腹痛で血便まであるとびっくりしますね。
腹痛だけでも困るのに、出血があるとさらに不安になると思います。
クリニックにも腹痛と血便で多くの患者さんがいらっしゃいます。
この記事では、「腹痛で血便があるときに考えられる病気やその治療法は?」といった疑問を解決していきます。
この記事の内容
- 血便と下血のちがい
- 腹痛で血便や下血がある時の原因4つ
- 急な腹痛で血便や下血がある場合の原因と対処法
- いつもある腹痛で血便や下血がある場合の原因と対処法
- 腹痛で血便がある時の診察のながれ
- 恥ずかしくないおしりの診察
この記事の信頼性
この記事を書いた私の名前は「金澤 周(かなざわ あまね)」です。
埼玉県草加市にある、草加西口大腸肛門クリニックの院長です。
また、大腸と肛門の専門医であり指導医でもあります。
これまでに腹痛や血便で悩む患者さんを10,000人以上診察してきました。
これを読めば、腹痛で血便があるときの対処法も分かります。
腹痛で血便があるときは、大腸がんや胃がんなど、あなたの命に関わる病気の可能性もあります。
腹痛で出血がある時は決して放置しないでください!
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
それでは始めていきましょう!
血便と下血とは?
まず最初に『血便』と『下血』の違いについて説明します。
血便と下血はどちらも肛門から出血することをいいます。
おしりからの出血をまとめて『血便』と表現することが多いですが正確には違います。
2つの違いは『色』です。
血便は便に鮮血(赤い血)が混ざっていて赤色の状態。
下血は古い血が混ざることにより便が黒くなっている状態です。
出血してから時間がたつにつれて便に混ざる血液の色は赤色から黒色に変化していきます。
このため、血が出ているとこるが肛門に近いほど血液は赤く遠いほど黒くなります。
胃や十二指腸など肛門から遠いところからの出血ほど便の色は黒くなりタール便と言われたりもします。
この記事では便宜上、血便と下血をまとめて血便と表現している部分もありますのでご了承ください。
腹痛で血便(下血)があるときの原因は4つ
クリニックで診療をしていて、
腹痛で血便や下血のある方が来院した際に考える原因として大きく4つあります
- 腸炎
- 大腸がん
- 胃や十二指腸からの出血
- その他
ここでは腹痛を『急な腹痛』と『いつもある腹痛』に分け、
さらに、『血便』と『下血』の場合に分けて話を進めていきます。
今回説明する病気をまとめたのが以下の表です。
実際にはもっとたくさんありますが、
あくまで日頃クリニックの診療で私が考えている、頻度の高い病気をあげてあります。
急な腹痛 | |
血便 | 下血 |
虚血性腸炎 | 急性胃粘膜病変 |
感染性腸炎 | |
薬剤性腸炎 | |
いつもある腹痛 | |
血便 | 下血 |
大腸がん | 胃・十二指腸潰瘍 |
潰瘍性大腸炎 | 胃がん |
クローン病 | |
その他 |
それでは順番に見ていきましょう。
急な腹痛で血便がある場合の原因と対処法
「昨日の夜急に腹痛があり、そのあと赤い血液が出ました」と驚いて来院される方がいらっしゃいます。
急な腹痛で血便がある場合の原因として考えられるのは次の3つです。
- 虚血性腸炎
- 感染性腸炎
- 薬剤性腸炎
それぞれ詳しく解説していきます。
虚血性腸炎
虚血性腸炎は腸の血の流れが悪くなり、腸の炎症を起こす病気です。
典型的な経過は、
- 夜間深夜に急に左腹部から下腹部に強い痛みがあり
- その後下痢をして
- その後のに出血をする
というながれです。
虚血性腸炎の腹痛は夜間深夜に左腹部から下腹部にかけて起こるのが特徴です!
就寝中に腹痛で目が醒めるパターンも多いです。
50歳以上に多いとされていましたが、最近では若い人にも増えています。
女性に多い傾向があります。
基礎疾患(高血圧、糖尿病、心臓や血管の病気、便秘など)のある方で多いですが、
原因がはっきりしないこともあります。
診断は、
- 問診
- お腹の診察
- 血液検査
- 内視鏡検査
などで行います。
多くの方はお腹に負担をかけない食事をすることで、1週間以内に自然によくなります。
治療の基本は食事を控えてお腹を安静にすることです。
腹痛や出血などの症状が強い場合は、入院して食事を休み、抗生物質の点滴が必要となります。
最重症例では手術がが必要なこともありますがまれです。
夜間深夜に腹痛→下痢→血便という症状があった場合は、虚血性腸炎の可能性があります!
