「急におしりが腫れて痛い!」
「鏡で見たらなにかが出ている」
「痛くて座れない」
おしりが急にはれて痛みが出ると、誰でもとても不安になると思います。
おしりの痛みと腫れの原因として多いのは、痔や膿のたまりなどです。
原因によっては自然に良くなるものもありますが、外科的な処置が必要になることもあります。
このため、早めに原因を見極め、正しく対処していく必要があります。
この記事では、肛門科医の視点から「おしりが腫れて痛い原因となる病気」について解説をしていきます。
この記事の内容
- おしりが腫れて痛い原因となる病気
- おしりが腫れて痛いときはどうしたらいいの?
- おしりが腫れて痛いときは何科を受診したらいいの?
- 草加西口大腸肛門クリニックでの【おしりが腫れて痛い】ときの診療
この記事の信頼性
この記事を書いた私の名前は「金澤 周(かなざわ あまね)」です。

この記事を読めば、『おしりが腫れて痛い原因となる病気』について理解が深まり、適切な対処のきっかけになります。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
それでは始めていきましょう。
この記事は、草加西口大腸肛門クリニックの院長が専門医の立場から執筆しています
おしりが腫れて痛い原因となる病気
おしりが腫れて痛い原因となる病気は、
自然によくなるものから、放置すると重症化するものまであります。
このため、しっかりと診断をして、正しい対処をしていくことが重要です。
ここではおしりが腫れて痛い原因となる主な病気についてみていきます。
血栓性外痔核
「昨日の夜から突然おしりが腫れて痛いです」
「指先くらい腫れています」
「押してみても戻りません」
このような症状で病院を受診される方が多いです。
血栓性外痔核は、肛門のふちや周囲に、血栓という血の塊ができ、急激は腫れと強い痛みが起こります。

おしりに、何らかの過度の負担がかかったことでおこり、
- 便秘で排便のときに思いっきりいきんだ
- デスクワークで長時間座っていた
- 重いものを持ち上げた
- 1日中バイクに乗っていた
- 運動会で綱引きした
- 下着がこすれた
これらが原因となります。
しかし中にはこれといった原因がなく腫れるパターンもあります。
血栓は触れると硬く感じ、触った時や、座った時、排便時の痛みがあります。
血栓性外痔核は指で押すのはNG!

「知り合いに聞いたら戻すといいよと言われ、指でおしていたら余計に腫れました!」
と言って来院される方もいらっしゃいます。
血栓性外痔核は、そもそも肛門の外側にある痔の成分が腫れているので、おしりの中に戻そうとしても戻りません。
それどころがグイグイ押すと余計負担がかかり、腫れと痛みが悪化します!
血栓性外痔核の時は、押すのはNGです。
血栓をおおっている皮膚が破けると出血をすることもあります。
一時的な腫れと痛みのため、放置しても時間が経つと改善しますが、
軟膏や内服薬を使うと痛みは早く改善します。
また、痛みが強い間は、ロキソニンなどの痛み止めも内服した方が楽に過ごせます。
おしりの腫れや痛みは温めるとやわらぐので、お風呂で温まることも効果的です。
痛みがあるとつらいので、早めに病院を受診して相談をしてください。
血栓性外痔核?それとも肛門周囲膿瘍?
血栓性外痔核は外科的な処置をしなくても治りますが、
あとで出てくる肛門周囲膿瘍の腫れと痛みは自然に改善せず、膿を出す処置が必要です。
同じように腫れても対処法が全く違います!
見た目がわかりにくいこともあるので、自己判断せずに早めに病院で診てもらいましょう。
嵌頓(かんとん)痔核
「いつも排便の後におしりの中から痔が出て指で戻していますが、押しても戻らず腫れて痛いです」
こんな時は、嵌頓(痔核)の可能性があります。
嵌頓痔核という状態は、
脱出した内痔核がうっ血して腫れてしまい、指で押しても戻らない状態をいい、
痛みが非常に強く、出血も伴い生活に支障をきたします。
嵌頓痔核も無理してグイグイ押すと腫れと痛みが悪化するので、
がんばって戻そうとしないで、早めに病院を受診してください。
いぼ痔(痔核)について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

肛門周囲膿瘍
「数日前からおしりが腫れてきてすごく痛いです」
「おしりが腫れて痛くて38℃くらいの熱もあります」
「おしりが腫れて痛くて座れません」
こんなときは、肛門周囲膿瘍の可能性があります。

