「今朝排便をしたら真っ赤な血便がでました!」
とおどろいてクリニックを受診する患者さんがいらっしゃいます。
排便のときに紙にうっすらと少し鮮血がついたことがある方はいらっしゃると思いますが、
その量が多かったり、色が真っ赤だったりすると驚きますよね。
「どの病院を受診したらいいのかな?」
「どんな検査を受けたらいいのかな?」
そんな思いで検索をしたのではないでしょうか。
この記事では、「血便(鮮血)のときにはどんな検査を受けたらいいの?」という疑問を解決していきます。
この記事の内容
- 血便(鮮血)とは
- 血便(鮮血)のときに調べる部位
- 血便(鮮血)のときの検査2つ【肛門鏡】【大腸内視鏡検査】
- 血便(鮮血)のときに【便潜血検査】を受けていい?
この記事の信頼性
この記事を書いた私の名前は「金澤 周(かなざわ あまね)」です。
埼玉県草加市にある、草加西口大腸肛門クリニックの院長です。
また、大腸と肛門の専門医であり指導医でもあります。
これまでに血便で悩む患者さんを10,000人以上診察してきました。
これを読めば、血便(鮮血)があるときに、どうして2つの検査が必要かが分かります。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
それでは始めていきましょう!
血便(鮮血)とは?
血便とは、おしりから出血することいい、
『便に赤い血(鮮血)が混ざっていて便が赤色の状態】です。
これに対して下血は、便に古い血が混ざり、便が黒くなっている状態です。
血便の色と病気の関係については以下の記事をご覧ください。
血便(鮮血)のときの検査はどこを調べる?
出血してから時間がたつにつれて便に混ざる血液の色は赤色から黒色に変化していきます。
このため、血が出ているとこるが肛門に近いほど血液は赤く遠いほど黒くなります。
胃や十二指腸など肛門から遠いところからの出血ほど便の色は黒くなりタール便と言われたりもします。
血便は主におしりから近い場所の出血なので、
検査で調べる場所は、大腸と肛門になります。
血便(鮮血)のときの検査は2つ
みなさんは、大腸と肛門を調べる検査というと何を思い浮かべますか?
「大腸内視鏡検査(大腸カメラ)!」
という方が多いと思います。
大腸内視鏡検査は大腸を見ることはできますが、
肛門をしっかりみることはできません。
血便(鮮血)のときにおこなう可能性のある検査は以下の3つです
- 肛門鏡
- 大腸内視鏡検査
それぞれの役割は以下のようになっています。
肛門鏡 | 大腸内視鏡検査 | |
肛門の観察 | ○ | × |
大腸の観察 | × | ○ |
肛門鏡は肛門の診察はできますが、大腸の診察はできません。
また、大腸内視鏡検査は大腸の観察はできますが肛門の観察はできません。
このため、肛門と大腸を全て観察するには、
『肛門鏡+大腸内視鏡検査』
の組み合わせが必要となります。
ここからはそれぞれの検査を見ていきましょう。
血便(鮮血)のときの検査【肛門鏡(こうもんきょう)】
「こうもんきょう?」はじめて聞いた方も多いと思います。
【肛門鏡(こうもんきょう)】は肛門の診察をするための専門の器械です。
肛門鏡はいろいろな種類がありますが、
私のクリニックでは写真のようなものを使っています。
血便(鮮血)のときはおしりからの出血のことが多いため、おしりの診察は必要です。
恥ずかしくないおしりの診察
ここからは私のクリニックでの実際のおしりの診察のながれを説明していきます。
「おしりの診察」というとだれもが恥ずかしさと不安でいっぱいだと思います。
「どういうふうに診察をするのかが分からないので不安です…」
実際に問診の際にはこのような声をよくお聞きします。
草加西口大腸肛門クリニックでは患者さんが恥ずかしくないようにプライバシーに最大限配慮したおしりの診察を心がけています。
当院でのおしりの診察の手順は以下のとおりです。
① カーテンの中でズボンや下着をおしりが見えるくらいまで下ろして診察台に横になっていただきます。
② おしりに清潔なシートをかけた後に、看護師が体の位置とシートの位置を調整いたします。
これで診察の準備が完了です。
③ 視診察(見て観察)をします。
④ 指診察(指で診察)をします。
⑤ 肛門鏡で診察をします。
⑥ 診察が終わりましたらカーテンの中でゆっくりお着替えをしていただきます。
おしりの診察のながれは以上です。
診察時間は1〜2分程度です。
女性の方の診察の間は、女性スタッフがすぐそばにおりますので安心して診察を受けていただけます。
肛門鏡の検査でわかること
