「排便のあとおしりが痛い…これって切れ痔かも?」
そんな不安を感じたとき、「切れ痔」「何科」で検索された方も多いのではないでしょうか?
この記事では、数ある診療科の中から、切れ痔かもしれないと思ったときに、
何科を受診すべきかを、専門医がわかりやすく解説します。
この記事の内容
- 切れ痔かも?と思ったときに受診する診療科
この記事の信頼性
この記事を書いた私の名前は「金澤 周(かなざわ あまね)」です。

この記事を読めば、『切れ痔かも?と思ったときに何科を受診すべきか』がわかり、すぐに適切な行動がとれるようになります。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
それでは始めていきましょう。
この記事は、草加西口大腸肛門クリニックの院長が専門医の立場から執筆しています
切れ痔かもと思ったときに何科を受診すればいい?【優先順位】
切れ痔の可能性のあるときに受診すべき診療科の優先順位は以下の通りです。
受診優先順位 | 診療科名 |
---|---|
1位 | 肛門外科、大腸・肛門外科 |
2位 | 消化器外科 |
3位 | 外科 |
ちなみに厚生労働省が定める正式な標榜診療科名は、法的に認められた診療科名です。
以下で1位から3位の診療科について詳しくみていきます。
【優先順位1位】肛門外科、大腸・肛門外科

切れ痔かも?と思ったときの受診最優先診療科は、
「肛門外科」あるいは「大腸・肛門外科」です。
これらの診療科は、おしりの病気に特化した外科であり、
症状の軽い場合から、手術が必要な場合まで、一貫して対応が可能です。
また、日頃から「おしりの診察」を行なっているため、
- 恥ずかしさ
- 痛み
への配慮も丁寧な傾向があります。
ちなみに私が勤務している「草加西口大腸肛門クリニック」は、「大腸・肛門外科」を標榜しています。

ただ、肛門外科/大腸・肛門外科を標榜している病院が少ないのが難点です。
ちなみに、私が勤務している「草加西口大腸肛門クリニック」がある、
埼玉県草加市(人口約26万人)で、肛門外科/大腸・肛門外科を標榜している病院は、
当院を含めて5施設です。
【優先順位2位】消化器外科
「肛門外科/大腸・肛門外科」が近くにない場合は、次に行くべきは「消化器外科」です。
消化器外科は、外科の中でもお腹の病気を専門にみる診療科です。
消化器外科は扱う臓器から、
- 食道外科
- 胃外科
- 大腸・肛門外科
- 肝臓外科
- 胆道外科
- 膵臓外科
に分けられます。

現在の医療教育システムであれば、2年間の研修医を終えて、「消化器外科医」を選択した場合、
最初の数年間で、上記の全ての分野の診療にたずさわります。
その中で、自分が将来メインで診療をしたい臓器を選んでいく感じです。
そのため、「消化器外科医」はお腹の臓器全般に対して、基本的な知識と診療経験を持っています。
消化器外科医であれば、おしりの病気に対して最低限の対応はできますし、
より専門的な治療が必要な場合は、肛門外科を受診するようにアドバイスをしてくれるはずです。
【優先順位3位】外科
「消化器外科」も近くにない!というときは、「外科」を受診してください。
「外科」という診療科がカバーする領域はさらに広くなります。
具体的には、
- 心臓・血管外科
- 呼吸器外科
- 消化器外科
- 乳腺
- 内分泌外科
といった具合にほぼ全身をみる診療科です。

