「病院で憩室炎かもと言われたけど大丈夫かな?」
「大腸内視鏡検査をしたら憩室があると言われて、様子を見ることになったけど放っておいていいのかな?」
「憩室を何回か繰り返しているけど予防できないのかな?」
「憩室はがんにならないの?」
憩室についていろいろな疑問があると思います。
この記事では、大腸憩室炎についておおよそのことを知っていただき、
大腸憩室炎についての皆様の疑問や不安が少しでも解消されるよう、
大腸肛門科専門医の視点から分かりやすく解説をしていきます。
この記事の内容
- 大腸憩室とは?
- 大腸憩室炎とは?
- 大腸憩室炎の原因
- 大腸憩室炎の症状
- 大腸憩室炎の検査・診断
- 大腸憩室炎の治療
- 大腸憩室炎になったときの食事
- 大腸憩室炎の予防
- 草加西口大腸肛門クリニックでの【大腸憩室炎】の診療
この記事の信頼性
この記事を書いた私の名前は「金澤 周(かなざわ あまね)」です。

この記事を読めば、『大腸憩室炎の原因・症状・治療・食事から予防まで』の理解が深まり、適切な対処のきっかけになります。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
それでは始めていきましょう。
この記事は、草加西口大腸肛門クリニックの院長が専門医の立場から執筆しています
大腸憩室とは?

大腸憩室(けいしつ)とは、大腸の壁の一部が写真のように外側に袋のように飛び出してしまった状態です。
「壁の飛び出し(へこみ)」で穴が空いているわけではありません。
写真の真ん中あたりでは、便がつまっています。
加齢や便秘、食生活の影響で、大腸内の圧力が上がることにより、壁の弱い部分が押し出されて憩室ができやすくなります。
皮膚でいうとシミやシワのようなものです。
特に悪いものではないので、放置しても癌にはなりません。
大腸内視鏡検査をした時に偶然発見されることも多いです。
大腸内視鏡検査をして、約20%の人に大腸憩室が見つかります。
体の変化の1つのため、大腸憩室自体は病気ではないので、治療の対象にはなりません。
ただ、この憩室が原因で、
- 大腸憩室炎
- 大腸憩室出血
を起こしたときは治療が必要です。
大腸憩室炎とは?
大腸憩室炎は、大腸にある憩室がいろいろな原因により炎症を起こした状態です。
憩室炎は高齢者に多く、特に60歳以上で発症率が高く、高齢化に伴い増えています。
主な症状は腹痛です。
大腸憩室は全ての大腸にできるので、大腸憩室炎はどこでも起こる可能性があります。
ただし、
- 右側の憩室炎・・・40〜60歳に多い
- 左側の憩室炎・・・高齢者に多い

と、場所と年齢に特徴があります。
炎症が軽いと自然に良くなりますが、重症化すると入院して治療が必要です。
大腸憩室炎を簡単にまとめると、
- 「大腸憩室炎=憩室のある人に起こる可能性がある良性の病気で、腹痛が起こると生活に支障をきたす」
となります。
大腸憩室炎の原因
大腸憩室炎の原因としては、以下のようないくつかの要因が関係していて、
これらが複雑にからみあって発症すると考えられています。
- 腸の中の圧力が高くなること
- 加齢
- 遺伝
- 薬剤(NSAIDs・アスピリンなど)
- 腸内細菌のバランスの乱れ
- 生活習慣(肥満・喫煙・飲酒)
これからそれぞれについて見ていきましょう。
腸の中の圧力が高くなること

大腸憩室炎は、腸の中の圧力が高まることで、憩室と呼ばれるくぼみができ、
そこに便がつまり、炎症を起こすことで発症します。
特に便秘がちの方や、食物繊維が少ない食生活、運動不足の方では腸の動きが悪くなり、腸の中の圧が高くなりやすいため注意が必要です。
日頃から運動不足になり、ついつい脂っこいものを食べてしまうという、現代の日本人の生活スタイルに関係しています。
加齢

年齢を重ねると、大腸の壁が弱くなり、憩室ができやすくなるだけでなく、
そこに炎症が起こる「憩室炎」も起こりやすくなります。
実際に、40代では10〜20%ほどの人に見つかる憩室が、80代になると70%以上に見つかるとされています。
高齢化が進む日本では、今後さらに増えていく病気の1つです。
遺伝

最近の研究では、家族に憩室症の人がいる場合、自分もなりやすいことがわかってきました。
特に若い年齢で発症するケースでは、遺伝的な体質が関係している可能性が高いとされています。
また、腸の壁の強さや動きに関わる遺伝子の違いが、憩室ができやすい体質に影響しているという研究報告もあります。
ご家族に憩室炎を起こした方がいるかどうか、確認しておくのもいいですね。
薬の影響(NSAIDs・アスピリンなど)

