アルコールを飲みすぎた次の日に「朝トイレに行ったら便器が真っ赤になっていた!」という経験をした人はいませんか?
この記事では、『血便とアルコールの関係はあるの?』という疑問を解決していきます。
この記事の内容
- アルコールが痔に与える悪影響
- その血便、本当にアルコールが原因ですか?
- 血便の際の診察のながれ
- 恥ずかしくないおしりの診察
- 血便の精密検査【大腸内視鏡検査】
- アルコールを減らすことで得られる【腸やおしりに対するメリット】
この記事の信頼性
この記事を書いた私の名前は「金澤 周(かなざわ あまね)」です。
埼玉県草加市にある、草加西口大腸肛門クリニックの院長です。
また、大腸と肛門の専門医であり指導医でもあります。
これまでに血便で悩む患者さんを10,000人以上診察してきました。
これを読めば、血便とアルコールの関係、アルコールを減らすことによる腸やおしりに対するメリットまでもが分かります。
血便はあなたの体の危険のサイン!
アルコールを飲んだ後の血便、おしりも痛いし、
「たぶん痔かな?」と自己判断して血便を放置するのは大変危険です。
なぜなら、
血便は命に関わる大腸がんの可能性もあるからです!
血便はあなたの体が発している危険のサインです!
そのサインを見逃さないでください!
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
それでは始めていきましょう。
アルコールが痔に与える悪影響
アルコールを飲んだ後に血便があると、「おそらく痔だろう」と思う人が多いです。
だいたいそれであってます。
アルコールを飲みすぎると痔が悪化し血便が出るには2つのパターンがあります。
- アルコールで痔がうっ血して出血する
- アルコールで下痢になり痔が悪化して出血する
アルコールで痔がうっ血して出血する
アルコールを飲みすぎると血管が広がり血流量が増えます。
肛門周囲の血流量も増え、痔に入る血液も増えます。
しかし、血液を心臓に戻す静脈の血流量は変わりません。
このため、痔に血液がたまりうっ血した状態となり出血(血便)や痛みの原因になります。
内痔核(内側のいぼ痔)、血栓性外痔核(外側のいぼ痔)、裂肛(切れ痔)はアルコールをとりすぎることにより悪化し出血や痛みの原因のなります。
アルコールで下痢になり痔が悪化して出血する
アルコールをたくさん飲むと水分やミネラルの吸収が悪くなります。
そうなると腸へいく水分が多くなり下痢を引き起こします。
糖分や脂肪分の分解や吸収も弱まり下痢をさらに起こしやすくなります。
下痢になり排便回数が増えることにより、肛門への負担が増えて傷ついたりします。
そのため、もともとある痔核(いぼ痔)がはれたり、肛門が裂ける(裂肛:切れ痔)ことにより出血や痛みの原因となります。
その血便、本当にアルコールが原因ですか?
このように、アルコールを飲んだ後の血便は痔の悪化が原因のこともあります。
しかし、血便をきたす原因は他にもたくさんあります。
血便の原因を詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。
日頃からアルコールを多く飲んでいる方は特に注意が必要です。
さらに、日頃からおしりの調子が悪く出血をしている方の場合はなおさら注意です。
このような時に、
「血便があったけどいつものように痔からの出血だろう…」
と思って放置するのは非常に危険です。
血便は、あなたの体が伝えている大腸がんなど命に関わる危険な病気のサインでもあるからです。
血便の原因がアルコールによる痔の悪化ではないケース
私がクリニックで診療をしていてよくあるケースをご紹介します。
- 日頃からアルコールを飲んでいる男性
- もともと痔もあり、たまに出血やおしりの痛みがあった
- 数ヶ月前からある、アルコールを飲んだ後の血便を痔が原因と思い放置
- 日常的に下痢や腹痛が出現
- 家族から勧められてクリニックを受診
- 大腸内視鏡検査で大腸がんが見つかる
教科書に出てくるような典型的なエピソードですが、
実際の診療ではこのような方がたくさんいらっしゃいます。
写真のような状況になると腸の通り道が狭いため硬い便は出ません。
下痢でないと便がつまってしまうため自然に下痢となります。
また、便がつまることで激しい腹痛がおこることもあります。
ひどいと腸閉塞になり緊急入院が必要となります。
大腸がんで苦しむのはあなただけではありません。
あなたの家族や周りの人も精神的・経済的に苦しむことになります。
繰り返し言います!
大腸がんは命に関わります!
