「大腸内視鏡検査の翌日は仕事できるのかな?」
初めて大腸内視鏡検査を受ける方が、検査の日程を決める際に、一番気になることの1つではないでしょうか。
この記事では、初めて大腸内視鏡検査を受ける方が、検査日を決める際に迷わないように、
「大腸内視鏡検査翌日の仕事をしても大丈夫か」について分かりやすく解説をしていきます。
この記事の内容
- 大腸内視鏡検査翌日の仕事はしても大丈夫か?
この記事の信頼性
この記事を書いた私の名前は「金澤 周(かなざわ あまね)」です。

この記事を読めば、『大腸内視鏡検査翌日の仕事はしても大丈夫か』がわかり、検査の予定が立てやすくなります。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
それでは始めていきましょう。
この記事は、草加西口大腸肛門クリニックの院長が専門医の立場から執筆しています
大腸内視鏡検査翌日の仕事はしてもいいか
大腸ポリープの切除がなければ翌日の仕事はしてもOK
私のクリニックで大腸内視鏡検査の予約を取る際も、
「大腸内視鏡検査翌日の仕事は普通にしてもいいですか?」
「2日間も仕事は休めないのですがどうしたらいいですか?」
とよく質問があります。
大腸内視鏡検査の日は1日休みを取ることが多いので、2日連続で仕事を休むのは難しい方が多いと思います。
基本的に、大腸ポリープの切除をしなかった場合は、大腸内視鏡検査翌日の仕事はしてもOKです。
問題になるのは、ポリープ切除後の出血

一方で、ポリープの切除をした場合は、ポリープ切除後の出血のリスクがあるため、
仕事の内容によっては、日頃より仕事量をセーブできたり、できれば休みが取れた方がいい場合があります。
また、おなじ「ポリープ切除」といっても、
3mmのポリープよりは10mmのポリープをとった方が出血のリスクは高くなりますし、
1個切除するよりは5個切除したほうが出血のリスクは高くなります。
また、仕事の内容も体に負担のかからないデスクワークから、重労働まで様々です。
仕事での身体活動が増えると、血圧が上がり、それに伴いポリープ切除後の出血のリスクが上昇します。
ここでは、
- 仕事の内容
から、大腸内視鏡検査翌日の仕事をどうしたらいいかを述べていきます。
仕事の内容による身体活動の強度 【METs(Metabolic Equivalents:代謝当量)】
最初に、皆さんのしている仕事の内容による身体への負担を評価するための指標について説明をします。
METs(Metabolic Equivalents:代謝当量)は最も一般的に使われている指標の1つです。
安静にしているときの消費エネルギーを「1」として、身体活動の強さを数字で表したものです。
仕事や運動が「どのくらい体に負担があるか」を数字で比較できます。
METs | 活動例 | 状態 |
1.0〜2.0 | 座っている(デスクワーク) | 体をほとんど動かさない仕事 |
2.0〜3.0 | 軽い家事、レジ業務、受付など | 立ち仕事だが力仕事ではない |
3.0〜4.0 | 販売・接客、配膳、郵便配達など | 歩き回るけど重い物は持たない仕事 |
4.0〜6.0 | 清掃業務、農作業、介護など | 一部に力仕事や中腰姿勢が含まれる |
6.0以上 | 土木作業、建設業、引越しなど | 全身を使うハードな作業/重労働 |
大腸内視鏡検査翌日の仕事の判断ポイント
先ほどの、METsから、ポリープを切除した場合の仕事の制限について、
私のクリニックで採用している基準をお示しします。
なお、今回の基準はあくまでも入院設備のないクリニックでの場合です。
また、それぞれの医療機関により基準は異なりますので、実際には検査を受けるクリニックの指示に従ってください。

まず、大腸ポリープの切除がない場合は仕事の制限は不要です。
大腸ポリープの切除をした場合、「4METs以下の仕事」も制限は不要です。
問題になるのは、大腸ポリープの切除をして、「4METs以上の仕事」の場合です。
ここでは「医師による出血リスクの判断」が重要となります。
検査をした医師が「出血リスクが低い」と判断した場合は仕事の制限はありません。
一方で「出血リスクが高い」と判断した場合は、仕事量を制限するか可能であればお休みをお勧めします。
ただ、なかなか検査翌日も休みを取ることは難しいと思いますので、
「仕事量を制限する」というのが現実的な選択となるのではないでしょうか。
大腸ポリープと出血リスクの関係は?
先ほどからお話ししているポリープ切除の際の「出血のリスク」について、
実際のポリープの画像をみながら説明をしていきます。
出血リスクが低いポリープ

