない場合もあります。
このように、大腸内視鏡検査の当日に脱水によるメリットはありません。
検査当日は、脱水予防のため十分な水分補給をしながら下剤を飲んでください!
大腸内視鏡検査前日のアルコールは全く飲んではいけないの?
冒頭でもお話ししましたが、
大腸内視鏡検査前日のアルコールは飲まないのがベストです!
しかし、大腸内視鏡検査前日の準備で大切なことは、
『検査当日に向けての体のコンディションを整える』
ことなので、私個人の意見としては体調が良い状態で検査が受けられればOKだと思っています。
大腸内視鏡検査前日のアルコールはどのくらい飲んでいいの?
「検査前日は具体的にどれくらいアルコールを飲んで良いのでしょうか?」
と検査予約の際に聞かれることもあります。
アルコールに強い方もいれば弱い方もいるので厳密な数字は難しいですが、
私は診察室で以下のようにお答えしています。
- アルコールが弱い人・・・禁酒
- 普通の人・・・ビール350ml1本
- 日頃から飲んでいる人・・・ビール500ml1本
ここからはこの理由を説明していきます。
私たちは、1時間で4gのアルコールを代謝できると報告されています。(文献2)
夜12時に寝て、次の日6時に起きる方の場合で考えてみましょう。
朝起きた時にアルコールが体にない状態にするには、
寝ている6時間でアルコールが代謝されなければなりません。
6時間で代謝できるアルコールは、6×4g=24gとなります。
アルコール20gは、アルコール5%のビールだと500mlになります。
日頃から飲んでいる人ならビール500mlくらいまでなら翌日に残らないといえます。
ただ、アルコールの代謝能力には個人差があります。
より安全に検査を受けていただきたいので、
普通の人は、ビール350mg1本にとどめ、
日頃からお酒に弱い人は大腸内視鏡検査前日に飲むことは控えてください。
また、検査前日にアルコールを飲む場合も、
脱水予防のために、いつも以上に水分の摂取を心がけてください。
検査前日にアルコールに関するQ&A
Q.大腸内視鏡検査前日に飲んで大丈夫なお酒の種類はありますか?
A. お酒の種類は関係ありません。できれば缶ビール1本程度にしてください。
大腸内視鏡検査前日に飲めるアルコールの種類の指定はありません。
普段からアルコールに弱い方でなければ、
6時間の睡眠を取るとして、缶ビール1本程度であれば翌日に残らない計算になります。
できれば禁酒が望ましいですが、どうしても飲みたい方は、『350mgビール1本!』と覚えてください。
Q.大腸内視鏡検査前日にアルコールを飲むとポリープ切除の際に出血しやすくなりますか?
A. 検査の時にアルコールが体内になければ大丈夫と考えます。
アルコールは血管拡張作用があり、体中の血流を良くします。
このため、ポリープ切除の際にアルコールが体内に残っていれば、出血のリスクは増えます。
しかし、前日のアルコールであれば、先ほど述べた睡眠時間とアルコール摂取量を守っていれば、
検査の時にアルコールは代謝されているはずなので、
出血のリスクは増えないと考えられます。
Q.大腸内視鏡検査の2日前のアルコールはOKですか?
A. 検査2日前のアルコールはOKです。
検査2日前のアルコールの制限はありませんが、注意点はあります。
お酒と一緒に食べるものは消化のいいものにしてください!
お酒のつまみには腸に残りやすいものがたくさんあります。
お酒がすすみいろいろ食べすぎると、腸に残ってしまい検査に支障をきたす可能性があります。
検査2日前の食事について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
大腸内視鏡検査前後の食事と飲み物について【専門医が徹底解説】
まとめ
ここまで記事を読んでいただきましてありがとうございました。
大腸内視鏡検査前日のアルコールについておわかりいただけましたでしょうか?
大腸内視鏡検査前日は、翌日の体調のことを考えると禁酒がベストです!
ただ、いろいろな理由でどうしても前日のアルコールをやめられない方もいらっしゃると思います。
個人的な意見にはなりますが、検査当日に影響が出ない程度のアルコールであればOKと考えます。
しかし、大腸内視鏡検査前日のアルコールに関しては、医師の考え方により意見が分かれます。
クリニックによっては、「前日は絶対禁酒でお願いします」というところもあります。
不安な方はご自分で判断せず、
実際に検査を受けるクリニックの医師に相談してみてください。
この記事が、
- 皆様の健康維持
- 皆様の病気の早期発見・早期治療
- 皆様が大腸内視鏡検査を受ける際の不安や疑問の軽減
これらのためにお役に立てれば幸いです。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
草加西口大腸肛門クリニック 院長 金澤 周(かなざわ あまね)
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引用文献
- 額田 粲.飲酒の生理.日本醸造協會雑誌 1971; 66: 960-963
- 松本 博志.アルコールの基礎知識.Jpn. j. Alcohol & Drug Dependence 2011; 46: 146-156