大腸内視鏡を受けて、検査後の説明で医師から「大腸メラノーシスで腸が黒いですね」と言われたけど、大腸がんになるのかな?
と心配で「大腸メラノーシス」「癌化」と検索した方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、大腸メラノーシスの概要と癌化の可能性について分かりやすく解説します。
なお、大腸メラノーシスの基本的な原因・症状・治療法については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

この記事の内容
- 大腸メラノーシスとは?
- 大腸メラノーシスは放置すると癌化する?
- 大腸メラノーシスは放置していいの?
この記事の信頼性
この記事を書いた私の名前は「金澤 周(かなざわ あまね)」です。

この記事を読めば、『大腸メラノーシスが癌化するかどうか』がわかり、すぐに適切な行動がとれるようになります。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
それでは始めていきましょう。
この記事は、草加西口大腸肛門クリニックの院長が専門医の立場から執筆しています
大腸メラノーシスとは?

大腸メラノーシスとは、大腸内視鏡検査の際に見られる「腸の粘膜が褐色〜黒っぽく色素沈着している」状態をいいます。
専門的には「リポフスチン」という物質がマクロファージ(貪食細胞)に蓄積したものとされています。
大腸メラノーシスの原因は、アントラキノン系と呼ばれる植物由来の便秘薬や健康食品の長期使用です。
- センノシド系:センノシドA・Bを主成分とする
- ダイオウ系:大黄を主成分とする
- アロエ系
があります。
大腸メラノーシス大腸が黒っぽくなりますが、下痢や出血などの症状はなく、
大腸内視鏡検査をした時に偶然発見されることがほとんどです。
大腸メラノーシスは放置すると癌化するの?
大腸メラノーシスと大腸がんの関係
「こんなに腸が黒くなるからきっと大腸癌になりやすいのでは?」
と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
でも大丈夫です、大腸メラノーシスは放置しても癌化することはありません。

これまでの研究などでは、大腸メラノーシスと大腸がんの間に明確な関連は指摘されていません。
大腸メラノーシスと大腸腺腫(良性のポリープ)の関係
大腸腺腫(せんしゅ)は大腸がんの元となる良性のポリープです。
一般的には、大腸腺腫が時間と共に大きくなる過程で、がん細胞が混ざってきます。
大腸メラノーシスでは、大腸腺腫が見つかりやすくなると言われています。
これは、大腸メラノーシスになると大腸腺腫になる可能性が増えるというよりは、
大腸メラノーシスで腸の色が黒っぽくなると、白っぽい腺腫のコントラストがはっきりして、
正常の大腸粘膜の時よりもポリープが見つけやすくなるからと考えられています。

実際の写真で見てみると、画面中央にポリープがありますが、
周囲の粘膜が茶色っぽいので、白っぽいポリープがはっきりと認識できます。
大腸メラノーシスは放置していいの?
「大腸がんのリスクが高くないなら、メラのシースは放置してもいいの?」
と疑問に思う方もいると思います。
確かに、大腸メラノーシスは大腸がんのリスク因子にはなりませんが、
「大腸メラノーシスになっている状態」は体にとって正常な状況ではありません。
大腸メラノーシスは「アントラキノン系の刺激性下剤」を長期間使用することで起こります。
この、「刺激性下剤を連用しないと排便ができない状況」というのは、体にとって負担がかかっている状態です。
このため、大腸がんのリスクにならないからという観点からだけで、大腸メラノーシスを放置するのはNGです。

大腸メラノーシスはあなたの体があなたに、排便習慣の改善の必要性を教えてくれているサインです。
これを機に、刺激性の下剤を連用しなくても排便ができるように、
- 食事・運動などの生活習慣の改善
- 便秘薬の変更
を再検討してみるのをお勧めします。
まとめ

ここまで記事を読んでいただきありがとうございました。
『大腸メラノーシスと大腸がんの関係』についてお分かりいただけましたでしょうか。
大腸メラノーシスの状態は大腸がんのリスクが上がるわけではありませんが、
大腸メラノーシスは、あなたの体が「刺激性の下剤を使い続けてますね、そろそろ生活習慣の改善や便秘薬を変更しませんか?」とあなたに教えてくれているサインです。
このサインを放置せず、これを機に、ぜひメラノーシスの改善に取り組んでみてください。
大腸メラノーシスについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

この記事が、
- 皆様の健康維持
- 皆様の病気の予防・早期発見・早期治療
- 皆様が大腸肛門科を受診する際の不安の軽減
これらのためにお役に立てれば幸いです。
『あなたとあなたの大切な人の健康と未来を守るために』
草加西口大腸肛門クリニック 院長 金澤 周(かなざわ あまね)
当院の診療について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください
参考文献
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