通常は翌日に病院を受診すれば大丈夫です。
しかし、腹痛が非常に強い時は、他の重大な病気の可能性もありますので、夜間救急病院を受診してください。
それ以外の方は、翌日に大腸肛門科や消化器内科を受診してください。
感染性腸炎
みなさんも、海産物や生の肉、少し古いものを食べた後や不衛生な場所での飲食の後に、下痢をした経験はあるのではないでしょうか。
感染性腸炎は、細菌・ウイルス・寄生虫などの微生物の感染でおこります。
細菌とウイルスによるものが主流です。
主な症状は下痢ですが、中には腹痛や血便を伴うものもあります。
今回は比較的頻度の高い、『カンピロバクター』と『サルモネラ』
集団食中毒で時々ニュースになる 『腸管出血性大腸菌』について解説をしていきます。
カンピロバクター腸炎
カンピロバクターは細菌です。
家畜やペットなど多くの動物が持っている菌です。
生の鶏肉やその加工品からの感染が多いです。
感染性胃腸炎として5類に指定されています。
カンピロバクター腸炎は1年を通して起こります。
実際には、年間150万人程度の患者さんがいると推定されていて、
細菌性食中毒の中では、ウエルシュ菌に次いで2番目に多いです。
カンピロバクターに感染してから症状がでるまでは2〜7日と長めです。
主な症状は
- 水の様な下痢
- 腹痛(右下腹部)
- 発熱
で、血便も比較的多く見られます。
確定診断は便の培養検査で行います。
通常は脱水に対する点滴などの対症療法のみで3〜7日程度で改善します。
症状が重い場合には抗菌薬を使います。
合併症として発症1〜2週間後に、手足の痺れや麻痺が起こるギランバレー症候群を発症することがあります(0.1%)。
サルモネラ腸炎
サルモネラは、鶏などの家畜や野生動物の腸内にいる細菌です。
感染源として鶏の卵と卵調理品が多いですが牛肉や豚肉、や、ペットのイヌやカメなどからも感染します。
感染性胃腸炎として5類に指定されています。
細菌性食中毒の中では、ウエルシュ菌、カンピロバクターに次いで3番目に多いです。
サルモネラ腸炎は初夏〜秋にかけてに多く発生します。
サルモネラに感染してから症状がでるまでは5〜72時間(平均12時間)と短めです。
主な症状は
- 38℃以上の急激な発熱
- 水の様な下痢
- 腹痛
- 悪心・嘔吐
で、血便が見られることもあります。
確定診断は便の培養検査で行います。
通常は脱水に対する点滴などの対症療法のみで改善します。
しかし、菌が全身にまわり重症化する菌血症が2〜4%に起こるとされています。
小児や高齢者などでは、脱水や菌血症で重症化しやすい傾向があり、抗菌薬の投与が必要なこともあります。
腸管出血性大腸菌腸炎
大腸菌は私たちの腸内にもいますが、ほとんどは害がありません。
しかし、ヒトに下痢などの症状を起こす大腸菌もあり、病原性大腸菌と呼ばれます。
病原性大腸菌は約170種類あります。
その中でベロ毒素を出し、出血を伴う腸炎や、溶血性尿毒症症症候群(HUS)を起こすものを、
『腸管出血性大腸菌』といいます。
代表的な菌はO-157で、他にもO-26やO-111などがあります。
腸管出血性大腸菌は家畜(特にウシ)の腸にいます。
加熱されていない牛肉などから感染します。
感染症法で3類に指定されていて、
全国の2021年の腸管出血性大腸菌感染症の届出数は3,222件です。
腸管出血性大腸菌による腸炎は、初夏から初秋に多いとされています。
菌の個数が10-100個と少量でも発症します。
腸管出血性大腸菌い感染してから症状が出るまでは、3〜5日とやや長めです。
症状としては、
- 激しい腹痛がある水の様な下痢で始まり
- 1〜2日で血便となります
- 発熱は軽度
確定診断は便培養で行います。
脱水に対する点滴などの対症療法が基本で、軽症例は約1週間で改善します。
発病者の約10%は、下痢などの最初の症状が出てから5〜10日後に、
- 溶血性尿毒症症候群(HUS)
- 脳症
など命に関わる合併症をきたすことがあります。
特に、乳幼児・小児・高齢者では重症化しやすく注意が必要です!