20年前には地域の中核病院にも「外科」という診療科があり、
当時の上司の外科医は消化器外科から呼吸器外科、乳腺内分泌外科まですべての手術を担当していました。
しかし、時代の流れに伴い、「外科」という診療科は少なくなり、
先ほど挙げた診療科に細分化されているのが現状です。
また、「外科」という診療科であっても、内部では細分化されていて、
以前のように一人の医師が異なる臓器の手術を担当することは少なくなっています。
私も現在は「大腸・肛門外科」として診療をしていますが、
外科医になってからは、心臓、呼吸器、乳腺、内分泌の診療にもたずさわってきました。
このため、「外科」を標榜している医師であれば、
外科医としての目線からおしりの病気に対して最低限の対応はできると思いますし、
より専門的な治療が必要な場合は、近隣の肛門外科を紹介してくれると思います。
Q&A|切れ痔かも?と思って病院を受診する時のよくある質問
以下に、患者さんからよくいただくご質問をQ&A形式でまとめました。
Q&Aは全部で10個あります、気になる点があれば、ぜひご確認ください。
-
Q. 肛門科って、やっぱり恥ずかしいです…
A. 恥ずかしさを感じる方は多いと思いますが、私たち医療従事者にとって肛門診察は日常業務の一つです。診察時には、患者様のプライバシーに配慮して、必要最小限の露出で行いますので、安心して受診をしてください。
-
Q. 女性でも肛門科に行って大丈夫ですか?
A. もちろん大丈夫です。当院では女性の診察の際には、女性スタッフが必ず立ち合いますので、安心して受診をしてください。どうしても男性医師の診察が気になる方の場合は、女性医師が在籍しているクリニックの受診をお勧めします。
-
Q. おしりの診察のときは、どんな服装がいいの?
A. 特別な準備は不要です。ズボンやスカート・下着を完全に脱ぐことはありません。おしりが見える程度に膝のあたりまでずらすだけで診察が可能です。
-
Q. おしりの診察は痛いの?
A. おしりの診察は、視診(見る)、指での診察、肛門鏡という専門の器械での診察、必要に応じて肛門エコーを行います。診察の際には、痛みの状況を確認しながら、無理をしない範囲で行いますので、安心して受診をしてください。
-
Q. おしりの診察はどうしても抵抗があります、診察は絶対しないといけないのですか?
A. 正しい診断と治療のためには、おしりの診察は必要です。しかし、どうしてもおしりの診察が抵抗のある場合は、詳細な問診の結果で、考えられる診断のもとに治療方法をご案内いたします。
-
Q. 切れ痔だと思っていたら、大腸がんのこともあるの?
A. 出血や痛みで放置していたら、大腸がんによるものだったというケースもあります。出血が継続する場合は、「切れ痔だろう」と自己判断をせず、まずは肛門科を受診してみてください。
-
Q. 病院に行くと、すぐ手術されそうで不安です…
A. 切れ痔の治療は、まずは生活習慣の改善や軟膏での治療から始まります。これらの治療でどうしても改善せず、生活に支障がある場合に、初めて手術のご提案をします。いきなり手術を勧めることはまずありませんので、安心して受診をしてください。
-
Q. 肛門科が近くにありません。内科でもみてもらえるの?
A. 内科でも相談はできます。専門的な治療や肛門診察が必要な場合は、肛門外科や大腸・肛門外科を紹介されることがあります。まずは、近くの内科で相談してみるのも1つの方法です。
-
Q. どうしても病院に行けないときは、市販薬で様子を見てもいい?
A. どうしても病院に行けないときは、薬局で薬剤師と相談の上、おしりの軟膏や坐剤を使ってもいいと思います。しかし、症状が続く場合や繰り返す場合は、漫然と市販薬を使うことはせず、専門医の診察を受けてください。
-
Q. 市販薬で様子を見るときは何日くらいは大丈夫?
A. 明確な決まりがあるわけではありませんが、市販薬を使い始めて、5日〜7日くらいたっても症状が改善しない場合は、専門医の診察を受けることをお勧めします。
よくある質問を確認したところで、改めて記事全体のポイントを「まとめ」として整理しておきます。
まとめ

ここまで記事を読んでいただきありがとうございました。
『切れ痔かも?と思った時に何科受診したらいいか』お分かりいただけましたでしょうか。
ベストは「肛門外科/大腸・肛門外科」ですが、標榜している医療機関は少ないため、
近隣に無い場合は、「消化器外科」→「外科」の順で検索をしてみてください。
なお、切れ痔の原因・写真・治し方などを知りたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。

この記事が、
- 皆様の健康維持
- 皆様の病気の予防・早期発見・早期治療
- 皆様が大腸肛門科を受診する際の不安の軽減
これらのためにお役に立てれば幸いです。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
草加西口大腸肛門クリニック 院長 金澤 周(かなざわ あまね)
当院の診療について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください
引用文献
- 広告可能な診療科名の改正について.厚生労働省HP(https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/kokokukisei/dl/koukokukanou.pdf)
- 肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版.日本大腸肛門病学会, 2020