痛み止めや解熱剤として使われるNSAIDs(ロキソニンなど)やアスピリンは、
長く使うことで腸に負担をかけ、憩室炎のリスクを高めることがわかっています。
海外の大規模な調査でも、これらの薬をよく使う人は、使っていない人と比べて1.5〜1.7倍ほど憩室炎になりやすいという結果が出ています。
皆さんも日々の生活で痛み止めはよく使うと思いますが、長期使用のときは注意が必要です。
腸内細菌叢の乱れ

腸内の細菌バランス(腸内フローラ)が乱れると、憩室の中で炎症が起こりやすくなることがわかってきました。
最近では、軽い憩室炎であれば抗菌薬を使わなくても自然に治ることもあるとされ、
必ずしも「感染」だけが原因ではなく、「腸内環境の乱れ」や「過剰な炎症」が関係していると考えられています。
腸内環境を整えることは多くの病気の予防、そして憩室炎の予防にもつながります。
生活習慣(肥満・喫煙・飲酒)
大腸憩室炎の発症や重症化には、日頃の生活習慣も関係しています。
なかでも喫煙・肥満・運動不足は、リスクを高める要因として知られています。
喫煙

たばこは腸の血流を悪くし、炎症を起こしやすくしたり、免疫機能を低下させたりと多くの悪影響を及ぼします。
また、多くの研究で、喫煙者は非喫煙者に比べて憩室炎のリスクが1.5〜2倍に上昇することが報告されています。
そして、穿孔や膿瘍など重症化のリスクも高くなるとされ、再発率も高くなります。
肥満

お腹の内側の圧力(腹腔内圧)が高まりやすく、腸に負担がかかることで、憩室の炎症や穿孔のリスクが上がるとされています。
特にBMI(体格指数)が高い方では、憩室炎の合併症が2倍になったという報告もあります。
内臓脂肪型肥満(メタボ体型)の方は注意が必要です。
運動不足
腸の動きが鈍くなり、便秘を引き起こしやすくなります。
便秘が続くと腸の内圧が高くなり、憩室にかかる負担が増すことで炎症の原因になります。
大腸憩室炎の症状
大腸憩室炎は、大腸の壁の一部が外側にふくらんでできた「憩室」に炎症が起こる病気です。
下の図は大腸憩室炎が悪化するとどうなるかを示しています。

初期は単なる炎症だけで済むこともありますが、
放置すると、腸の周囲にうみがたまる「膿瘍(のうよう)」をつくったり、
最悪の場合は腸に穴があいて「穿孔(せんこう)」し、腹膜炎を引き起こすこともあります。
このような重症化を防ぐためにも、早期のサインである「症状」に気づくことがとても大切です。
ここからは、大腸憩室炎でよくみられる症状を、出現しやすい順に説明をしていきます。
腹痛(最もよく見られる)
「憩室炎になるといつもお腹の左下が痛みます」
「時々なんとなくお腹がシクシクします」
憩室炎を繰り返している方の症状で最も多いのが「腹痛」です。

腹痛は、大腸憩室炎の最も代表的な症状です。
炎症が起きた場所によって、腹痛の部位が異なります。

大腸憩室は大腸のどこにでもできるので、憩室炎は全大腸に起こる可能性があります。
右側の盲腸や上行結腸で炎症が起これば右下腹部痛となり、急性虫垂炎と間違われることもあります。
左側の下行結腸やS状結腸で炎症が起こると左下腹部痛となります。
腹痛は最初はにぶい痛みから始まり、
しだいに持続的で強い痛みに変わるようになり、お腹を押すと痛み(圧痛)を感じます。
さらにお腹を押した手を離すとより強く痛む(反跳痛)といった症状があれば、
穿孔(腸に穴が開くこと)により腹膜炎になっている可能性もあり、重症化のサインです。
安静にしていても痛みが改善せず、睡眠中に目が覚めるほどの痛みがある場合は、すぐに医療機関を受診してください。
発熱(比較的よく見られる)

