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大腸メラノーシスとは?原因・症状・治療を【専門医が徹底解説】

「以前から便秘薬を使い続けているけど、大腸が黒くなるって本当?」

「大腸メラノーシスって、癌になるの?」

「内視鏡で“大腸が黒い”って言われたけど、大丈夫なのかな……」

そんな不安を感じて検索された方も、きっといらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、「大腸メラノーシス」について、専門医がわかりやすく解説します。

この記事の内容

  • 大腸メラノーシスとは?
  • 大腸メラノーシスの原因
  • 大腸メラノーシスの症状
  • 大腸メラノーシスの検査・診断
  • 大腸メラノーシスと大腸癌の関係は?
  • 大腸メラノーシスとは放置して大丈夫?
  • 大腸メラノーシスの治療

この記事の信頼性

この記事を書いた私の名前は「金澤 周(かなざわ あまね)」です。

この記事を読めば、『大腸メラノーシスの原因・症状・予防法』がわかり、すぐに適切な行動がとれるようになります。

『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』

それでは始めていきましょう。

この記事は、草加西口大腸肛門クリニックの院長が専門医の立場から執筆しています

目次

大腸メラノーシスとは?

大腸メラノーシスとは、大腸内視鏡検査の際に見られる「腸の粘膜が褐色〜黒っぽく色素沈着している」状態をいいます。

見た目は茶褐色〜黒色で、びっしりと色素が沈着していることが多く、キリンのシマように見えます。

専門的には「リポフスチン」という物質がマクロファージ(貪食細胞)に蓄積したものとされています。

この色素はメラニンではないため、「メラノーシス」という名前に反して、

実際には“偽(ぎ)メラノーシス(pseudomelanosis)とも呼ばれます。

大腸メラノーシスの原因は?

大腸メラノーシスの原因として、最もよく知られているのは、

「アントラキノン系」と呼ばれる植物由来の便秘薬の長期使用です。

アントラキノン系便秘薬とは

センナ、ダイオウ、アロエなどの植物に含まれるアントラキノンという成分が、大腸の粘膜を直接刺激することで下剤として作用し、その結果、大腸の粘膜に色素が沈着します。

このタイプの便秘薬は、市販薬や健康食品にも含まれていることがあるため、注意が必要です。

ここからは、アントラキノン系便秘薬で、病院で処方される薬(便秘薬)と、アロエ茶やセンナ茶などのアントラキノン系健康食品について説明をしていきます。

アントラキノン系便秘薬(病院で処方される薬)

アントラキノン系便秘薬で、病院で処方される薬(処方薬)は、

  • センノシド系
  • ダイオウ系

の2種類です。

センノシド系

センノシド系の薬剤は、「センノシドA・B」という成分を含んでいて、

これは植物のセンナに由来するアントラキノン系の成分です。

処方薬では、錠剤タイプと顆粒タイプがあります。

錠剤タイプは、プルゼニド錠®が先発品で、現在は、「センノシド錠」の名称で複数の製薬会社(10社以上)からジェネリック医薬品が販売されています。

顆粒タイプは黄色い袋の「アローゼン®」があります。

これらの薬は、腸を直接刺激するタイプの下剤で、作用が強く、短時間で効果が現れやすいのが特徴です。

そのため、便秘がつらく「とにかく早く便を出したい」ときに使われることが多いです。

ただし、腸への刺激が強いため腹痛や水様便(下痢)の副作用が出ることがあります。

また、長期使用によりメラノーシスのリスクがあるため、継続的な使用には注意が必要です。

「どうしても便が出ない時だけ使う」というのがこの薬の正しい使い方です。

ダイオウ系

ダイオウ系の薬剤は、大黄(ダイオウ)という成分を含んでいて、

これは植物のダイオウに由来するアントラキノン系の成を含む下剤です。

処方薬としては、非漢方薬の「セチロ配合錠剤」と、漢方薬に大きく分けられます。

セチロ配合上は、大黄とセンナを2:1の割合で配合した薬になります。

それぞれの薬について、1日あたりの大黄の含有量と下剤としての強さを以下の表にまとめました。

分類下剤としての強さ製品名大黄(ダイオウ)
含有量(1日量)
非漢方薬穏やかセチロ配合錠ダイオウ 621mg
センナ 324mg
漢方薬強め大承気湯
(だいじょうきとう)
約5g
強め桃核承気湯
(とうかくじょうきとう)
約3g
中程度調胃承気湯
(ちょういじょうきとう)
約2.5g
中程度防風通聖散
(ぼうふうつうしょうさん)
約2g
穏やか潤腸湯
(じゅんちょうとう)
約1.5g
穏やか麻子仁丸
(ましにんがん)
約1g
穏やか大黄甘草湯
(だいおうかんぞうとう)
約1g