血便がおこったら「痔かな?」と思って、放置せずに必ず病院を受診してください。
アルコールを飲んだ後の血便で悩む方の診察のながれ
ここからは、あなたがアルコールを飲んだ後の血便でクリニックを受診した場合の、診察のながれについて説明をしていきます。
おおまかなながれは以下です。
- 問診
- お腹の診察
- おしりの診察
- 診断名の決定
- 検査や治療のご案内
それぞれもう少し詳しく説明していきます。
問診
あなたの現在の症状や、これまでの経過を詳しくおうかがいします。
お腹の診察
診察台に仰向けに寝ていただき、お腹の痛い場所や、痛みの程度などを診察します。
おしりの診察
肛門の近くに出血の原因になる病気がないかを診察します。
指での診察、肛門鏡(こうもんきょう)という専門の器械を使って診察します。
肛門診察については後ほど詳しくお話しします。
肛門診察の時間は1〜2分程度と短時間です。
感染性腸炎が疑われる場合は、おしりの診察の際に便の培養検査をすることもあります。
診断名の決定
現状で考えられる診断名を図を用いて分かりやすくお伝えします。
検査や治療のご案内
診断名をお伝えした後に、検査や治療のご案内をします。
検査・治療方針はあなたと相談をしながら決めていきます。
貧血の程度を知るために、血液検査をすることがあります。
また、大腸や胃の状態の観察は内視鏡検査になりますが、
必ずしも緊急の内視鏡検査が必要というわけではありません。
大腸からの出血の可能性がある場合の検査
症状により緊急度は異なりますが、大腸の精密検査をお勧めします。
クリニックでできる精密検査は大腸内視鏡検査になります。
検査前には2リットルの下剤を飲む必要がありますが、
いろいろな事情で大腸内視鏡検査ができない場合は、CT検査などの他の検査をご案内する場合もあります。
大腸内視鏡検査の手順の詳細は以下の記事をご覧ください。
胃・十二指腸からの出血の可能性がある場合の検査
胃や十二指腸からの出血の可能性がある場合は、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)をおすすめします。
アルコールを飲んだ後の血便の『はずかしくないおしりの診察』
おしりの診察」というとだれもが恥ずかしさと不安でいっぱいだと思います。
「どういうふうに診察をするのかが分からないので不安です…」
実際に問診の際にはこのような声をよくお聞きします。
草加西口大腸肛門クリニックでは、患者さんが恥ずかしくないようにプライバシーに最大限配慮したおしりの診察を心がけています。
当院でのおしりの診察の手順は以下のとおりです。
① カーテンの中で、ズボンや下着をおしりが見えるくらいまで下ろして、診察台に横になっていただきます。
② おしりに清潔なシートをかけます。これで診察の準備が完了です。
③ 視診察(見て観察)をします。
④ 指診察(指で診察)をします。
⑤ 肛門鏡(こうもんきょう)で診察をします。
肛門鏡は下の写真のような小さな器械で、痔の様子などを詳しく観察できます。
⑥ 診察が終わりましたらカーテンの中でゆっくりお着替えをしていただきます。
おしりの診察のながれは以上です。
なんとなくイメージしていただけましたでしょうか?
診察時間は1〜2分程度です。
女性の診察の場合には、女性スタッフがすぐそばにおりますので、安心して診察を受けていただけます。
アルコールを飲んだ後の血便の精密検査【大腸内視鏡検査】
おしりの診察の結果、大腸からの出血が疑わしい場合は、大腸内視鏡検査をおすすめします。
先に述べたように血便や下血は大腸がんのサインである可能性もあり、命に関わる病気を知らせる体の悲鳴です。
そのため大腸内視鏡検査を行い血便や下血の原因を特定していきます。
当クリニックでの大腸内視鏡検査は、痛みや恥ずかしさはほとんどありません。
毎年約1,000件の大腸内視鏡検査をしていますので、痛みが出ないテクニックを体得しています。
また『つらくない内視鏡検査』のため、鎮静剤や鎮痛剤も使用しています。
患者さんからもよく、
「痛みがなくて楽でした」
「こんなにスムーズに終わるなら早めに受けておけばよかった」
などの嬉しい言葉をたくさんいただきます。
また、当クリニックの大腸内視鏡検査は院長の私が全て担当しております。
このため過去の検査情報を十分に生かすことで、患者さん一人一人に個別化した内視鏡検査『テーラーメード内視鏡』が可能となっています。
また、大腸内視鏡検査のときの体勢は以下のようになります。
おしりが少しだけ見える検査着を着ていただきます。
「恥ずかしくて無理」
などと言われる患者さんもこれまでいらっしゃいません。
検査時間も20分程度です。
このように当クリニックでは、痛みや恥ずかしさがなく安心して受けられる大腸内視鏡検査を行っています。
以下に検査の予約から検査終了までの流れを簡単にまとめてみました。
アルコールを減らすことで得られる、腸やおしりに対するメリット
ここまで、
- 血便とアルコールの関係
- 血便と痔や大腸がんの関係
- おしりの診察や大腸内視鏡検査のながれ
について説明をしてきました。
最後に、『アルコールを減らすことで得られる、腸やおしりに対するメリット』についてお話しします。
アルコールを減らすことで下痢が良くなります
「アルコールを飲みすぎると次の日は下痢をして何回もトイレに行く」
という方はアルコールを減らすことで下痢が良くなります。
アルコールをたくさん飲むと、
水分の吸収低下、糖分や脂肪の吸収の低下がおこることで、下痢になります。
また、アルコールは食欲増進効果もあり、揚げ物など油っぽいものが食べたくなります。
1日にビールを3本飲んでいる人なら、まずは1本減らしてみてください。
アルコールを飲むときに、揚げ物などの油っぽい食事を少し減らしてみてください。
日々のちょっとした頑張りで少しずつ下痢から解放されていきます。
アルコールを減らすことで痔の症状が良くなります
先日、痔からの出血が多く困って来院した患者さんがいました。
その方は毎日多く飲酒をしていたため、飲酒量を少し減らすように提案をしました。
1ヶ月後にいらっしゃった時には飲酒を減らしたことで出血はゼロに。
「快適な生活を送ることができている」ととても満足をされていました。
この患者さんはとてもまじめな方で、1ヶ月間アルコールを全く飲まなかったとのことです。
前述の「アルコールが痔に与える悪影響」のところでも述べましたが、
アルコールはおしりに対して百害あって一利なしです。
排便時に痔が脱出して指で戻したりすることで困っている方はアルコールを減らすことは効果的です。
痔の腫れがよくなることで脱出の程度や頻度が改善します。
アルコール飲む習慣があり、出血や痛みや脱出などの痔の症状でお困りの方!
いきなりアルコールをゼロにしなくてもいいので、
まずはアルコールを少しでも減らしてみてはいかがでしょうか?
アルコールを減らすことで大腸がんのリスクを下げられます
生活習慣の欧米化と高齢化により大腸がんにかかる方が増えています。
厚生労働省の最新がん統計では、2021年の大腸がんの死亡数は、
- 男性2位
- 女性1位
- 男女合計2位
となっており、非常に多くの方が大腸がんで亡くなっています。
1位 | 2位 | 3位 | |
男性 | 肺 | 大腸 | 胃 |
女性 | 大腸 | 肺 | 膵臓 |
男女合計 | 肺 | 大腸 | 胃 |
大腸がんの原因の一つにさまざまな生活要因があります。
下の図は科学的に証明されている、生活の中で大腸がんに関連する因子です。
この中でアルコールは男性では『確実』に女性では『ほぼ確実』に大腸がんのリスクを上げることが科学的に証明されています。
大腸がんの予防という意味でも、アルコール量にして1日20g(アルコール濃度5%の350mlビール1本)程度にとどめましょう。
今よりアルコールを減らすだけで大腸がんのリスクを下げることができます。
今日からできる大腸がんの予防としてぜひ取り組んでみてはいかがでしょうか?
まとめ
ここまで記事を読んでいただきありがとうございました。
アルコールと血便の関係についておわかりいただけたでしょうか。
アルコールはおしりにとっては百害あって一利なしです。
さらにアルコールは大腸がんのリスクを『確実』にあげる因子と科学的にも証明されています。
自分の飲酒量をみなおしてみて「少し多いかな」と感じた方は、大腸がんの予防のためにもアルコール量にして1日20g(アルコール濃度5%の350mlビール1本)を心がけてみてください。
そして血便があった場合には早めに大腸肛門科を受診してみてください。
この記事が、
- 皆様の健康維持
- 皆様の病気の早期発見・早期治療
- 皆様が肛門科を受診する際の不安の軽減
これらのためにお役に立てれば幸いです。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
草加西口大腸肛門クリニック 院長 金澤 周(かなざわ あまね)
草加西口大腸肛門クリニックのHPはこちら▶︎▶︎▶︎https://soka-ok2.jp