軽い憩室炎では熱が出ないこともありますが、
炎症が強くなると38℃以上の高熱が出ることもあり、寒気やだるさを伴うことがあります。
特に膿瘍や穿孔などがある場合は、熱が長く続き、全身状態が悪化することもあります。
発熱は病気の重さを判断する手がかりにもなります。
消化器症状(比較的よく見られる)
腸の炎症によって、以下のような症状が出ることがあります。
- 便秘または下痢
- お腹の張り(膨満感)
- ガスがたまる感じ
- 吐き気・嘔吐・食欲不振
炎症が強くなると、腸の動きが悪くなり「腸閉塞」に近い症状を起こすこともあります。
また、「便が細くなる」「便が残っている感じ(残便感)」など、排便の質に変化がみられる場合もあります。
全身のだるさ・倦怠感(ときどき見られる)

大腸憩室炎はお腹の病気ですが、体全体に「なんとなく元気が出ない」「体がだるい」「疲れやすい」といった全身症状が出ることもあります。
特に高齢者では典型的な腹痛や発熱が出にくく、「調子が悪い」「食欲がない」などのあいまいな訴えから見つかるケースも多いです。
家族や周囲の方が変化に気づいてあげることが重要です。
排尿の違和感(まれに見られる)
炎症の起きた場所が膀胱の近く(S状結腸や下行結腸)の場合、
- 尿が近い(頻尿)
- 排尿時の違和感
- 残尿感
など、膀胱炎に似た症状が出ることがあります。
女性や高齢の方では間違えられやすいため、お腹の症状や発熱が同時にある場合は注意が必要です。
お腹のしこり(比較的まれ)

炎症が広がらず、腸の一部分に限られて起こる場合、
その周囲にうみがたまり(腹腔内膿瘍(ふくくうないのうよう)といいます)、
「しこり」のようにお腹で触れることがあります。
これを「炎症性腫瘤(しゅりゅう)」といい、CTなどの画像検査で見つかることが多いです。
この状態では、膿瘍ができていたり、腸どうしがくっついていることもあり、抗菌薬だけでは治らないケースもあります。
必要に応じて、うみを外に出す処置や手術が検討されます。
下血・血便(ごくまれ)
大腸憩室炎では通常、出血は伴いませんが、憩室に傷がついたり、憩室出血を合併している場合には、便に赤い血が混じる(血便)や、黒っぽい便(下血)がみられることがあります。
こうした出血があった場合には、憩室出血のほか、大腸がんや他の出血性疾患の可能性もあるため、速やかな検査が必要です。
クリニックで相談してよい症状

以下のような症状がある場合は、まずは大腸肛門科や、消化器内科のあるクリニックで相談しましょう。
問診や触診、必要に応じて血液検査を行い、重症度を判断してもらうことができます。
- お腹の痛みがあるが軽く、日常生活はできている
- 排便の変化(便秘・下痢・便が細いなど)が続いている
- お腹が張る、ガスがたまりやすい
- 食欲が落ちている、少しだるい
- 排尿時の違和感や頻尿がある(膀胱炎との区別が必要)
これらは比較的軽症の憩室炎や、他の病気ではないか見きわめることが必要な状態です。
日頃からの症状が気になる場合は、まずは受診をして相談をしてみてください。
救急病院(総合病院)での受診が望ましい症状

以下のような症状がある場合は、CTや血液検査がすぐに行える医療機関(総合病院や中核病院)を受診してください。
診断と同時に、必要な治療の判断や入院の対応が可能です。
- 強い腹痛が数時間以上続いている
- 発熱(38℃以上)があり、悪寒やふるえがある
- 吐き気や嘔吐が持続している
- 便もガスも出ない(腸閉塞の可能性)
- お腹を押したときや離したときに強く痛む(反跳痛)
- お腹にしこりを触れる
- 血便・下血(赤い・黒い便)がある
- 高齢者で「ぐったりしている」「ぼんやりしている」など、全身状態が悪い場合
これらは膿瘍や穿孔、腹膜炎などの重症憩室炎の可能性があり、早急な検査と治療が必要です。
「もう少しすれば治るだろう」と自己判断して、経過を見ずに早く受診してください!
大腸憩室炎の検査・診断
大腸憩室炎は、急性虫垂炎や虚血性腸炎、感染性腸炎などと症状が似ているため、正確な診断が必要です。
さらに、腸に穴があいていないか(穿孔)、うみがたまっていないか(膿瘍)といった、
重症の合併症の有無を早期に見極めることが、治療方針を決める上で非常に重要です。
問診・診察
まず、現在の症状や発熱、便通の変化、痛みの部位などを詳しく聞き取り(問診)、お腹を触って痛みの場所(圧痛)や押したとき・離したときの反応(反跳痛)を確認します。
聴診器で腸の動きも確認します。
特に、強い痛みや発熱、反跳痛がある場合には、腹膜炎や穿孔を見逃さないために、画像検査などの精密検査に進みます。
血液検査