上の流れのように、肛門鏡の検査はおしりの診察の最後に行います。
肛門鏡の検査で以下のことがわかります。
- 内痔核(いぼ痔)の有無と程度
- 裂肛(切れ痔)の有無と程度
- 痔瘻の入口
- 直腸の下の方の粘膜の状態
あまり知られていないのは、『直腸の下の方の粘膜の状態も見える』ということです。
直腸は大腸のなかで肛門に最も近い部分をいいます。
肛門鏡を使うと直腸の一番下の粘膜がわずかに見えます。
これにより、直腸に炎症が起きていなかの診断ができることがあります。
血便(鮮血)のときはまずは肛門鏡による検査を受けてください
大腸の中をみるのは、次に説明する大腸内視鏡検査の役割ですが、
いぼ痔や切れ痔の詳細な観察はできません。
そもそも内視鏡の設備がないとできませんし、
しっかりとした検査のためには約2リットルの下剤の内服が必要になります。
血便(鮮血)の検査でいきなり大腸内視鏡検査となるとハードルが高く、
病院の受診をためらってしまうが多いのではないでしょうか。
これに対して、肛門鏡は診察室で簡単に行える検査です。
私たちのクリニックでは皆さんが診察の際に、恥ずかしさを感じないよう工夫をしています。
まずはちょっとだけ勇気を出して、おしりの診察を受けてみてください。
おしりの診察をした後に大腸の検査が必要と判断した場合には、
大腸内視鏡検査をご案内しています。
血便(鮮血)のときの検査【大腸内視鏡検査】
血便(鮮血)のときに大腸を調べる検査は大腸内視鏡検査になります。
大腸内視鏡検査の最大のメリットは、
『大腸の観察と治療が同時にできる』ということです。
ある程度の大きさや個数までであれば、日帰りでのポリープ切除が可能です!
ただ、より精度の高い検査や治療のためには事前の準備が必要です。
- 検査1〜2日前からの食事制限、
- 検査前日の下剤の内服
- 検査当日に約2リットルの下剤の内服
が必要になります。
また、ポリープを切除した後などは、出血予防のために飲食物や運動の制限があります。
大腸内視鏡検査前後の食事制限については以下の記事をご覧ください。
補足:血便(鮮血)のときの検査【大腸CT検査】
血便(鮮血)のときに大腸を調べる検査としては、
大腸内視鏡検査が第一選択です。
しかし、いろいろな理由で大腸内視鏡検査を受けられない方もいらっしゃいます。
その際の別の方法として『大腸CT検査』があります。
大腸CT検査は事前に飲む下剤の量が少なく、検査のつらさが少ないというメリットがありますが、
内視鏡よりポリープを見つける精度が低く、ポリープ切除などの治療ができないというデメリットがあります。
このため、大腸内視鏡検査が受けられない場合の検査という位置付けです。
大腸CT検査の詳細は以下の記事をご覧ください。
便潜血陽性の精密検査は?どの病院を受診?【専門医が徹底解説】
血便(鮮血)のときに【便潜血検査】は受けていいの?
答えはNoです!
まず、すでに出血をしている状態で便潜血検査を受けても陽性になる可能性が高いです。
そして仮に陰性になったとしても、出血をしていたという事実は消えません。
たまたま、便潜血が陰性になっただけです。
「便潜血陰性だから大腸がんは大丈夫」といって、
診察を受けないのは、もしかしたらあるかもしれない大腸がんを見逃すことになります。
血便(鮮血)の時は、検診ではなく診察の対象となりますので、クリニックを受診してください。
まとめ
ここまで記事を読んでいただきましてありがとうございました。
『便潜血陽性のときに受ける2つの検査』についておわかりただけましたでしょうか。
「血便(鮮血)があり、他の病院で大腸内視鏡検査を受けて、大腸に何もないから心配いらないと言われたのですが、まだ出血があり困っています…」
とクリニックに来院されるかたもいらっしゃいます。
「大腸じゃなきゃどこからの出血なの?」
という疑問に答えるのが肛門鏡検査です。
『肛門鏡+大腸内視鏡検査』の組み合わせで検査をすることにより、
大腸〜肛門の全ての観察をすることができます。
血便(鮮血)のときは、ぜひこの2つの検査を受けてください!
この記事が、
- 皆様の健康維持
- 皆様の病気の早期発見・早期治療
- 皆様が大腸肛門科を受診する際の不安の軽減
これらのためにお役に立てれば幸いです。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
草加西口大腸肛門クリニック 院長 金澤 周(かなざわ あまね)
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