肛門周囲膿瘍は、細菌感染によって肛門周囲に炎症が起こり、
膿瘍(膿(うみ)のたまり)をつくり、腫れと強い痛みを伴います。
膿のたまりが大きい場合は、38℃以上の高熱になることもあります。
膿瘍が破れると膿が出て一時的に痛みがやわらぎますが、
自然に膿が出ない場合は、膿や炎症が周囲に広がるのを防ぐために、
病院で皮膚を切開して膿を出す処置が必要となります。
肛門周囲膿瘍は自力では治せないので、早めに病院を受診してください。
肛門周囲の膿瘍の原因に痔瘻(膿の通り道ができる病気)がある場合には、肛門周囲膿瘍を繰り返す場合があります。
痔瘻は軟膏や内服薬では治らないため、根治のためには手術が必要となります。
痔瘻・肛門周囲膿瘍について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

肛門周囲皮膚炎
「おしりが腫れて痛くて、かゆみもあります」
こんなときは肛門周囲の皮膚炎(皮膚あれ)の可能性があります。

肛門周囲の皮膚が炎症を起こすことで、腫れやかゆみ、痛みが出ます。
原因は、
- 排便の後のおしりの拭きすぎ
- 下着の摩擦
- 湿気
- アレルギー反応
- カンジダ感染
など様々です。
症状が軽い場合は、清潔管理や保湿、刺激の少ない衣類の着用などで改善しますが、
炎症がひどい場合は、ステロイド軟膏や抗真菌薬などの治療が必要です。
また、カンジダの場合は、ステロイドを使うことで症状が悪化しますので注意が必要です。
日常生活の改善や、市販の軟膏などでも症状が長引く場合は、
肛門科や皮膚科で診察を受けることをお勧めします。
肛門ヘルペス
「おしりの周りに小さな水ぶくれができて、おしりが腫れてピリピリ痛みます」
このようなときは肛門ヘルペスの可能性があります。
肛門ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)による感染症で、
小さな水疱やただれ、痛みを伴う腫れが特徴です。
性感染症の1つで、
初感染のときは、強い痛みや発熱、倦怠感を伴うことがあります。
症状は自然に良くなることもありますが、抗ウイルス薬を使用すると早く良くなります。
再発しやすいため、免疫力の低下を防ぐことが予防につながります。
また、接触感染をするので、他の人に広げないことも重要です。
「もしかしたらヘルペスかも?」と思ったら早めに病院を受診してください。
クローン病
クローン病は口から肛門までの全消化管に炎症をひき起こす原因不明の疾患で、国から難病に指定されています。
10代〜20代の若年者に多く、慢性的な下痢や腹痛を伴います。

クローン病の場合、肛門周囲膿瘍や痔瘻を合併することがあり、
おしりの腫れや痛みが出ることがあります。
- 10代〜20歳代
- おしりの腫れや痛み
- 腹痛や下痢があり、お腹の調子も悪い
こんな条件に当てはまる場合はクローン病の可能性もあります。
早めに、大腸肛門科を受診して相談をしてみてください。
おしりが腫れて痛いときはどうしたらいいの?
おしりが腫れて痛いととても不安になりますよね。
「少し様子をみたら治るかも」と思いたくなりますが、
原因によっては早めの対処が必要なこともあります。
実際の診療では、血栓性外痔核が最も多いため、市販の軟膏などでも様子を見れることもあります。
しかし、血栓性外痔核と思って様子をみていたら、実は肛門周囲膿瘍だったというケースもあります。
この2つをご自身で判断するのはなかなか難しいため、
おしりが腫れて痛い時は早めに肛門科の受診をお勧めします。
すぐに病院を受診できない場合の対処方法

「そうはいっても仕事もあるしすぐに受診できないよ」という場合は、
- 市販の痔の軟膏を塗る
- ロキソニンやカロナールなどの痛み止めを内服する
- お風呂でおしりを温める
などでとりあえず対処をしてください。
血栓性外痔核であれば、市販の軟膏で症状が改善する可能性があります。
肛門周囲膿瘍の場合は、効果はありませんが、塗っても別に悪いことはありません。
お風呂でお湯につかりおしりを温めると、おしりの筋肉がゆるんで、痛みが改善します。
そして、翌日以降できるだけ早く肛門科を受診してください。
おしりが腫れて痛いときは何科を受診したらいいの?
おしりが腫れて痛い時に受診するのは、
- 肛門科
- 大腸肛門科
- 大腸・肛門外科
などの診療科です。
診療科に「肛門」とついていればOKです。

