「いつもお腹が張ってつらいです」
「お腹が張って痛みもあります」
といった「お腹の張り」の症状で、多くの方がクリニックに来院されます。
お腹の張りの原因は食べ過ぎや一時的な便秘であれば、そのうち改善しますが、
- 慢性便秘
- 過敏性腸症候群
- 大腸がんや胃がん
- 腸閉塞
- 婦人科系の病気
などが治療が必要な病気が原因のこともあるので注意が必要です。
この記事では『お腹が張る』原因となる病気について説明をしていきます。
この記事の内容
- お腹が張るとは?
- お腹が張る原因となる病気
- お腹が張る時にはどうすればいいか?
- 草加西口大腸肛門クリニックでの【お腹が張る】ときの診療
この記事の信頼性
この記事を書いた私の名前は「金澤 周(かなざわ あまね)」です。

この記事を読めば、『お腹が張る原因となる病気』について理解が深まり、適切な対処のきっかけになります。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
それでは始めていきましょう。
この記事は、草加西口大腸肛門クリニックの院長が専門医の立場から執筆しています
お腹が張るとは?

「お腹が張る」とは、お腹に膨らみや圧迫感、不快感を感じる状態をさします。
- ガスがたまっている
- 腸液がたまっている
- 便がたまっている
- 腹水がたまっている
- 大きな腫瘍がある
などさまざまな状況で張りが出てきます。
また、お腹の張る症状の他に、痛みや吐き気・嘔吐などを伴うこともあります。
お腹が張る原因となる病気
お腹の張りの原因となる病気は様々です。
ここではお腹の張りの原因となる代表的な病気について見ていきます。
便秘

お腹が張る原因として最も多いのが便秘です。
便が腸内に長くとどまることで、水分が吸収されて、便が硬くなり出しにくくなります。
その結果、腸内にガスがたまりやすくなり、お腹の張りや膨満感・不快感がおこります。
便秘には、
- 水分不足
- 食物繊維の不足
- 運動不足
- ストレス
- ホルモンバランスの変化
などが影響します。

若い頃は女性に多い傾向がありますが、60歳を過ぎるころから男女ともに便秘の人は増えてくるために、
日頃から便秘気味の方は、早めの対策をしていくことをお勧めします。
過敏性腸症候群(IBS)

過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)は、様々な原因により腸の運動機能に異常をきたし、腹痛や便秘・下痢を繰り返す病気です。
大腸がんなどと違い、腸自体に目に見える病変がないため、「機能性疾患」とよばれます。
IBSでは、以下のことが複雑に関わっていることがわかっています。
- 腸の動き(蠕動運動)の異常
- 痛みを感じやすくなる知覚の過敏
- 腸内細菌のバランスの乱れ
- 粘膜のバリア機能の低下
- ストレスなどの心理的要因
IBSでは、腸の動きが不規則になることで、ガスがたまりやすくなり、おなかの張りや膨満感・不快感の原因となります。
IBSでは適切な治療をすることで、症状が改善する可能性があります。
日頃からお腹の張りがあって、生活に支障をきたしている場合は、実はIBSかもしれません。
「いつものこととだから仕方ないか…」とあきらめずに、まずは病院で相談をしてみてください。
IBSについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

腸閉塞(イレウス)
腸閉塞(イレウス)は、腸の一部が物理的に狭くなったり、腸の動きが悪くなることにより、内容物やガスが通過できなくなる状態をいいます。

原因として、
- 腸の癒着
- 腸のねじれ(腸捻転)
- 腸の炎症
- 大腸がんなどの腫瘍
- 腸の麻痺
などがあります。
腸閉塞が発生すると、腸内にガスや消化液が異常に溜まり、強いお腹の張りや痛みを伴い、嘔吐や便秘が続くことも特徴です。

腸閉塞になると、飲食ができなくなるため、入院での治療が必要となります。
また、血流障害を伴う絞扼性腸閉塞では、放置すると腸が壊死する危険があるため、緊急の対処が必要となります。
消化不良
脂っこい食事や暴飲暴食、加齢や胃酸分泌の低下などにより、食べ物の消化がうまくいかず、ガスが発生してお腹が張る原因になります。
慢性的な消化不良は、胃腸の病気のサインの可能性もあるため、注意が必要です。
いつも胃がもたれてお腹も張って調子が悪いという場合は、一度病院で相談をしてみてください。
胃腸炎

ウイルスや細菌が胃腸に感染し、炎症を引き起こすと、胃腸炎になります。
主な原因として、
- ノロウイルス
- ロタウイルス
- サルモネラ菌
- カンピロバクター
などが挙げられます。
感染すると腸の動きが乱れ、消化が正常に行われなくなり、ガスが発生しやすくなり、お腹の張りにつながります。
また、下痢や嘔吐、発熱を伴うことが多く、脱水症状にも注意が必要です。
症状が重い場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
婦人科系の病気

