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おしりから膿(うみ)が出る原因は?【専門医が徹底解説】

おしりから膿(うみ)が出て、痛みがあったり、下着が汚れたりして困っていませんか?

おしりから膿が出る最も多い原因は「痔瘻」によるものです。

しかし、

  • おしりの感染症
  • 大腸がん
  • 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)

などでもおしりから膿が出ることがあり、

原因をしっかりと診断して治療をしていくことが重要です。

この記事では、肛門科医の視点から「おしりから膿(うみ)が出る原因となる病気」について解説をしていきます。

この記事の内容

  • おしりから膿が出る原因となる病気
  • おしりから膿が出るときはどうしたらいいの?
  • 草加西口大腸肛門クリニックでの【おしりから膿が出る】ときの診療

この記事の信頼性

この記事を書いた私の名前は「金澤 周(かなざわ あまね)」です。

この記事を読めば、『おしりから膿がでる原因となる病気』について理解が深まり、適切な対処のきっかけになります。

『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』

それでは始めていきましょう。

この記事は、草加西口大腸肛門クリニックの院長が専門医の立場から執筆しています

目次

おしりから膿が出る原因となる病気

おしりから膿が出る原因となる病気はいくつかありますが、ここでは代表的なものを説明していきます。

痔瘻・肛門周囲膿瘍

「数ヶ月前からおしりから膿が出ます」

「数日前からおしりが腫れてきて、今日膿が出ました」

といっていらっしゃる方のほとんどが、痔瘻・肛門周囲膿瘍です。

肛門周囲膿瘍は、肛門周辺に炎症がおこり膿がたまる細菌感染症です。

強い痛みや腫れを伴い、発熱することもあります。

放置すると皮膚が破けて膿が自然に排出されることがあり、膿が出ると痛みが改善していきます。

膿のたまりを放置すると、

敗血症や壊死性筋膜炎という命に関わる状態になることもありますので、

自然に膿が出ない場合は、

皮膚を切開して膿を出す切開排膿という処置が必要となります。

痔瘻は肛門内と皮膚の間に瘻管(ろうかん)というトンネルできることで、

皮膚の穴から膿が出続ける状態になります。

痔瘻は自然治癒や薬では治らないため、根治のためには手術が必要です。

また、複雑な痔瘻を長期間放置すると痔瘻がんになる可能性があるため、

慢性的に膿が出続けている場合は、早めに肛門科を受診して、現在の状態を評価してもらうことが重要です。

痔瘻について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

肛門周囲皮膚炎・肛門周囲湿疹

「最近おしりがかゆくて膿のようなものも出ます」

おしりから膿がでるのは痔瘻・肛門周囲膿瘍だけではありません。

  • 下痢による刺激
  • おしりの拭きすぎによる物理的な刺激
  • アレルギー反応
  • カンジダ

などにより、

肛門周囲の皮膚が炎症をおこし、皮膚荒れがおこり、膿が出ることがあります。

軽症であれば新たな刺激を回避したり、

市販の軟膏をつかうことで改善していきますが、

なかなか良くならない場合は、肛門科や皮膚科の受診が必要です。

また、カンジダという菌が原因でよくならない場合は、

ステロイド入りの軟膏を使うとかえって悪化するため、注意が必要です。

ヘルペス感染症

「おしりのまわりが腫れて、ピリピリ痛みます」

こんなときはヘルペス感染症かもしれません。

単純ヘルペスウイルス(HSV)が原因で肛門周囲に水疱ができ、破れると膿が出ることがあります。

性感染症として感染することが多く、

ピリピリとした強い痛みやかゆみを伴うことが特徴です。

再発しやすく、ストレスや免疫低下時に症状が悪化します。

抗ウイルス薬での治療が有効で、早期に受診することが重要です。