体内で炎症が起きているかどうかを確認するため、血液検査を行います。
特に、
- 白血球数(WBC)
- CRP(C反応性たんぱく)
の数値に注目します。
これらの数値が高い場合、体内で炎症が進んでいると判断され、
大腸憩室炎を含めた炎症性疾患の可能性が高まります。
造影CT検査(もっとも重要な検査)

現在、造影CTは、大腸憩室炎の診断と重症度の評価において最も重要な検査とされています。
CT検査によって以下の点がわかります。
- 炎症の起きている腸の部位
- 憩室の有無と数
- 穿孔や膿瘍(うみ)の有無
- 腸の周囲への炎症の広がり
- 他の病気(がんや他の炎症性疾患)との見分け
特に、膿瘍・穿孔・腹膜炎といった重症の合併症を見逃さないために欠かせない検査です。
大腸内視鏡検査

強い炎症がある時期(急性期)には、大腸内視鏡検査は行わないのが一般的です。
無理をすると炎症を起こした憩室の部分で腸に穴が開くこともあるためで、安全性の面からも行いません。
一方で、炎症が落ち着いた後は、必要に応じて大腸内視鏡検査を受けることが勧められます。
これは、大腸がんなどが憩室炎と似た症状を起こすことがあり、それらを確実に見分けるためです。
特に以下のような方は、内視鏡検査がすすめられます。
- 初めて憩室炎を起こした方
- 高齢の方
- これまでに大腸内視鏡を受けたことがない方
- 最後の検査から年数がたっている方
こうした方では、大腸がんの可能性も考えて検査を行うことが、正確な診断と安心につながります。
大腸憩室炎の治療
大腸憩室炎の治療は、炎症の程度や合併症の有無によって大きく変わります。
軽い場合は外来で対応できることもありますが、膿瘍や穿孔(腸に穴があく)などがある場合は入院や手術が必要になることもあります。
軽症の場合(膿瘍や穿孔がない)
CT検査などで膿瘍や穿孔が認められず、発熱や全身の異常が軽い場合は、
食事を控えて腸を休ませることと、痛みなどの症状をやわらげる治療が基本です。
必要に応じて抗菌薬を使うこともありますが、
最近の研究では軽症例では抗菌薬を使わなくても経過がよいことが多いとも報告されています。
水分がしっかりとれて、全身状態が安定している方は、外来での治療・経過観察も可能です。
大腸憩室炎になったときの食事については、この後で詳しく説明します。
中等症~重症の場合(膿瘍や穿孔を伴う)
炎症が強く、腸の周囲にうみ(膿瘍)がたまっている場合や、腸に穴があいている場合は、入院による治療が必要です。
膿瘍の大きさによって対応が異なります:
- 膿瘍が3cm未満:抗菌薬での治療が可能です。
- 膿瘍が3~5cm程度:必要に応じて、「ドレナージ(うみを針などで体外に抜く処置)」を行います。
- 膿瘍が5cm以上:CTや超音波で位置を確認しながら、安全にうみを抜く処置が勧められます。
- ドレナージで改善しない場合や、穿孔がある場合:症状の原因となっている腸の一部を切除する手術が検討されます。
重症(汎発性腹膜炎)になった場合

腸に穴があいて、便が腹腔内に漏れ出すと、お腹全体に炎症が広がる「汎発性腹膜炎」となります。
これは命にかかわる状態で、すぐに手術が必要になります。
手術では、炎症がひどい部分の腸を切除したり、一時的に人工肛門を作るることもあります。
大腸憩室炎になったときの食事
大腸憩室炎になったときは、腸を安静にして、炎症を悪化させないように、食事内容に注意が必要です。
ここでは、外来通院で治療が可能な軽症の場合の食事について説明をしていきます。

腹痛や発熱がある最初の時期には、消化の良いものを少量ずつ摂ることが基本です。
脱水予防のために、水分の摂取はしっかりとして、
発症してから2〜3日は、無理に栄養を取ろうとはせず、「とにかく腸を安静にする」ことを大切にしてください。
まずは、
- ゼリー飲料
- 具のないスープ類
などから始めて、お腹の痛みが少しでも良くなってきたら、
- うどん
- おかゆ
を始めてみてください。
あとはお腹の様子をみながら、少しずつ食事を重たくしていくのがいいのですが、
脂っこいものや食物繊維が多い食品は避けて、
- ごはん
- 魚
- 豆腐
などを使った「日本食のイメージ」の食事にしてみてください。
大腸憩室炎の予防
大腸憩室炎を完全に防ぐ方法はまだ分かってはいませんが、
いくつかの生活習慣が発症や再発のリスクを下げる可能性があると報告されています。
日常生活の中でできることを意識することが、将来的な再発予防にもつながります。
便秘を避ける