これは3mmくらいの腺腫(良性だが大腸がんの元になる)性のポリープです。

このポリープは、スネアという処置具を使い、電気を通さず切除しました。
このようなポリープは切除翌日の出血リスクは低いです。
出血リスクが高いポリープ

これは10mmくらいの腺腫性ポリープです。
キノコのように茎があり、この茎の中にポリープを栄養する血管が通っています。
ポリープ切除の際は茎の部分をスネアという輪でつかみ電気を通して焼き切ります。

切除後の様子です。
今回のポリープは切除後の出血のリスクがあったので、クリップという止血器具で処置をしています。

この状態でも、翌日の身体活動が多いと血圧が上昇して、出血のリスクは上がります。
また、最初から出血のリスクがかなり高いと判断された場合は、
日帰りでのポリープ切除ではなく、安全性の面から入院での切除をご案内しています。
出血リスクと切除したポリープの個数の関係
ポリープの個数が増えるとその分出血のリスクも増えます。
最初の「出血リスクが低いポリープ」でも、10個近く切除すればリスクは上がります。
ポリープの大きさだけでなく、「ポリープ切除の個数」も医師が出血リスクを判断する重要なポイントです。
まとめ

ここまで記事を読んでいただきありがとうございました。
当院での判断基準や、実際のポリープ切除の画像を交えて説明をいたしましたが、
『大腸内視鏡検査翌日の仕事をしても大丈夫か』についてお分かりいただけましたでしょうか。
ポイントを簡潔に整理した早見表を以下にまとめました。
▶ 大腸内視鏡検査翌日の仕事|可否の早見表
ポリープ切除の有無 | 仕事の強度(METs) | 医師による出血リスクの判断 | 翌日の仕事制限 | 補足 |
---|---|---|---|---|
なし | 問わない | ー | 制限なし | 通常勤務可能 |
あり | 4METs 以下 | 問わない | 制限なし | デスクワーク・受付などは問題なし |
4METs 以上 | 出血リスク 低 | 制限なし | 負荷のある仕事でも、出血リスク低と判断されれば勤務可能 | |
出血リスク 高 | 仕事量を制限/お休みできるとベター | 清楚・介護・建設など重労働は避けた方が安心 |
日頃から体に負荷のかかる仕事をしている方は、
ポリープ切除をした場合は必ず、翌日からの仕事はどうしたらいいかを担当医に確認をしてください。
今回ご説明したのはあくまでも当院での基準になりますが、
皆さんが大腸内視鏡検査を受ける際に検査日を決める参考になれば幸いです。
なお、「大腸内視鏡検査翌日の運動をしてもいいかどうか」について知りたい方は以下の記事をご覧ください。

この記事が、
- 皆様の健康維持
- 皆様の病気の予防・早期発見・早期治療
- 皆様が大腸肛門科を受診する際の不安の軽減
これらのためにお役に立てれば幸いです。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
草加西口大腸肛門クリニック 院長 金澤 周(かなざわ あまね)
当院の診療について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください
参考文献
- 厚生労働省HP 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf
- 田中 信治,樫田 博史,斎藤 豊,ほか.大腸ESD/EMRガイドライン.日本消化器内視鏡学会誌 2014; 56: 1598-1617.
- 浦岡 俊夫,滝沢 耕平,田中 信治,ほか.大腸cold polypectomyガイドライン(大腸ESD/EMRガイドライン追補).日本消化器内視鏡学会誌 2021; 63: 1149-1158
- 松本 美桜,加藤 元嗣,大庭 幸治,ほか.大腸ポリープ切除後のクリップ止血予防に対する多施設共同無作為比較試験.日本消化器内視鏡学会誌 2017; 59: 1537-1545.
- 辻 剛俊,三上 達也,福田 真作,ほか.大腸ポリープ切除後早期出血の危険因子とクリップの残存率の検討.日本消化器内視鏡学会誌 2008; 50: 199-205
- 大腸ポリープ診療ガイドライン2020.日本消化器病学会