潰瘍性大腸炎

若い方で、

「最近下痢気味で、排便のときに膿と出血が出ます」

という時には潰瘍性大腸炎の可能性があります。

【潰瘍性大腸炎の大腸内視鏡検査写真】

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる原因不明の病気で、国から難病にも指定されています。

20歳〜30歳に多いのですが、全年齢で発症する可能性があります。

大腸の炎症がひどい場合には、炎症をおこした腸の粘膜から膿が出ることがあり、

それが肛門から出てくることがあります。

おしりから膿が出るだけでなく、下痢や出血や腹痛なども伴う場合は、潰瘍性大腸炎の可能性もありますので、

おしりとお腹の両方の診察ができる、大腸肛門科を受診してください。

潰瘍性大腸炎について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

クローン病

【クローン病の大腸内視鏡検査写真】(OLYMPUS EndoAtlasより引用)

クローン病は、口から肛門までの全消化管に炎症をひき起こす原因不明の疾患で、国から難病に指定されています。

10代〜20歳代の若年者に多く、慢性的な下痢や腹痛を伴います。

クローン病は、肛門周囲膿瘍や痔瘻を合併することもあり、

腸と肛門病変の両方から膿が出る可能性があります。

大腸がん(直腸がん)

【直腸がんの大腸内視鏡検査写真】(OLYMPUS EndoAtlasより引用)

直腸がんが進行すると、腫瘍が潰瘍化して膿が出ることがあります。

特に、血便や便秘・下痢のが交互に起こったり、

体重減少などの症状を伴う場合は、直腸がんが原因でおしりから膿が出ている可能性があります。

肛門と大腸の両方の診察が可能な、大腸肛門科を早めに受診してください。

大腸癌について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

肛門管がん(扁平上皮癌)

肛門管がんは、肛門管(肛門の内側の部分)に発生する悪性腫瘍で、極めてまれな病気です。

初期の段階では自覚症状が少なく、軽度の出血や違和感程度であることが多いため、痔と思って様子をみている人もいます。

しかし、進行すると排便時の痛み、肛門周囲のしこり、持続的な出血が見られるようになります。

そして、血とともに膿のような粘液成分が出ることもあります。

診断には生検が必要であり、治療には放射線療法や化学療法が組み合わされることが一般的です。

おしりから膿が出る時はどうしたらいいの?

おしりから膿が出ると、不安になったり、どうしたらいいか迷ってしまうと思います。

膿が出る原因は、痔瘻(じろう)や肛門周囲膿瘍などの肛門の病気が多いですが、

皮膚の炎症や、まれに大腸の病気が隠れていることもあります。

「痛みがないから大丈夫かな」

「少し様子を見ようかな」

と思ってしまうかもしれませんが、自己判断で放置するのは危険です。

症状が軽くても、早めに肛門診察ができる医療機関を受診することがとても大切です。

また、下痢や出血を伴う場合などは、

大腸の病気が原因の可能性もありますので、

おしりと大腸の両方の診察ができる、大腸肛門科を受診してください。

心配な症状があるときは、お一人で不安を抱え込まずに相談をしてみてください。

早めにに正しい診断を受けることが、将来の安心につながります。

草加西口大腸肛門クリニックでの【おしりから膿が出る】ときの診察

私が院長をしている草加西口大腸肛門クリニックにも、

「おしりから膿が出る」ために多くの方がご相談にいらっしゃいます。

当院での「おしりから膿が出る」ときの診療の流れは以下のようになっています。

問診

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まずは問診で、おしりから膿が出るのが、

  • いつから膿が出るのか
  • おしりの痛みの有無
  • おしりの腫れの有無
  • 排便の様子
  • 出血の有無
  • 発熱の有無
  • 治療中の病気や内服薬