漢方薬の中でも、大黄の含有量は5gの大承気湯から、1gの麻子仁丸・大黄甘草湯まで幅広く、作用の強さも異なります。

ただし、どの薬もアントラキノン系成分を含むため、大黄の量が少なくても、長期使用することにより大腸メラノーシスのリスクはあります

そのため、センナ系の下剤同様、「どうしても便が出ない時だけ使う」という位置付けで、日常的な連用は避けることが大切です。

アントラキノン系健康食品

近年、便秘改善やダイエット目的で手軽に飲める健康茶が数多く販売されています。

中でも「アロエ茶」「センナ茶」は人気ですが、実はどちらもアントラキノン系の刺激性成分を含んでおり、医薬品の便秘薬と同じリスクがあります。

これらは自然由来の植物成分から作られていますが、腸を刺激して排便を促す作用が強く、長期使用や習慣化には注意が必要です。

アロエ茶

アロエ茶には、アロインエモジンといったアントラキノン系成分が含まれ、腸の動きを活発にして排便を促します。

「デトックス茶」や「美容茶」として販売されることが多いですが、

腹痛や下痢、大腸メラノーシスを引き起こすリスクがあります。

自然食品のように見えても、医薬品の下剤と同じ作用があるため、

「どうしても便が出ない時だけ使う」という位置付けで、日常的な連用は避けることが重要です。

センナ茶

センナ茶は、センノシドA・Bというアントラキノン系成分を含み、腸を強力に刺激して排便を促します。

「ダイエット茶」「便秘茶」として人気ですが、腹痛・下痢・耐性(効きにくくなる)・大腸メラノーシスのリスクがあります。

センナは医薬品の下剤と同じ成分であり、常用は危険です。

「どうしても便が出ない時だけ使う」という使い方が基本で、長期の習慣的使用は避けましょう

メラノーシスが起こる流れ

ここからは、アントラキノン系の便秘薬や食品を使用した際に、

大腸メラノーシスがどのようにして起こるのか、その流れをわかりやすく説明していきます。

① アントラキノン系便秘薬を長期間使用

継続使用により、腸の粘膜にダメージをあたえます。

② 大腸の粘膜細胞がアポトーシス(自然死)を起こす

便秘薬の強い刺激を長く受け続けると、腸の表面にある細胞がダメージを受けて、少しずつはがれ落ちていきます。

本来ならゆっくり入れ替わるはずの細胞が、薬の影響でどんどん壊れてしまう状態す。

③ 腸の粘膜に存在するマクロファージが死んだ細胞を食べる

壊れた細胞の“ゴミ”を掃除する役目の免疫細胞(マクロファージ)が掃除にきて、壊れた細胞のゴミを食べます。

④ マクロファージの中で「リポフスチン」が生成される

マクロファージの中で分解しきれなかった酸化物質(脂質・タンパク質)が残り、それがリポフスチン(lipofuscin)として蓄積されます。

リポフスチンは黄色〜茶色の色素を持ち老化色素と言われています。

⑤ リポフスチンを含んだマクロファージが腸粘膜にあつまる

色素を含んだマクロファージが増えて、粘膜全体に色素沈着が広がります。

内視鏡で見ると、大腸の粘膜が茶色〜黒色に変色しています。

この状態を、大腸メラノーシス(melanosis coli)といいます。

それ以外のリスク因子について

大腸メラノーシスの主な原因は、アントラキノン系の便秘薬の使用ですが、

一部の研究では、便秘や腸の運動機能の低下そのものが、大腸メラノーシスと関係している可能性があると考えられています。

また、アントラキノン系便秘薬を使っていない人でも発症例が報告されており、腸内環境の乱れ、酸化ストレス、ビタミンEの不足といった要因も関係している可能性があります。

大腸メラノーシスの症状は?

大腸メラノーシスの状態でも、自覚症状は特にありません。

そのため、大腸内視鏡検査をした時に偶然発見され、

「メラノーシスがありますね」という医師の言葉で初めて気づくことがほとんどです。

メラノーシスそのものが病気ではなく、アントラキノン系の下剤を使っているサインといえます。

このため、今後の便秘薬の使い方を見直すきっかけになるかもしれません。

大腸メラノーシスの検査・診断

【大腸内視鏡検査の様子】

大腸メラノーシスは、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)で診断されます。

検査中に、大腸の粘膜が茶色〜黒っぽく変色しているのが確認されると、メラノーシスと診断されます。

大腸メラノーシスと大腸がんとの関係は?