でも、近くにこれらの診療科がない場合は、
- 外科
- 消化器外科
など外科系の病院であれば対処可能です。
まずは、外科系の病院で診てもらい、必要に応じて肛門科を受診するという流れでいいと思います。
草加西口大腸肛門クリニックでの【おしりが腫れて痛い】ときの診療

私が院長をしている草加西口大腸肛門クリニックにも、
「おしりが腫れて痛い」ため、非常に多くの方がご相談にいらっしゃいます。
当院での「おしりが腫れて痛いとき」の診療の流れは以下のようになっています。
問診
まずは問診で、おしりの痛みが、
- いつから腫れて痛いのか
- どこが腫れているのか
- どのような痛みか
- どれくらい痛いか
- 排便の様子
- 出血の有無
- 発熱の有無
- 治療中の病気や内服薬
などを丁寧にうかがいます。
当院での『はずかしくないおしりの診察』
おしりの診察」というとだれもが恥ずかしさと不安でいっぱいだと思います。
「どういうふうに診察をするのかが分からないので不安です…」
実際に問診の際にはこのような声をよくお聞きします。
当院では、患者さんが恥ずかしくないように、
プライバシーに最大限配慮したおしりの診察を心がけています。
また、痛みが強い場合には、無理はせず可能な範囲で丁寧に診察を進めていきますのでご安心ください。
当院でのおしりの診察の手順は以下のとおりです。
① カーテンの中で、ズボンや下着をおしりが見えるくらいまで下ろして、診察台に横になっていただきます。
② おしりに清潔なシートをかけます。これで診察の準備が完了です。

③ 視診察(見て観察)をします。
④ 指診察(指で診察)をします。
⑤ 肛門鏡(こうもんきょう)で診察をします。
肛門鏡は下の写真のような小さな器械で、痔の様子などを詳しく観察できます。

⑥ 診察が終わりましたらカーテンの中でゆっくりお着替えをしていただきます。
おしりの診察のながれは以上です。
なんとなくイメージしていただけましたでしょうか?
診察時間は1〜2分程度です。
女性の診察の場合には、女性スタッフがすぐそばにおりますので、安心して診察を受けていただけます。
『肛門エコー』おしりの腫れや痛みの診断に有用です!

肛門エコー(超音波検査)は腫れや痛みの原因の特定に非常に有用です。
肛門周囲膿瘍の場合、通常指を使って診断をしていきますが、
肛門エコーを使うことによりビジュアル的に膿瘍を確認できます。
また、炎症や膿の広がりや膿のたまり具合なども客観的に評価できます。
さらに痔瘻の管までわかります。
肛門エコーは指よりも細い棒状の機械を使用するため、痛みはほとんどありません。
当院では、通常の肛門診察(見る、指で触る、肛門鏡)に加えて、肛門エコーを使うことにより、より精度の高い診察を行なっています。
診断名の説明と処置、追加の検査のご案内

ここまでの診察での所見から、現時点での診断名をお伝えします。
いぼ痔や切れ痔などの場合は治療のご案内をし、
肛門周囲膿瘍で切開排膿が必要な場合は処置を行います。
また、大腸内視鏡検査などの追加の検査が必要な場合には検査のご案内をします。
症状の内容によってはより高度な検査や治療が必要となる場合もありますので、
その際には連携する総合病院をご紹介いたします。
まとめ
ここまで記事を読んでいただきありがとうございました。
『おしりが腫れて痛いときの原因や対処法について』お分かりいただけましたでしょうか。
おしりの腫れや痛みの原因は、
よくある血栓性外痔核から、処置が必要な肛門周囲膿瘍まで様々です。
- 痛みが強い
- 痛みが継続する
- 出血などを伴う
- いつもと痛みの感じが変わってきた
- 腫れてから熱が出てきた
そんな時は、自己判断して放置せずに、早めに肛門科の病院を受診して相談をしてみてください。
この記事が、
- 皆様の健康維持
- 皆様の病気の予防・早期発見・早期治療
- 皆様が大腸肛門科を受診する際の不安の軽減
これらのためにお役に立てれば幸いです。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
草加西口大腸肛門クリニック 院長 金澤 周(かなざわ あまね)
当院の診療について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください
参考文献
- 肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版.日本大腸肛門病学会, 2020