などを丁寧にうかがいます。

当院での『はずかしくないおしりの診察』

おしりの診察」というとだれもが恥ずかしさと不安でいっぱいだと思います。

「どういうふうに診察をするのかが分からないので不安です…」

実際に問診の際にはこのような声をよくお聞きします。

当院では、患者さんが恥ずかしくないようにプライバシーに最大限配慮したおしりの診察を心がけています。

また、痛みが強い場合には、無理はせず可能な範囲で丁寧に診察を進めていきますのでご安心ください。

当院でのおしりの診察の手順は以下のとおりです。 

① カーテンの中で、ズボンや下着をおしりが見えるくらいまで下ろして、診察台に横になっていただきます。

② おしりに清潔なシートをかけます。これで診察の準備が完了です。

③ 視診察(見て観察)をします。

④ 指診察(指で診察)をします。

⑤ 肛門鏡(こうもんきょう)で診察をします。

肛門鏡は下の写真のような小さな器械で、痔の様子などを詳しく観察できます。

【おしりの診察に使う肛門鏡】

⑥ 診察が終わりましたらカーテンの中でゆっくりお着替えをしていただきます。

おしりの診察のながれは以上です。

なんとなくイメージしていただけましたでしょうか?

診察時間は1〜2分程度です。

女性の診察の場合には、女性スタッフがすぐそばにおりますので、安心して診察を受けていただけます。

『肛門エコー』は肛門周囲膿瘍や痔瘻の診断に有用です!

肛門エコー(超音波検査)は肛門周囲膿瘍や痔瘻の診断に非常に有用です。

肛門周囲膿瘍の場合、通常指を使って診断をしていきますが、

肛門エコーを使うことによりビジュアル的に膿瘍を確認できます。

また、炎症や膿の広がりや膿のたまり具合なども客観的に評価できます。

さらに痔瘻の管までわかります。

肛門エコーは指よりも細い棒状の機械を使用するため、痛みはほとんどありません。

当院では、通常の肛門診察(見る、指で触る、肛門鏡)に加えて、肛門エコーを使うことにより、より精度の高い診察を行なっています。

診断名の説明と処置、追加の検査のご案内

ここまでの診察での所見から、現時点での診断名をお伝えします。

皮膚の炎症などが原因の場合は、外用薬やスキンケアで改善することが多いですが、

肛門周囲膿瘍が原因の場合は、抗菌薬や切開排膿が必要となります。

また、痔瘻で膿が出るのを繰り返している場合は、

根治のために手術が必要となります。

膿の他に、下痢や出血などがあり、大腸の病気が疑われる場合には、

大腸内視鏡検査をご案内することもあります。

などの追加の検査が必要な場合には検査のご案内をします。

「おしりから膿がでてるけど恥ずかしくて相談しづらい…」

と思われる方もいらっしゃると思います。

当院では、安心して診察を受けていただけるよう心がけておりますので、

お一人で悩まず、安心してご相談ください。

まとめ



ここまで記事を読んでいただきありがとうございました。

『おしりから膿が出るときの原因や対処法について』お分かりいただけましたでしょうか。

おしりから膿が出る原因は、

痔瘻や肛門周囲膿瘍、皮膚の病気などから、

大腸がんや炎症性腸疾患などの大腸の病気まで様々です。

  • 膿が出るのが続いている
  • 膿とともに下痢や出血がある

そんな時は、自己判断して放置せずに、

早めにおしりと大腸の両方の診察が可能な、

大腸肛門科の病院を受診して相談をしてみてください。

この記事が、

  • 皆様の健康維持
  • 皆様の病気の予防・早期発見・早期治療
  • 皆様が大腸肛門科を受診する際の不安の軽減

これらのためにお役に立てれば幸いです。

『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』

草加西口大腸肛門クリニック 院長 金澤 周(かなざわ あまね)

草加西口大腸肛門クリニックのHPはこちら▶︎▶︎▶︎草加西口大腸肛門クリニック

参考文献

  1. 肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版.日本大腸肛門病学会, 2020
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この記事を書いた人

大腸肛門科医
【経歴】弘前大学医学部卒業▶︎横浜市立大学研修医▶︎神奈川県立がんセンター・大腸外科▶︎社会保険中央総合病院・大腸肛門病センター▶︎2018年から草加西口大腸肛門クリニック院長
●診療理念『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
●大腸とおしりの悩みを解決します!

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