便秘は、腸の内圧を高め、大腸憩室に負担をかけるため、憩室炎の発症因子の一つと考えられています。
予防の基本は、腸に優しい生活習慣です。
- 食物繊維を多く含むバランスのよい食事(野菜・果物・豆類など)
- 十分な水分摂取
- 毎日の軽い運動(ウォーキングなど)
これらは便通を整えるうえでも非常に効果的です。
過去に憩室炎を起こしたことがあり、日頃から運動不足の方は、まずは軽い運動からスタートしてみてください。
NSAIDsやアスピリンの常用に注意

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)やアスピリンの長期使用は、
憩室炎や憩室出血のリスクを高める可能性があるとされています。
ただ、どうしても痛み止めや血液をサラサラにする薬をやめられない方はいらっしゃると思います。
憩室炎になった方で、日頃から鎮痛薬や血液をサラサラにする薬を飲んでいる方は、
主治医と相談のうえで使用の継続や代わりの薬の検討をしてみてください。
喫煙・肥満を避ける

肥満や喫煙は、大腸憩室炎を起こしやすくし、また重症化のリスクを高める可能性があるとされています。
喫煙者は非喫煙者に比べて憩室炎のリスクが1.5〜2倍に上昇することが報告されています。
そして、BMI(体格指数)≧30では、憩室炎の合併症が2倍になったという報告もあります。
禁煙や適正体重の維持は、憩室炎だけでなく他の病気の予防にもつながります。
あなたの体を守るために、この記事を読んだ今日から始めてみてください。
一度憩室炎になった人は再発予防も意識を
憩室炎は一度よくなっても再発しやすい病気です。
特に膿瘍や穿孔を伴った重症例では再発率が高いとされ、外科手術が必要になることもあります。
再発を完全に防ぐ薬物療法は現在のところ確立されておらず、生活習慣の改善が予防の中心となります。
ご自身の生活習慣を見直して、腸にやさしい毎日を心がけましょう。
草加西口大腸肛門クリニックでの【大腸憩室炎】の診療

私が院長をしている草加西口大腸肛門クリニックには、「急にお腹が痛くなった」「熱が出た」「便通の異常がある」といった症状で来院される方が多くいらっしゃいます。
大腸憩室炎は、これらの症状の原因となる比較的よく見られる病気の一つです。
診察ではまず、詳しい問診とお腹の診察を行い、憩室炎が疑われる場合には白血球数(WBC)の測定を含む血液検査を行い、炎症の有無を確認します。
当院にはCT設備がございませんので、症状が強い方の場合はCT検査・入院治療が可能な近隣の医療機関へご紹介し、膿瘍や穿孔などの重症所見の有無を評価します。
一方、全身状態が安定していて、重症所見が疑われない場合には、外来での経過観察・治療が可能です。
この場合、腸を安静に保つための食事調整と必要に応じた抗菌薬の内服を中心に、丁寧に経過をみていきます。
また、炎症が落ち着いた後には、大腸がんなど憩室炎と似た症状を引き起こす重大な病気が隠れていないかを確認するため、大腸内視鏡検査をおすすめしています。
「突然の腹痛が気になる」
「以前にも似たような症状があった」
「市販薬ではなかなか良くならない」
など、不安なことがある場合は早めご相談ください。
患者さん一人ひとりの状態に応じた適切な診断と、安心して治療を受けていただけるよう、丁寧な診療を心がけています。
まとめ
ここまで記事を読んでいただきありがとうございました。
『大腸憩室炎の原因・症状・治療・食事と予防について』お分かりいただけましたでしょうか。
大腸憩室は多くの方にありますので、大腸憩室炎は誰にでもおこりうる病気です。
発症や再発を完全に防ぐことはできませんが、
便秘の改善・禁煙・肥満の改善など日々の生活習慣の改善で、ある程度の予防が可能です。
これまでお話しした生活習慣の中で、一つでも改善できそうなものがあれば、
まずは、ほんの少しからでもいいので始めてみてください。
今日からの少しの頑張りが、将来の安心につながります。
この記事が、
- 皆様の健康維持
- 皆様の病気の予防・早期発見・早期治療
- 皆様が大腸肛門科を受診する際の不安の軽減
これらのためにお役に立てれば幸いです。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
草加西口大腸肛門クリニック 院長 金澤 周(かなざわ あまね)
当院の診療について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください
参考文献
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