溶血性尿毒症症候群を合併した場合には、
集中治療室がある高次医療機関への搬送が検討されます。
薬剤性腸炎
抗生剤を内服後に下痢をして出血を起こす腸炎があり、薬剤性腸炎といいます。
代表的な病気は以下の2つです。
- 急性出血性大腸炎
- 偽膜性大腸炎
それでは、順番にみていきます。
急性出血性大腸炎
「ペニシリン系」や「セフェム系」の抗生剤を服用後2〜3日で、
- 突然の血液が混ざった下痢
- 腹痛
で発症します。
基礎疾患のない、若い世代に起こりやすいのも特徴です。
原因は不明ですが、抗生剤のアレルギーが関係しているといわれています。
原因となる抗生剤を中止することで、通常は1週間程度で治癒します
偽膜性大腸炎
偽膜性大腸炎は、Clostridioides difficile (C. difficile) という細菌が原因でおこります。
院内感染がほとんどを占めるため、クリニックでの診療ではめったに見かけません。
偽膜性大腸炎になりやすい方は、
抗生剤の内服に加え、高齢者やお腹の手術歴、慢性腎臓病、悪性腫瘍の合併などの基礎疾患がある方に起こりやすいとされています。
セフェム系などの抗生剤内服後1〜2週間後に、
- 下痢(ときに血性)
- 発熱
- 腹痛
- 腹部膨満感
で発症します。
最も重症な合併症としては、中毒性巨大結腸症という致死的状況になることもあります。
診断は便検査でC. difficileの毒素を検出したり、抗原検査やPCR検査が行われます。
また、大腸内視鏡検査で、『偽膜』が確認されれば確定診断となります。
治療の基本は原因となる抗生剤の中止で、脱水症状があれば水分補給の点滴を行います。
抗生剤の中止で、症状が改善しない場合には、メトロニダゾールやバンコマイシンといった抗生剤を投与します。
また、高齢者や基礎疾患があり重症化の可能性がある方の場合は、総合病院での治療が必要となります。
急な腹痛で下血がある場合の原因と対処法
これまでは急な腹痛で血便があるパターンをみてきました。
ここからは急な腹痛で下血がある場合をみていきます。
胃や十二指腸から出血をすると、タール便と呼ばれる黒い便となります。
- 急性胃粘膜病変
急性胃粘膜病変
急性胃炎・急性胃潰瘍ともよばれ、
急激な上腹部痛・嘔吐・吐血・下血などにより発症します。
先日、クリニックにも患者さんがいらっしゃいました。
- 30歳女性
- 昨日から抱え込むくらい胃が痛い
- 吐き気もある
- 昨日は夜も2時間おきに起きてしまった
とお腹を抱えながらつらそうに来院されました。
診察では、上腹部に軽い痛みがありました。
同日、胃の内視鏡検査をすると下の写真の様に、胃が炎症を起こしていました。
急性胃粘膜病変の腹痛は、急激なみぞおちの痛みが特徴です。
出血量が多いと血圧が下がり、ショックになることもあります。
急性胃粘膜病変の原因として多いのは、薬剤、アルコール、ストレスなどです。
薬剤の薬60%は痛み止め(ロキソニンなどの非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs))によるものです。
痛み止めを長期に内服している方は注意が必要です。
診断は、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)で行います。
治療は、まず原因の除去を行い、食事を控えて胃を安静にします。
胃酸を抑える薬や胃の粘膜を守る薬で治療をします。
出血がひどい場合は内視鏡で止血を行うこともあります。
強いストレスを感じていたり、痛み止めを内服していたりして、
『急激なみぞおちの痛み』があった場合は、急性胃粘膜病変の可能性があります!
早めに医療機関を受診してください。
いつもある腹痛で血便がある場合の原因と対処法
ここまでは急な腹痛をみてきました。
ここからは、いつもある腹痛で血便がある5つの病気をみていきます。
- 大腸がん
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
- その他
大腸がん
「最近血便がよく出るし、お腹も痛くて、便も出にくいので来ました」
先日もクリニックに血便と腹痛で悩む患者さんがいらっしゃいました。
- 70歳代男性
- 1週間前から血便があり腹痛もある
- 下痢はしていないが便は少量しか出ない
大腸内視鏡検査をしてみると、進行大腸がんが見つかりました。
大腸内視鏡の太さは直径約12mmですが、大腸がんより先に内視鏡は通りませんでした。
腹痛と血便がある大腸がんは、かなり進行しています。
がんが大きくなり腸の通り道を狭くしてしまうため、便が出にくくなり、狭い部分を通るときに痛みが出ます。
また、便が通るだけでがんから出血もします。
状況によっては腸の狭い部分で便がつまり、腸閉塞になることもあります。
腸閉塞になった場合は食べたり飲んだりするともどしてしまいます。
飲食ができなくなるので、自宅での生活はできず即入院です。
進行大腸がんがあっても腸閉塞でなければ、通院で検査をして、
手術など本当に必要な時だけの入院ですみます。
いつも腹痛と血便がある方は、進行大腸がんの可能性もゼロではありません。
早めに大腸肛門科や消化器内科を受診して相談をしてください。
大腸がんについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は腸に炎症がおこる病気です。
日本国内に約22万人の患者さんがいらっしゃいます。
発症年齢は20〜30歳の方が多いですが、小児や50歳以上でもおこります。
先日もクリニックに下痢と血便のために患者さんがいらっしゃいました。
- 50歳代女性
- 以前から下痢ぎみだった
- 1ヶ月前から下痢に血便、粘液を伴うようになってきた
- 2ヶ月前から腹痛もあった
内視鏡をしてみると、写真の様に腸がかなりあれている状況でした。
潰瘍性大腸炎は腸が痛むことにより、
- 下痢
- 血便
- 粘血便
- 腹痛
- 体重減少
などの症状をおこします。
厚生労働省から難病に指定されていて、完全に治す方法は見つかっていません。
しかし、多くの方は早期に治療を開始すれば入院は必要なく、
専用の薬の内服のみで社会生活を送ることができます。
「日頃から下痢をしていて腹痛があり、血便や粘液も出る」という場合は、
潰瘍性大腸炎の可能性もあります。
できるだけ早めに大腸肛門科や消化器内科を受診してください。
クローン病
クローン病は潰瘍性大腸炎と同様に厚生労働省から難病に指定されています。
日本国内に約7万人の患者さんがいらっしゃいます。
潰瘍性大腸炎よりも若い、10歳代〜20歳代におこります。
クローン病の炎症は口から始まり、肛門にいたるまでの全消化管(口、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門)におこります。
中でも小腸と大腸に多く炎症がおこり、
- 腹痛
- 下痢
- 血便
- 体重減少
などをおこします。
クローン病は薬による治療や栄養療法が主体となりますが、
炎症が強くおこり、小腸や大腸が狭くなったり、腸に穴が空いた場合は外科手術が必要となります。
10歳代〜20歳代の若い方で、日頃から腹痛や下痢がある場合は、クローン病の可能性もあります。
できるだけ早めに、大腸肛門科や消化器内科を受診してください。
その他
ここまであげた病気の他に、日常診療でそれほど多くはありませんが、以下の病気もあります。
- ベーチェット病
- クラミジア直腸炎
- アメーバ性大腸炎
- 腸管子宮内膜症
いつもある腹痛で下血がある場合の原因と対処法
ここからは、いつもある腹痛で下血がある場合をみていきます。
クリニックの診療では、以下の2つの病気に注意しています。
- 胃・十二指腸潰瘍
- 胃がん
胃・十二指腸潰瘍
「最近ストレスが多くてみぞおちが痛い…」
「腰痛で痛み止めを毎日飲んでいたら胃が痛くなってきました…」
胃や十二指腸には潰瘍ができやすいです。
十二指腸は胃からつながる臓器で、十二指腸の先は小腸になります。
すぐ隣にありつながっているため、胃・十二指腸潰瘍とまとめられることが多いです。
原因としては、
- 痛み止め(ロキソニンやボルタレンなどの非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs))
- ピロリ菌感染
が2大原因です。
先日もクリニックに胃の痛みで患者さんがいらっしゃいました。
- 50歳代男性
- 1年以上まえから気持ち悪さがあった
- 1ヶ月以上前からみぞおちの痛みが続いているため来院
- これまで、胃のバリウム検査や内視鏡検査は受けたことがない
- ピロリ菌の検査はしていない
内視鏡をしてみると下の写真の様な潰瘍がみつかりました。
胃・十二指腸潰瘍の症状としては、
- みぞおちの痛み
- 胸焼け
- 吐き気・嘔吐
- 吐血
- 下血
などがありますが、約10%の方は無症状と言われています。
潰瘍部分で穴が開くこともあり注意が必要です。
胃潰瘍と十二指腸潰瘍の比較は以下の表になります。
胃潰瘍 | 十二指腸潰瘍 | |
なりやすい年齢 | 40〜60歳 | 20〜40歳 |
症状 | 食事直後のみぞおちの痛み 胸焼け 吐き気・嘔吐 | 空腹時・夜間のみぞおちの痛み 胸焼け 吐き気・嘔吐 |
合併症 | 出血(吐血・下血) 穴が開く 胃の出口が狭くなる | 下血 穴が開く |
胃・十二指腸潰瘍の診断は、内視鏡検査で行います。
治療は、
- 原因の除去
- 潰瘍の治療
を同時に行います。
NSAIDsなどの痛み止めを飲んでいる場合は飲むのを止めます。
ピロリ菌がいる場合には、ピロリ菌の除菌をします。
ピロリ菌がいると胃がんのリスクが上がるので早めに除菌をしたほうがいいです。
潰瘍の治療としては、胃酸を抑える強い胃薬を内服します。
だいたいはこれでよくなりますが、
大量出血や穴が空いている場合には、内視鏡での止血や外科手術が必要になることもあります。
胃がん
日本で胃がんは減少傾向にあります。
衛生環境の改善やピロリ菌の除菌が積極的に行われる様になり、
下の図の様に急速に減少をしてきますが、まだまだ多いがんの1つです。
2021年のがん統計では死亡数の順位は、
男性では3位、女性では5位、男女合計では肺、大腸について3位です。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
男女合計 | 肺 | 大腸 | 胃 | 膵臓 | 肝臓 |
男性 | 肺 | 大腸 | 胃 | 膵臓 | 肝臓 |
女性 | 大腸 | 肺 | 膵臓 | 乳房 | 胃 |
早期の胃がんは症状はなく、検診などで発見されることがほとんどです。
腹痛や下血を伴うような胃がんはかなり進行しています。
胃がんは進行すると、
- 胃の不快感
- 上腹部の痛み
- 食後の膨満感
- 食欲不振
- 体重減少
- 嘔吐
- 血液の混ざった黒い便(タール便)
などをおこしてきます。
先日もクリニックに腹痛の患者さんがいらっしゃいました。
- 50歳代男性
- 3ヶ月前から食後にみぞおちの痛みあり
- 近医で内服薬の処方をうけていたが改善なく
- 胃カメラ目的で紹介受診
- ピロリ菌未検査
胃カメラを行ったところ、写真のような胃がんが見つかりました。
この方は総合病院外科を紹介し、手術を受けていらっしゃいます。
胃がんは放置すると命に関わりますので、
予防・早期発見・早期治療が重要となります。
胃がんの予防
胃がんの予防としては、
- 禁煙
- 塩分のとりすぎに注意
- ピロリ菌の除菌
- アルコール減量(男性)(文献2)
が有効であることがわかっています。
胃がんの早期発見
胃がんの早期発見としては定期的な胃がん検診があります。
各自治体の胃がん検診は、胃バリウム検査か胃内視鏡検査で行われます。
クリニックがある埼玉県草加市では以下のとおりです。
受診間隔 | 対象年齢 | 費用 | |
胃バリウム検診 | 毎年 | 30歳以上 | 900円 |
胃内視鏡検診 | 2年に1回 | 50歳以上 | 3500円 |
胃がんの早期治療
胃がんは早期であれば内視鏡での治療が可能です。
進行した場合は外科手術や化学療法が必要となります。
気になる症状がある場合は、検診を待たずに早めに医療機関で相談をしていください。
腹痛で血便があるときの診察のながれ
ここからは、あなたが腹痛で血便がある時にクリニックを受診した場合の、診察のながれについて説明をしていきます。
おおまかなながれは以下です。
- 問診
- お腹の診察
- おしりの診察
- 診断名の決定
- 検査や治療のご案内
それぞれもう少し詳しく説明していきます。
問診
あなたの現在の症状や、これまでの経過を詳しくおうかがいします。
お腹の診察
診察台に仰向けに寝ていただき、お腹の痛い場所や、痛みの程度などを診察します。
おしりの診察
肛門の近くに出血の原因になる病気がないかを診察します。
指での診察、肛門鏡(こうもんきょう)という専門の器械を使って診察します。
肛門診察については後ほど詳しくお話しします。
肛門診察の時間は1〜2分程度と短時間です。
感染性腸炎が疑われる場合は、おしりの診察の際に便の培養検査をすることもあります。
診断名の決定
現状で考えられる診断名を図を用いて分かりやすくお伝えします。
検査や治療のご案内
診断名をお伝えした後に、検査や治療のご案内をします。
検査・治療方針はあなたと相談をしながら決めていきます。
炎症の程度や貧血の程度を知るために、血液検査をすることがあります。
また、大腸や胃の状態の観察は内視鏡検査になりますが、
腹痛や下血が落ち着いてきている場合などは、必ずしも緊急の内視鏡検査が必要というわけではありません。
大腸からの出血の可能性がある場合の検査
症状により緊急度は異なりますが、大腸の精密検査をお勧めします。
クリニックでできる精密検査は大腸内視鏡検査になります。
検査前には2Lの下剤を飲む必要がありますが、
いろいろな事情で大腸内視鏡検査ができない場合は、CT検査などの他の検査をご案内する場合もあります。
胃・十二指腸からの出血の可能性がある場合の検査
胃や十二指腸からの出血の可能性がある場合は、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)をおすすめします。
腹痛で血便の際の『はずかしくないおしりの診察』
おしりの診察」というとだれもが恥ずかしさと不安でいっぱいだと思います。
「どういうふうに診察をするのかが分からないので不安です…」
実際に問診の際にはこのような声をよくお聞きします。
草加西口大腸肛門クリニックでは、患者さんが恥ずかしくないようにプライバシーに最大限配慮したおしりの診察を心がけています。
当院でのおしりの診察の手順は以下のとおりです。
① カーテンの中で、ズボンや下着をおしりが見えるくらいまで下ろして、診察台に横になっていただきます。
② おしりに清潔なシートをかけます。これで診察の準備が完了です。
③ 視診察(見て観察)をします。
④ 指診察(指で診察)をします。
⑤ 肛門鏡(こうもんきょう)で診察をします。
肛門鏡は下の写真のような小さな器械で、痔の様子などを詳しく観察できます。
⑥ 診察が終わりましたらカーテンの中でゆっくりお着替えをしていただきます。
おしりの診察のながれは以上です。
なんとなくイメージしていただけましたでしょうか?
診察時間は1〜2分程度です。
女性の診察の場合には、女性スタッフがすぐそばにおりますので、安心して診察を受けていただけます。
まとめ
ここまで記事を読んでいただきありがとうございました。
腹痛に血便を伴う場合は要注意で、
『大腸がんや胃がんなど、あなたの命に関わる病気の可能性もある』
ということはお分かりいただけましたでしょうか。
腹痛で血便がある際には放置せずに、
できるだけ早めに大腸肛門科や消化器内科を受診して相談してみてください。
この記事が、
- 皆様の健康維持
- 皆様の病気の予防・早期発見・早期治療
- 皆様が大腸肛門科を受診する際の不安の軽減
これらのためにお役に立てれば幸いです。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
草加西口大腸肛門クリニック 院長 金澤 周(かなざわ あまね)
草加西口大腸肛門クリニックのHPはこちら▶︎▶︎▶︎草加西口大腸肛門クリニック
引用文献
- 厚生労働省食中毒統計資料.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html
- Takashi Tamura, Kenji Wakai, Yingsong Lin, et al. Alcohol intake and stomach cancer risl in Japan: A pooled analysis of six cohort studies. Cancer Sci 113: 261-276, 2022