大腸メラノーシスそのものは、大腸がんに直接つながる病気ではないと、これまでの多くの研究で報告されています。

内視鏡検査で腸の粘膜が黒っぽく見えても、それが癌化するわけではありません。

一方で、メラノーシスがあると大腸がんの元になる「腺腫(良性のポリープ)」が見つけやすくなることも報告されています。

これは、黒っぽく変色した腸の粘膜と、白っぽい腺腫との色のコントラストがはっきりすることで、ポリープの視認性が上がるためです。

ただし、メラノーシスがあることで腺腫ができやすくなるという証拠は、現在までの研究では確認されていません。

大腸メラノーシスは放置しても大丈夫?

「大腸メラノーシスは大腸がんに関係ないなら、放置してもいいのでは?」

と思う方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、大腸がんのリスクはありませんが、大腸メラノーシスの状態は体にとって正常ではありません。

大腸メラノーシスは、慢性的な便秘のために、刺激性の下剤を使い続けている証拠で、

体が刺激性の下剤に頼らないと排便できない「耐性」状態におちいっていることを示しています。

この「刺激性の下剤を使わないと排便ができない状態」は改善すべきサインです。

生活習慣の見直しや、非刺激性の下剤に切り替えを進めることが大切です。

長期的に刺激性の下剤を使用している方は、便秘薬の使い方を見直すきっかけとして受け止めましょう。

日頃からアントラキノン系の刺激性下剤を使っていて気になる方は、

この機会にかかりつけ医に相談をして、より安全な便秘薬への変更や生活習慣の改善を検討してみてはいかがでしょうか。

大腸メラノーシスの治療

大腸メラノーシス自体は、腸の色素沈着のため、厳密には病気ではありません。

このため、「治療」というよりは、「改善」という言葉がいいかもしれません。

大腸メラノーシスの治療(改善)は、「アントラキノン系の下剤や食品の摂取やめること」です。

「あんなに茶色くなった腸がきれいになるの?」

と疑問に思う方もいらっしゃると思います。

そこで、実際にクリニックで大腸メラノーシスが改善をした方の経過を、実際の大腸内視鏡写真で見ていただきます。

大腸の一番奥の「盲腸」部分での色の変化を見てください。

【症例】40歳 女性 便秘でアロエ内服中

202■年●月 慢性的な便秘でアロエ内服中。便秘のコントロールが難しくなり当院受診。アロエの内服を中止し、非アントラキノン系便秘薬に変更。

アロエ中止6ヶ月後 大腸内視鏡検査(1回目)

盲腸部分は黒〜茶色の色素沈着がみられ、メラノーシスが強い状態です。

アロエ中止1年後 大腸内視鏡検査(2回目)

黒っぽい斑点は残っているものの、全体的にメラノーシスは改善傾向にあります。

アロエ中止3年後 大腸内視鏡検査(3回目)

よく見ると画面の右側に茶色い斑点が少しだけありますが、大腸全体の色はほぼ正常になっています。

2年前の内視鏡写真と比較すると同じ方の腸とは思えないくらいきれいになりました。

この患者さんは現在も、非アントラキノン系の便秘薬で便通コントロールができています。

このように、アントラキノン系の内服薬や食品を中止することにより、大腸メラノーシスは改善することができます

大腸メラノーシスの改善には半年〜数年かかることもあります

便秘薬の見直しや生活習慣の改善を続けながら、医師と相談しつつ経過を見ていくことが大切です。

まとめ

ここまで記事を読んでいただきありがとうございました。

『大腸メラノーシスの原因・症状・治療』についてお分かりいただけましたでしょうか。

「メラノーシスがある=がんのリスクが高い」というわけではありませんが、

「メラノーシス=慢性の便秘のため、刺激性の下剤を使い続けているサイン」です。

このため、メラノーシスの原因となる刺激性の下剤の使用をしなくてもいいように、生活習慣の改善や便秘薬の変更を検討していくことが重要です。

この記事が、

  • 皆様の健康維持
  • 皆様の病気の予防・早期発見・早期治療
  • 皆様が大腸肛門科を受診する際の不安の軽減

これらのためにお役に立てれば幸いです。

『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』

草加西口大腸肛門クリニック 院長 金澤 周(かなざわ あまね)

当院の診療について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください

参考文献

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この記事を書いた人

大腸肛門科医
【経歴】弘前大学医学部卒業▶︎横浜市立大学研修医▶︎神奈川県立がんセンター・大腸外科▶︎社会保険中央総合病院・大腸肛門病センター▶︎2018年から草加西口大腸肛門クリニック院長
●診療理念『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
●大腸とおしりの悩みを解決します!

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