卵巣嚢腫や子宮筋腫など、女性に特有の病気でも腸が圧迫されることでお腹の張りが起こります。
卵巣嚢腫は、卵巣に液体が溜まり、腫瘍のように大きくなる疾患です。
子宮筋腫は、子宮の筋肉層にできる良性の腫瘤で、ホルモンの影響を受けて大きくなります。
これらの病気が進行すると、腸を圧迫することでガスの排出が妨げられ、お腹の張りを感じることがあります。
月経異常や下腹部の違和感がある場合は婦人科の診察を検討しましょう。
腹水
腹水とは、腹腔内に異常な量の体液が溜まる状態です。
主な原因として、肝硬変やがんが挙げられます。
肝硬変では、肝臓の機能が低下し、血流やリンパ液の循環が悪化することで、腹水が溜まりやすくなります。
がんの場合は、がん細胞が腹膜に影響を及ぼし、体液がもれ出すことで腹水が増加します。
腹水によってお腹が大きく膨れ、動きづらくなることもあります。
急激な体重増加やむくみを伴う場合は、できるだけ早く医療機関を受診してください。
大腸がん

大腸がんが進行すると、腸の通り道が狭くなり、ガスや便がうまく出せなくなるため、お腹の張りが強くなります。
また、
- 血便
- 体重減少
- 食欲低下
などの症状を伴う場合は、
大腸がんがんの可能性があるため、早めの内視鏡検査をおすすめします。
大腸がんは日頃の検診の便潜血検査や、定期的な内視鏡検査を行い早期発見・早期治療をしていくことが大切です。
大腸がんについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

胃がん
進行した胃がんもお腹の張りと痛みの原因となります。
胃がんの場合は、胃の出口が狭くなることにより、
食物が通過せず、胃がふくれてしまい、お腹の張り、腹痛、嘔吐などがおこります。
最近はピロリ菌の除菌も進み、進行胃がんで発見される方は減っていますが、見落としては行けない病気の一つです。
お腹が張るときはどうすればいいか?

お腹が張って痛いときには、その原因や症状の程度に応じて対応をすることが大切です。
生活習慣の見直しで様子を見ていい場合
以下のような、
- 食べ過ぎ
- 早食い
- 炭酸飲料の摂取
- ガスが発生しやすい食品(豆類、キャベツ、玉ねぎなど)などを多く摂った
ことなどが原因と考えられる場合には、
生活習慣の見直しで症状が改善することがあります。
また、便秘が原因の可能性があれば、便秘の改善のために、
水分や食物繊維を意識した食事をして、適度な運動もしてみましょう。
これらの工夫で、数日〜1週間程度様子を見て、症状が軽減する場合には経過観察で問題ありません。
ただし、症状が変わらない場合や、悪化するようであれば、早めに医療機関を受診してください。
医療機関を受診したほうがいい場合
お腹の張りに加えて、
- 強い腹痛、吐き気・嘔吐
- 発熱、血便
- 急激な体重減少、食欲不振
が伴う場合や、お腹の張りが長引いたり、繰り返す場合には、
何らかの病気が隠れている可能性があります。
特に、腸閉塞や大腸がん・胃がんなどの重大な病気のサインかもしれませんので、
早めに病院を受診して相談をしてください。
草加西口大腸肛門クリニックでの【お腹が張る】ときの診療

当院では、
「お腹が張って苦しい」
「ガスがたまりやすい感じがする」
といった症状で来院される方が多くいらっしゃいます。
お腹の張りは、便秘や消化不良、過敏性腸症候群などの病気が原因のことが多いのですが、
大腸がんや腸閉塞、婦人科系の病気など、見逃してはいけない重大な病気が背景にある場合もあります。
まずは、問診で症状の経過や便通の状態、食事内容、これまでの病歴などを詳しくお聞きします。
さらに、視診・触診を行い、腹部の張りや圧痛(お腹を押した時の痛み)の有無、ガスのたまり具合などを確認します。
そのうえで必要な場合には以下の検査を行います。
- 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
- 胃内視鏡検査(胃カメラ)
- 血液検査
また、CTによる評価が必要な場合や、
婦人科系の病気など消化器以外の原因が疑われる場合には、
速やかに連携医療機関へご紹介いたします。
「いつものおなかのはりだから大丈夫」
「日頃から便秘気味だから…」
と自己判断せず、おなかの張りが気になる場合は、早めにご相談ください。
まとめ

ここまで記事を読んでいただきありがとうございました。
『お腹が張る原因となる病気について』お分かりいただけましたでしょうか。
お腹が張る原因は、日常的には食べ過ぎや便秘のことが多いのですが、
過敏性腸症候群や、大腸がん、腸閉塞、腹水や婦人科系の病気の可能性もありますので、
症状が強い場合や継続する場合は、必ず病院を受診してください。
この記事が、
- 皆様の健康維持
- 皆様の病気の予防・早期発見・早期治療
- 皆様が大腸肛門科を受診する際の不安の軽減
これらのためにお役に立てれば幸いです。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
草加西口大腸肛門クリニック 院長 金澤 周(かなざわ あまね)
当院の診療について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください